戯言
「…ゲイなんだ」
「あ、そ。んで、ならどっちが好み?」
まるで驚かず、いつもどおりの調子で、見せていた芸能雑誌の二人組を指して言う。
家呑みで。こちらは男で相手は女で。だけど寝落ちしても構わないような間柄、だと思う。
とはいえ。
「…そんなあっさり?」
「だって、そうなんでしょ。なら、アタシがどうこう言うことじゃない」
ああ、タチかネコかは確認したいけど、と。いやはや、もう。
こんなコだから、言えるかと思って、言ってしまったのだけれども。
なんだこのスルーされた感。
「アタシが女にモテるのは聞いてるでしょ。で、別にそれを気持ち悪いとは思わないし、むしろ相手によってはアリ、とか思うんだから、ストレート寄りのバイなんだろうしね。それでセクシャルマイノリティを否定はできないよ。ま、そもそも性別気にしないけど」
するよりされる方がラクだから、あんまり女相手にしようとは思わないんだけど。と、ざっくりトンデモ発言まで。
…一応は、フォローのつもりだったのだろうが。激しく微妙だ。
「…こっち」
とりあえず、示されたページの片割れを指した。
「つまり、男くさいのより、美形女顔な攻め様を所望、と?」
「……なんつー赤裸々な」
「でも、そうなんでしょ」
「そうなんですけどね!」
ホントになんなんだこのコ! 年下だよな一学年下だったよな!?
…まぁ。二次エロホモ書きだし。女の子の方がイロイロなんだということだが。それにしたって。
「なんで受けだと?」
「だってそうでしょ」
「いやそうだけども」
だから何故に分かった? と訊いているのだ。
そうしたら。
「ダダ漏れ」
断言。挫けた。そんなに隠せてなかったのか…。
「匂いを嗅ぎつけられる同類以外には、さほどバレてないだろけどね。それこそ、分かるヒトには分かる、ってくらいで」
まぁとりあえず、今後は女子トークしましょ-か、と笑う。笑ってくれる。
笑って、くれる。
だから。
「ゲイビ視る? 美少年攻め」
「是非!」
ああ、こんな女の子のトモダチいて良かった。
そして酒のツマミはゲイビとなった。