視力検査2
もう一度言おう、上境水色は、辟易している。さきほどは、澄んだ空を見上げながら言っていたが今はちがう。
今、彼の目の前では…………
右 左上 下 左 上
…………視力検査が行われていた。
「ったく、何で俺までこんなことせにゃならんのだ」
水色は、この儀式が大嫌いだった。ここ、虹彩学園には、約50000人の生徒が通っている。
彼らにとって、視力検査とは、自分の力を誇示するためのものであり、自分の力を確かめるものでもあった。
学園では、その“眼”のよさによってランク付けされていた。上から
S A B C D E そして、X
これらの評価は、ただの眼のよさで決まるわけではない。
視力検査では、以下のようなことを調べる。
1. 距離
2. 範囲
3. 能力
其々で、高い結果を出せば出すほど高いランクになれるのだ。
「ちょっと水色!?あんた、そろそろちゃんと受けたらどうなの?」
そう、突っかかってきたのは、同じクラスの日下部赤色である。
「はいはい、やっぱり優等生さんの言うことは違いますねー」
「っは!?なにいっての?今そんな話してないでしょうが!!」
そう言う彼女は、前回の検査で、Aランク認定、むしろ、今までずっとAランクである。
「でもなぁ、あれは、あほだろ」
「何がよ?」
「だって、そりゃ目がいいとは言ってもなぁ」
「だからなんなのよ!!」
「つまり、俺が言いたいのは。“距離”の検査で、スタートつまり、最短距離距離が300㍍ってのは、おかしいだろっ!ってことだ」
何度もいうが、この世界の人間はみな、目がいいのである。そう、ただ一人の水色を除いては…………。
「ふぅーーーん、ほんとなんだか」
赤色は水色のある部分をみながら、そう言った
「あ、あたりまえだろ!これがないとあんなの見えっこないわ」
そう、彼女が見ていたのは、水色の、目の上、つまり、“眼鏡”である
「それ、何て言うんだったかしら…………め、めがね?」
「そ、そうだよ。世界で俺のためだけに作られた素晴らしい発明品だ!」
「それは、あんたにしか必要ないからじゃないの」
彼女の、発言は、水色には幸い聞こえなかったようだか、誠に的を射ていた。
人々には、近視、遠視、言ってしまえば、老眼さえ存在しない。つまり、眼鏡は、必要ないのである。赤色の言ってることは間違えではない。
しかし、だからこそ彼女は、うたがっているのである。
本当にみえてないのか?と
「い、い、からっ、とりあえず受けてきなさい!」
「分かったよ、あーめんどくせぇ」
とてつもなく怠い声を出しながらものすごく重いい足取りで 進んでいく水色
「あしたは、範囲の検査だからねっ!」
「ほーーい」
そう返事しながら、明日は休もうかなと、本気で考え始めた水色であった。




