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―僕は生命がほしい―
医者から数週間前に告げられた言葉は、「良くて1年、悪ければ半年」というものだった。
まだ21歳の俺にとっては目の前が真っ暗になるような出来事であり、人生に終わりを告げるものである。それからというものいろいろな病院を周りどうにか治すことができないかと相談してきたが結果は無駄であった。どの医者も「原因がわからない」と言うだけ。
全てがどうでもよくなってしまった。
積み上げてきたものが崩れる音。
こんな世の中なくなってしまえばいい。
部屋に引き篭もりことが続き、ネットゲームばかりをやっていた頃とあるゲームに行き着いた。
そのゲームの名前は、<ライフ・リカバリー>というボードゲームである。
ゲーム自体をほとんどやったことがない俺であったが、サイコロを振り、イベントをクリアしながらお金を手に入れ、またサイコロを振るというシンプルなものであったためかすぐに熱中してしまった。
イベントの内容は現実にできるようなことばかりで、
・指定された場所に行く
・指定されたものを収集する
・指定された人と会話をする
などである。
それらをゲームの中でやるのだから移動などの無駄な時間がなくすぐにクリアすることができ、次に進むことが可能なので飽きることがない。クリアしたイベントで集めたお金で家や装備なども買うことができ、他の人たちに自分の頑張りを自慢することができる。
ただ他のゲームと違うのがゲーム自体のクリアが見つからない。
このゲームは配信されてからもう1年以上になるのだが未だに1人もクリアしたものがいないというのはどうもおかしい。RPGなどのゲームならまだわかるがボードゲームであり、ゴールすることが目的のゲーム。運営からのヒントもなく、プレイヤー間の情報交換のみである。
そんな状態がこれからも続くと思っていたがある日、一通のメールがプレイヤーに送られてきた。
その内容というのが、
『いつも、<ライフ・リカバリー>をご利用頂き誠にありがとうございます。多くのプレイヤーにプレイして頂き、準備のほうが整いましたのでご連絡させて頂きます。このゲームは規定の人数に達しましたのでこれから次の段階に移させて頂きます。ただし、これから先は自己責任でお願い致します。定員人数を1000人とさせて頂きますのでお早めにお願いします』
と書いてあり、最後に、『 やる or やらない 』という文字が赤く表示されている。
このメールがプレイヤー全員に送られており、定員人数も決められているのだから迷うことなどない。
『 やる 』 をクリックした。