5話 魔法
仕事がいきなり忙しくなってしまった為、不定期になってしまいました。
暫くは不定期が続くかと思います、申し訳ありません。
ギガンテスとやらを倒した後、延々と薬草を採取し続けた。
太陽がちょうど真上に来たぐらいで一息つく。
薬草は丁度50株集めた、これを持って帰れば5シルバーになるのか。
一日がっつりやればこの倍は取れるとしたら10シルバーになる。
宿代が5シルバー食費が1シルバーとして
頑張って稼ぐなら、大体一日4シルバーの貯蓄できる。
最悪薬草採取でも暮らしていけるな。
ただ、やっぱり俺も男だしこういった世界に来たからには
魔物討伐で暮らしていきたい。
今日の所は薬草採取はこれで切り上げて
さっき覚えた楯の魔法を色々検証してみて引き上げるか。
そこから一時間ばかり楯の魔法を使ってみて、まず思ったことは
これ魔法なのか?
左手を突き出し、念じると出てくるんだが
ステータスプレートを見てもMPが減ってない。
何度か出して消して、とやってみてもやっぱりMPは減らなかったのだが
出した状態で例のシールドバッシュを木にやってみたら5MP減った。
木をなぎ倒す際にギガンテスと同じく若干の抵抗があり
それに対し左手に力を込める際にどうもMPを消耗しているようだ。
楯の作成自体や負荷のない移動にはMPを使わないが
楯を一定以上の負荷がかかるような動かし方をするとMPを消費するのか?
その仮説が正しいなら、攻撃を受けた際に支えるという負荷をかけるので
実際に攻撃を受けた際はMPを都度消費しそうな気がするが
さっきのギガンテスの攻撃を受けた際はMP使った気はしないんだよな。
その辺りは色々検証が必要そうだが
ギガンテス程度の攻撃ならMP消費なしで防御可能。
シールドバッシュと同程度の攻撃に対してはMP消費するが受け切ることが可能。
現状としてはこの認識でいいかもしれない。
もう一つ分かったのは射程内なら障害物越しでも出すことができる。
これなら後衛にいながら前衛が危ない時に楯をだしてフォローもできるな。
で、最初の疑問に戻るのだがこれは魔法って感じがしない。
魔法なら楯を作る段階でMPを消費しそうなもんだが
何度作っても楯を作るだけなら全く消費しない。
後、これは完全に勘というか感覚なのだが
これを使う時とヒールやライトを使う時の感覚と若干違うような気がする。
そこで思い当たったのが例の固有スキルってやつだ、そう考えると辻褄があう。
補助系のスキルだし、MPも通常は使わない、魔法とは違う感覚にも納得できる。
そもそも魔法ってのをよく分からないまま使っているせいで
魔法の定義って奴が俺の中にないんだよな、これが多分問題なんだと思う。
そのせいでこの楯が固有スキルなのか魔法なのかが判断できない。
正直別にどっちでもいいかと思ったが固有スキルの場合
人前で使っていいものかどうかが怪しくなる。
化身しか使えないスキルの場合それだけで俺が化身だってばれることになる。
いや、魔法だってもし化身しか使えない魔法がある場合は同じだな。
色々と悩んでいるといつの間にか城門まで戻ってきた。
城門で受付をして冒険者協会へ戻る、衛兵はあの人じゃなかったな。
冒険者協会に到着したのは昼少し回ったぐらいの時間だった
飯を食うには遅く、クエストを終えるには早い時間なのだろう
カウンターにいる冒険者はまばらだ、空いている買い取りカウンターに行く。
受付の人は男の人だった、女性以外もいるんだな。
そんな事を思いながらカウンターへ薬草の入った鞄を差し出し査定してもらう。
数が多いので査定はカウンターとは少し離れた所で別の人がやっているのだが
待っている間に常駐クエストで気になっていたことを聞く。
「この常時クエストの薬草採取ってこれだけやっててもランクは上がらないんですか?」
このクエスト、一応クエストって名前がついているが
実質物を売っているだけで依頼をこなしている気がしない。
へたすると金は稼げるけどランクは上がりませんよ的なクエストかもしれない。
「いえ、上がりますよ。
買取りを行う際にステータスプレートをお預かりするのですが
買取り品の中に常時クエストに該当される物品がある場合
ステータスプレートにクエストクリアとして履歴が登録され
ランクアップの査定の際の判断材料とさせていただきます。
っ丁度査定が終わりましたね・・・
はい、50株問題ありませんでした。
というわけでステータスプレートよろしいでしょうか?」
そういわれてステータスプレートを渡すとなんか水晶にかざしている。
そういえば昨日魔石売った時も同じことしてたな。
「ありがとうございます。
ところでユウト様のステータスとレベルを拝見させていただきましたところ
すでにDランク相当の実力はあるかと思われます。
もしよろしければDランクへの昇格をいたしますがいかがいたしましょうか。」
実はあのギガンテスを倒して俺のレベルは5まで上がっている。
あいつそんなに強かったんだな。
レベルアップに気づいたのは楯の魔法検証するのにMP確認したときだ。
このステータスプレートレベル上がっても音出たりしないんだな
そう思いながら頭には某RPGのレベルアップ音が浮かぶ。
「まだ、FランクなんですがいきなりDってありなんですか?
おまけにクエストもこの薬草ぐらいしかやってないんですが。」
レベルアップ音で現実逃避してても仕方ないから取りあえず聞いてみる。
ランクアップは協会が査定して判断するとか言っていたが
まさかいきなり飛び級を提示されるとは思わなかった。
「たしかにクエストだけで言いますと本日の薬草採取と
昨日買取りしましたゴブリンの魔石に該当するゴブリン退治だけですが
ステータスから察するにユウト様は恐らく祝福持ちかと思われます。」
祝福持ちってなんだ、化身以外にもなにかあるのか。
「祝福持ちの方の場合、通常ではありえない速度で成長される場合があり
その場合は早めにランクアップを行わさせていただいております。
実は昨日ユウト様が登録された後、協会内で協議した結果
ユウト様のレベルが2になればEランク、5になればDランクにするよう決まりました。
そのレベルに上がるほどの実戦を積めば問題ないとの結論だったのですが
まさか、いきなりレベル5になられるとは思っておりませんでした。
さすがです。」
「はぁ、ありがとうございます。」
昨日は特に何も言われなかったけど裏でそんなことになっていたのか
「俺が祝福持ちってことなんですか?
全然自覚ないんですが、そもそも祝福ってなんですか。」
「祝福持ちとは神からの祝福を受け
特別なスキルや高いステータスを持っている人達のことを指します。
この祝福は生まれつきもあれば後天的な物もありますが
先天的な場合はステータスプレートを見て初めて気づく方も多いですね。
祝福持ちの方はあくまで目安ですが善良な方が多い傾向になります。
これが神が祝福し与えているからと言われている由来になっておりますが
実際のところは本当に神が関わっているかは不明ですね
ただ一般の方と一線を画するのは間違いありません。
この祝福の是非がランクAへの壁といわれてますね。」
なるほど俺はその祝福持ちって思われているのか
確かに神様から授かった能力なのは間違いないな。
特別なスキルってのが固有スキルに当たるのだろう。
ついでにちょっと突っ込んだこと聞いてみるか。
「化身とは違うんですか?」
聞いた感じ化身と祝福持ちは一緒な気がするが何が違うんだ。
「?化身ですか。」
あれ、いきなり何言ってんだこいつみたいな顔された。
「祝福はたしかに強力ですが
あくまで神から与えられた物だろうと言われている程度の力です
そもそも神から与えられたというのも推測でしかありません。
しかし、化身は紛れもなく神から与えれた力・・・
いえ、存在自体が神そのものといえる化身は文字通り別格です。
持っているスキルや能力も祝福とは比べものになりません。」
なんか諭す感じで言われたぞ。
お前祝福持っているかもしれんが化身は別格なんだから調子のるなよと
暗に釘を刺されたような、そんな感じがした。
「化身ってそんなにすごいんですか。」
「はい、協会にも一名登録されておりますが
現在もSランク冒険者として活躍され、輝かしい功績をお持ちの方です。」
冒険者やっているのか、Sランクってすごいな。
・・・いやいや、他人事みたいに感心してどうする
俺も冒険者の化身だ、成り立てだけど。
一度その人にはあってみたいな。
他の化身はどうなんだろと思って聞いてみた。
「そのほかの化身の方は行方知れずだったり
特定の場所から出なったりであまり話題に上がることが少ないですね。
慈愛の神の化身なんてもう数十年不在になっていますし。」
最後の言葉に反応しそうになるが何とかこらえる。
俺の前任者からそんな長い間不在になってたのか。
その辺の話は聞いてみたい気もするが藪蛇になっても嫌なんで
ここらで化身の話題は打ち切るようにランクアップの件を承認する。
「そうだ、実は魔法について色々知りたいんですがそういうの詳しい方っていますか。」
更新してもらったステータスプレートと薬草のお金、5シルバーを受け取り
今日の最後の課題、魔法について知ってそうな人を教えてもらおうと聞いてみる。
「魔法ですと魔術師協会に行くのが一番いいですね。
基礎知識から魔法の習得、そして実戦での使い方を学ぶことができます。
ただしかなりお金がかかりますので財布と相談となりますが。」
ああ、金かかるのか。
やっぱり世の中は金ということか。
魔術師協会の基本的なことと場所を教えてもらう、意外と場所は近いな。
「分かりました、飯食ったら行くだけ行ってみますよ。」
「ユウト様ほどの魔力でしたらぜひ習得をお勧めします。」
食堂で今日の日替わりランチ、豚のしょうが焼きを食い終わると魔術師協会へ向かう。
相変わらずここの食堂はうまい。
魔術師協会は冒険者協会から徒歩5分のところにあった
でかさも冒険者協会と同じぐらいある、でっかいな。
「あら、いらっしゃい。何か御用かしたら。」
おお、いかにも魔術師のお姉さんって感じの人が出迎えてくれた。
服装もかなり際どい、魔術師の恰好したそういうお店なのかと思うぐらいだ。
「魔法の講義を受けたいんですが。」
「受講の方ね、どのコースにする?」
そう言って受講コースが書かれた表を渡された。
決していかがわしいコースが書かれた表ではない。
色々コースがあったが基本コースを選ぶ。
基本コースは銀貨10枚だがコースによっては金貨数十枚とかある。
たしかに金かかるなあと思ったが取りあえず基本コースと伝え銀貨10枚渡す。
そのまま受付のお姉さんにつられた講義室につれた来られたが
どうもこの人が講義してくれるらしい。
基本コースだから受付のこのお姉さんでも講義できるのか
講義できる人が受付をやっているのかは分からんが
一応こんななりになったが俺も男だし美人さんとワンツーマンは嬉しい。
「・・・というわけよ、分かった。」
「・・・・・」
最初の浮ついた気持ちは講義30分ぐらいで完全になえてしまった。
イメージと違いバリバリ中身の濃い講義をしてくれた。
化身になる前はそれなりの進学高校似通っていたがどの教師よりも優秀だった
俺の気力と引き換えに俺の魔法に対する知識はかなり充実した・・・と思う。
5時間にも及ぶ講義で分かったのは
この世界の魔法はすべて神の力を借りて行っている、これは知っていたが
その行使には神への祈りとしての詠唱や儀式が魔法の行使には基本必要となる。
祈りというが実際には神々とのバイパスを繋ぐための行為である。
では詠唱や呪文は誰が決めているかというと
実は確定した詠唱があるのではなく
特定のキーワード、(マジックワードというらしい)を
組み合わせていくことによって様々な効果を持つ呪文が作られるとのことだ。
ちなみにマジックワードを組み合わせて
新しい呪文を作ったりするのも魔術師協会の活動内容らしい。
マジックワードは神に対するメッセージで
ある程度お決まりの言葉があり、それらをうまく組み合わせると呪文となる。
例えば回復魔法を1つ教えてもらったが
慈愛の神よ我が祈りにより我らの傷を癒し我らに安らぎを与えたまえ、と詠唱し
呪文として、ヒーリングもしくはヒール等と唱えれば回復魔法になる。
要は神にどんな魔法が使いたいってのが伝われば使えるとのことだ。
マジックワードは神に伝わりやすい言葉と考えると分かりやすい。
ここでは慈愛の神、我らの傷、癒し、が効果を決めるマジックワードで
安らぎを与えたまえは魔法の効果を上げるマジックワード
そしてヒーリングやヒールが唱えた詠唱を元に魔法として発動させる為の
キーとなるマジックワード、それらを呪文と呼んでいるらしい。
信徒は神との繋がりが強くなっているので、一度唱えた詠唱と呪文が紐づき
次からは呪文だけで魔法が発動できるようになとのこと。
そこで疑問なのは俺は魔法を呪文なしで使っている
しかも一度も詠唱すらしたこともない魔法をだ。
「魔法って絶対に呪文唱えないと使えないんですか。」
自分が使えることはおくびにも出さず聞いてみる。
「ようは神へ魔法が使いたいことと使いたい魔法を伝えれば魔法は使えます。
呪文以外の手段として呪符として使用する方法がありますが
使い捨てで作成には使用魔法に対応した神に祝福を受けた紙に
術者本人による呪文の記入が必要な為、手間とお金がかかってしまいますね。
ただ、呪符魔法だけで戦闘することはないかと思いますが
文字通り切札として魔法使いは何枚か持っていたりすることもありまね。」
うーむ呪文はいらないが呪符とやらは結局いるのか。
もちろんそんな物も使わないで魔法が使えるのだがこれはなぜだと思っていたら、
「唯一の例外として化身の方は詠唱も呪文もなしで魔法を使用できます。
これは化身自身が神である為、神へ言葉等を用いて伝える必要がないからですね。」
的確な助言をもらった、なるほどそれでイメージだけで魔法が使えるのか。
どっちにしろ人前じゃ呪文は忘れず唱えるようにしておこう。
最後に詠唱や呪文を唱えたらだれでもなんでも魔法を使えるわけではなく。
魔力や加護そして個人の相性によって使える魔法が決まってくるらしい。
例えば俺みたいに回復や補助が得意な人もいたら
炎属性の魔法が得意な人がいたりもするらしい。
そういったのを加味してどの神様の加護を上げるか決めていくらしい。
基本的なマジックワードを教えてもらい
魔法って奥が深いと思いつつ講義は終わった。
受講したお姉さんに飲み込みが早いと褒められながら
魔術師協会を出て、すっかり暗くなった街中をあるいて行く。