視力検査10
「んじゃあ。ここらで改めて自己紹介しますか」
「私、管理局のものでございます」
「管理局だと?笑わせるな、あそこはお前のようなガキが入れるようなところじゃない」
「いや、そんなことないですよ?」
「第一、そうであったとしても、なぜ、この学園にいる?どうやって潜入した?」
「それは、あなたと同じ方法ですよ、ねぇ?《幻惑の魔女》さん?」
そこで若干くしそうな表情をするが
「そこまで知られているとは、いやはや、よく調べたものだな。なら、お前のランクEというのは眉唾だったというわけだ」
それで納得がいくと言った感じで水色に問う。しかし、
「いや、この、目の悪さは本物ですよ?」
「は?…………あははははははははは」
一度言葉を疑ったが、その目を見て思わず笑ってしまった。嘘をついているようには見えなかったからだ。
「何がそんなに面白いんだ?」
今度は水色が問う
「そりゃそうだよ。だって私は、一応Aランクを頂いてるのだけどねぇ。それに対してEランクをだなんて。信じた私を笑ったのさ」
「いや、まぁホントに管理局なんだけど…………まぁいいか」
その発言は相手には聞こえてなかったようだが特に支障はないとして処理した
「それで、私をどうするんだい?最下位くん?」
「捕まえる」
「ぷふっ」
あまりにまじめな眼差しでいうのでまた笑ってしまった
「君の検査結果は知っているよ。私が検査した《範囲》以外、全部エラー、能力は《ぶんせき》(アナリシス)だってね?」
「そんなので捕まえる?笑わせないで」
急に黒崎の雰囲気がかわる
「やってみなきゃわかんないぜ?」
それに対する水色の反応は、いまだ変わらないものだった。
そう言ったとき、不意に黒崎が右手を上にあげた、そして、それを降りおろすやいなや
銃弾が飛んできた
「お前、生徒を能力で!!」
「えぇ、そうよ」
「私の能力《幻惑》で、彼らを操り攻撃させてるの」
幻惑、それは、確かにランクAに分類される。その効果は、幻覚を見せるというものだ。使い方によって、操ったり、悪夢を見せたり、医療の現場では麻酔のひとつとしても使われている
「一応、みんな、ランクBの子達よ。ここから3km圏内に配置させたわ、あなたに避けられるかしら?」
「避ける?そうか、お前は、さっきお前の銃弾を避けたのが偶然だとでも思ってるんだな?」
「当たり前でしょ?ランクEの癖に」
「そうか、ならいいだろう、ちょっとだけ見せてやるよ、俺の本気」
そう言うと、小さな声でこう唱えた
絶対領域
黒崎の目の前ではまたもやあり得ない光景が広がっていた
「なんで、なんでそれがよけられるのよ!!」
水色は、視角外からの銃弾をことごとく避け続けている。それこそ、プロでも困難なほどに
右足を狙わんとする銃弾がくれは、体を少し捻り、頭なら少し屈むだけ、まるでそれで十分だと知っているように最小限の動きでかわす
「なんで!?、や、やっぱり見えて」
「不思議か?」
言い終わる前に、体を動かしながら水色が放った
「っな…………」
「ランクEで、300mぐらいしか見えないくせに、避けられている」
「それが不思議か?」
「…………っち、そうよ、不思議よ、意味わかんないわ。能力の分析を使ってもそんなことはできないし、何か特別に《視力》を使っている気配もない。全く摩訶不思議よ」
「っふ、だろうな、そんな固定観念に囚われてるお前らにゃ一生わかんないだろうよ」
「固定観念ですって?」
「俺は、いま、物を見ちゃいない、感じてもいない」
「聴いてるのさ」
「っば、」
「ばかな?ってか、そりゃ信じられないだろうよ。この世界の人間は強すぎる視力を得る代わり聴力を失った」
「でもな、俺は、生まれたときから目が悪かった。その代わり、いろんな物が聞こえた」
「ずっと遠くにいるはずの人の話し声、空を飛ぶ飛行機のエンジン音、それと」
「銃弾が空気を震えされる音」
「っな、なら貴様はさっきからその音を聞いてよけていたとでも?」
「うん、そして、こういう囲まれちゃってる感じの時は、聞く範囲を狭めて、より正確な情報を得ることにしてるんだ」
「そして、その空間に、君も入ってるよ?」
その言葉を聞いた途端黒崎は、後ろに走った。
「だから、そのなかに入っちゃってるから」
その時、既にそこには、水色がいた
「わっかんないかなぁ?ちょっとだけでも動いたら分かっちゃうんだよね。次なにがしたいか」
「お前、でも、さっき銃弾避けるので一杯なはずじゃ…………」
「ぷふ、あんなの遅すぎて笑っちゃうよ。」
「くそっ、ならこれならっ」
そう言った、瞬間先程までこちらに射撃していた、はずの生徒たちが囲んでいた
「貴様がさんざんおしゃべりしていた、お陰で呼び寄せられたわ」
「やりなさいっ!」
そう声が上がった途端水色に向けて怒濤の勢いで弾丸が打ち込まれた。
そうして、1分ほど経つと黒崎は、生徒たちを止めた
『もしかしたら、肉片すら残ってないかもしれないわね』
そんなことを考えながら水色の様子を確認しようとすると
「くくくく、肉片すら残ってないかもしれないわね、か残念だったな」
「っっっっっっ!!」
驚くのも無理はなかろう、あれだけの攻撃を受けたのに加えて、今まさに自分の考えていたことさえ言い当てられたのだ
・・・・
『まさか、聴かれた?』
「大分、困惑してるみたいだな、Aランク様?」
銃弾の衝撃で生まれたときから
土もやが晴れ、水色の姿が視認できたとき、その場にいたものすべてが息を飲んだ
水色の目が、その名の通り水色に美しく光輝いていたからだ。




