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4話 初クエスト

初めてのまともな戦闘シーンがあります。

やっぱり躍動感ある表現は難しいですね、もっと勉強します。

ちなみに銭湯シーンもありますが男だけなので割愛しております。

『万福亭』


「結構でかい宿屋だな。」


 万福亭という看板がかかった宿屋は3階建ての結構しっかりした作りの建物だった。

 建物に入るとカウンターに40台ぐらいのおっちゃんがいたのでに声をかける。


「すみません、一泊お願いしたいんですけど。」


「毎度、素泊まりで5シルバー、50カッパー出せば晩飯と朝飯出せるけどどうする?」

 

 晩飯はさっき食ったから素泊まりでいいな、朝飯は適当に食えばいいし。

 銀貨5枚をおっちゃんに渡し素泊まりで一泊する旨を伝えると部屋の鍵を渡された。


「つかれたー。」


 部屋に入るなりベットへ身を投げ出す。

 色々あったこの異世界ファンタジーの一日目の感想としては

 意外となんとかなりそうって感じだ。


 もっと殺伐とした世界も覚悟してたが運がよかったのもあるだろうけど

 出会った人も親切だったし、飯もうまかった。

 実戦も経験したがゴブリンぐらいなら余裕だった。


 まあ数多いと油断はできないしもっと厄介なやつらもいるだろうけど。

 そういったのに対応していくとなると戦力増加が必要で俺の場合それは魔法だ。


 その魔法なんだがそもそも魔法ってどうやって使うんだ。

 なんか1つ使えているような感じの魔法があるんだがこれ多分回復魔法なんだよな

 使っている感じはあるが効果が見えない。

 

「痛いのいやだけどやってみるか。」


 そういいながら剣を抜き親指を軽く切ってみる、あんまり痛くないな。

 血が少しでている指を見ながら『ヒール』と唱えてみる。

 唱えた瞬間、光の粒子が指先に集まり傷が跡形もなく消え血の跡だけが残る。


「やった、使えた。」


 初めての魔法に子供の様にはしゃぎながら傷が無くなった指を見る。

 その後、何度か試してみたがヒールって唱えなくても

 傷を癒すイメージをして念じると発動するな。


 そもそもヒールってのが俺の中での回復呪文のイメージだから使ってただけで

 別にこの世界の誰かからヒールって魔法教えてもらったわけじゃないしな。


 ただヒールって口に出した方が心持ち発動しやすかった。

 これは俺の中で魔法を使うには呪文を唱えるってイメージがあるせいかもしれない。


「一応使えたけど我流だし、明日冒険者協会でちゃんとした使い方教えてもらうか。」


 回復魔法が使えるなら一応俺がゲームでやっていた

 自己回復しながらゾンビの如く戦うゾンビアタックが使えるが

 ゲームと違い痛覚がある現実世界でそんなマゾみたいな戦法はとりたくない。


 MPの消費もステータスプレート見ながら確認してみたが一回につきMP5減っていた。

 計算すると今の俺なら152回この回復魔法使えるから

 結構なゾンビアタックができる。

 ・・・したくないけど。


 今は多分前の世界でいう20時ぐらいだ、少し早いが明日もあるし

 寝てもいいかなと思うができれば風呂に入りたいな。

 部屋にはないけど近くに銭湯的なのがあればぜひ行きたい

 風呂があれば俺の中のこの世界の評価ポイントがさらに上がる。


 あった、宿屋のおっちゃんにダメ元で聞くとあっさり場所を教えてくれた。

 教えてもらったところにいくといかにも銭湯って感じの建物があった。

 ただ一点違うのは煙突がなかった。

 飯食ったときにも思ったけど俺みたいに日本から来た化身とかが

 こういった文化広めた可能性が高いな。

 同じ食い物があるのはまだ分かるけどその調理法や箸

 このいかにも銭湯って感じの建物とか偶然とは思えない。


「いらっしゃい、お嬢ちゃんはこっちだよ。」


 入るなり番台の爺さんにそういわれて女湯の方を指刺される、やっぱりそういわれるか。


「いや、一応男なんですよ。タオルと体洗うやつ売ってもらえます?」


「ほお、長年番台やっているがこんな別嬪さんな坊ちゃんは初めてみるわい。

 入浴料が50カッパー、タオルと石鹸、シャンプー、リンスが

 セットで30カッパー合わせて80カッパーだ。」


 シャンプーやリンスまであるのかよ

 正直リンスは元の世界じゃ使ってなかったがまあいいか。


 番台の爺さんに1シルバーを渡すとおつり20カッパーと入浴セットをもらう。

 やっぱり1シルバーは100カッパーか。

 雰囲気で使っているけどお金関係も一回どこかで確認しとかないとまずいよな。


 中に入るとこれまたいかにも銭湯って感じだな

 服入れるロッカーと鍵まで一緒だ、おかげで使い方には困らない。

 着替えていると明らかじろじろ見られる

 男だとわかると大体離れていくがそれでも見てくる奴がいる

 そっち系のやつらじゃないいだろうなと心配になりつつ浴場へいく。


 浴場も取り立てて言うべきことはなく

 元の世界と同じだった、でかい風呂に入れて満足して帰路についた。

 一点手間取ったのは浴場云々ではなくこの腰まである髪だった

 こんな長い髪洗ったことない。

 何とか四苦八苦して洗ったが湯船に浸かるにもそのままじゃ髪もつかるから

 タオルで無理くり巻いて入った、この髪は近日中に切る必要があるな。

 邪魔で仕方ないし多分このせいで余計女に間違えられる。


 銭湯で一つ収穫があった。

 出た後、脱衣所に鏡があるのに気づいて

 自分の姿を確認したら予想通りあの慈愛の神様とそっくりだった。

 以前の俺の顔のままじゃないのに安心しつつ

 これで男ってたしかに問題ありそうな気もした。


 宿の部屋に戻り一息つく、後はもう寝るだけと思いながらふと窓のを外をみる。

 この部屋は3階で周りの建物より1階分高いのだが結構遠くまで見える。

 100万ドルの夜景とは言わないが結構いい眺めだ。


 まだ時間は21時ぐらいだからか結構建物に明かりが灯っている。

 この部屋ももちろん明かりがついており、これはランプを使っている

 油が入っているランプにマッチで火をつけて使っているのだが。


「光魔法ってぐらいなんだから光源作れないのかな。」


 難易度も低そうだしできるかもしれないと思って

 試しに光の玉をイメージして『ライト』と唱えてみると光の玉ができた、成功だ。

 ランプより明るい感じで中々良さげだ

 ランプの光も悪くないが若干匂いがするのに気になってたからこっちの方がいいな。

 今日はもう寝るから取りあえずランプを消し、浮いている光の玉も消す

 光の玉は消えろって念じたら消えた、うん地味に便利だ。

 明日は朝一で協会に向かうかと思いながら初日を終える。



 翌朝、多分6時ぐらいかなっていう時間に目が覚める。

 窓の外を見ると太陽が顔出し、街が動き出し始めたような頃合いだった。

 よし、今日の目標はクエストクリアして魔法の使い方を勉強することだ。

 気合を入れて宿屋のおっちゃんに挨拶しつつ宿を後にする。

 

 冒険者協会の中は昨日来た時より活気に満ち溢れていた。

 クエストが貼っている掲示板はランクごとに分けられていて

 人が多いのはEとDの掲示板だった。

 俺のFランクの掲示板は人は少ないがクエストも少ないな

 なんか良いのないかなと思いつつクエストを確認していく。

 大体が街中の雑用だが一つ街の外に出る奴があった


 薬草採取 報酬出来高 薬草1つにつき10カッパー


 いかにも最初のお使いクエストみたいなやつだな。

 ただ気になるのは掲示板に常駐クエストって枠がありその中に貼ってある。

 受付のお姉さんに聞いてみると常駐クエストは

 常に置いているクエストで、この場合はわざわざこのクエスト受けなくても

 薬草持ってくればいつでも買い取るよってことらしい。

 なるほど、薬草は街の外なら結構生えているらしい、薬草の見本もみせてもらった。

 昨日は寄らなかったがこの中には雑貨店もある

 ここで必要そうなの買って食堂で朝飯食ったら街の外でるか。


「よう坊主、冒険者登録は完了したか。」


「おかげさまで無事登録できました。」


 城門出る際にあった衛兵は昨日の人だった

 ステータスプレートを見せ受け答えしつつ入門書に名前を記入していく。


「薬草採取のクエストか?」


「そうです、いかにも初心者向けだったので。」


「まあそのあたりが常駐クエストにしている理由だな

 東の方がわりかし生えていることが多いがどれだけ採れるかは運次第だな。」


「東の方ですね、ありがとうございます。運はいい方なんで頑張ってみます。」

 

 そういって衛兵の人が指さしていた方向へ歩いていく。


 運がいいか悪いかは分からないが1時間ぐらい採取して20株ぐらい採取できた。

 協会の中にあった雑貨店で3シルバーで買った肩がけのバックに

 薬草を詰めていっているがこのバックの元とるのにも後10株は必要なんだな。


 そんなこと考えならさらに5株ぐらい採取したあたりでなんか遠くの方が騒がしい。

 争っているような騒いでいるような、どっちにしろただ事じゃない感じだ。


 音はどんどん近づいてくる

 離れるかどうか迷ったがとりあえず近くの手頃な木に登る。

 野次馬ではないが少し気になったから見てみたくなった、結構高いし気づかれないだろ。


「くそったれ、しつこいんだよ『ファイアアロー』」


 出てきたのは四人の冒険者風の奴らと2m半ほどの巨体を持つ魔物だった。

 四人のうち一人は怪我をしているのか背負われている状態だ。

 対して魔物は人をそのまま巨大化させたような外見だが

 お世辞にも知性が高いとは思えない。

 ただ最初に出てきた戦士風の男性の冒険者が手から炎の矢を魔物へ打ち出したが

 あまり効いた様子がないところ見ると、タフさは見た目通りらしい。


「食らいなさい『ウインドスラッシュ』」


 怪我をして背負われている

 いかにも魔法使いのような恰好をした女が追撃で魔法を唱える。


「ヴォーガァアアーー」

 

 はっきりとは見えないが旋風のような風の刃が魔物を襲う

 さっきの男が放った炎の矢より強いのか魔物にダメージを与えたようだ。

 ―――だけどそれがかえって不味かった。

 魔物は狙いを魔法を撃った女の魔術師と背負っていた男に切り替えた様だ。

 見た目からは想像できない俊敏さで二人に近づくと丸太のような拳で薙ぎ払う。

 背負っていた人が躱し切れないと盾を構えるが無情にも二人とも吹っ飛ばされていく。

 

「エルザ、アイザック!」


 炎の矢の男が叫ぶ、多分あの二人の名前なんだろう

 その叫びに反応するように魔物が男に向き合う。


「この野郎がぶっ殺してやる。『フレイムアクセル』」


 男がそう唱えると体が薄い炎に包まれたように赤くなる

 そして残像を残すかのような速度で魔物へ肉薄する。

 速度を上げる魔法なんだろう、魔物の近くまでいくとすごい速度で剣で斬り付けていく。


「ヴォウウウウウゥ」


 魔物が反撃するがすべて避ける。

 斬る斬る避ける、斬る斬る斬る避ける、斬る斬る斬る斬る斬る斬る。

 これは勝ったかと思った瞬間男の動きが止まる、魔法が解けてしまったようだ。

 またすぐに魔法をかけなおすかと思ったが

 男は剣を杖代わりにしてかろうじで踏みとどまっている。


「はぁ、はぁ、くそぉっ・・・」


 肩で息をしながらなんとか動こうとしているが、かなりの消耗しているようだ。

 多分あの魔法は体への反動がすごくて短時間しか使えないんだろう

 じゃなければ最初からあれ使って逃げればいい。


 過負荷で満足に動けなくなった男へ拳を振り下ろそうとした魔物の目に矢が生えた。

 もちろん矢なんか生えるわけがない

 死角へ回り込んでいた残りのもう一人が矢を放った結果だ。

 残った目へ矢を放っていくが暴れ始めた魔物の目には当たらない。

 怒りに狂った魔物は足元の男を掴むとそのまま弓使いへ投げつけた。

 

「ぐ、ぐわぁーーーーーーーがはぁっ!」

「ランスっきゃーーーあああああ!」


 弓使いは避けようとしたが

 避けてしまうと男が後の木へ叩き付けられてしまうことを考えて一瞬迷ってしまう。

 結果二人はぶつかり合いそのまま二人とも意識を失ってしまう。


 まじかよあの魔物強すぎだろ。

 どうする、あの二人は俺がいる木より結構離れた所で気絶している。

 魔物はとどめを刺すつもりか二人に向かってきている。


 ここから二人を魔法で回復するか

 いや回復魔法の射程がわからない、失敗した場合に気づかれると最悪だ逃げられない。


 降りてから回復する時間はあるか

 一人だけならいけるかもしれないが二人は無理だ。


 あのパーティーの一人か二人回復しても意味がない

 逆に四人回復して俺が回復役を務めれば勝機はある。 

 女性の魔術師が怪我のまま抱えられたいたところ見ると

 多分ヒーラーがいなかったんだろう。

 しかしバラバラになっている四人とも回復する手段が思いつかない。

 悩んでいるうちに魔物が近づいてきた、丁度俺がいる木は二人と魔物の間だ。

 あいつが二人を狙うならこの真下を通ることになる。


 こうなるともうやれるとことは一つしかない。


 ―――俺があいつを倒すしかない。


 四人を見捨てるという選択肢が

 最初からないあたりが慈愛の神の化身に選ばれた由縁か。


 勝つには今の俺にある優位な点

 見つかっていない事とこの高さを活かした奇襲しかない。


 ・・・魔物が真下に来た、やってやろうじゃないか―――


「グゥッ!!ッガガァァアアアアアアア!!!!」


 俺の真下に来たデカブツに向けて飛び降りつつ

 その勢いで剣を魔物の背中に突き立てる。

 本当は頭を兜割りよろしくぶった切れればいいんだが

 今の俺の腕力でやっても魔物の頭は両断できないだろう。

 ならば飛び降りた勢いを一番効率よく利用するために突きでいく

 これも頭狙ったんじゃ上手く刺さらないかもしれないから一番突き立てやすい背中を狙った。

 狙い通り剣が魔物の背中へ根元近くまで突き刺ささったが

 その勢いに負けて剣から手を放してしまった俺は地面に転がり落ちる。

 いきなり俺の攻撃を受けた魔物は突然の痛みに暴れまわっている。


「いってぇ、ざまあみろ。」


 悪態を吐きながら冒険者の近くへ行き、男の持っていた剣を拾う

 さっきの一撃はかなり効いたんだろうが

 暴れっぷりからみるにまだまだ試合続行っぽいな。


 二人の傍から離れて魔物を見ていると

 ひとしきり暴れまくっていた魔物がこっちを向く

 やっぱりやる気まんまんじゃねえか。


 ただ俺の攻撃も無駄ではなく、剣は背骨のやや左に刺さったんだが

 神経か筋でも傷つけたのか、左半身を若干引きずる感じでこっちに向かってくる。


「グゥグゥグフゥウウウウ。」


「威嚇してんじゃねえよ。怖えんだよ。」


 そういいながらも思わずニヤリとしてしまう。

 なぜなら剣を拾った時、既に二人にはヒールをかけていたのだ。

 二人を包んでいた光の粒子は指の怪我の時よりは長い間出てたが

 すでに消えており二人とも見ている範囲では傷は跡形もない。


 後は二人に上手く時間を稼いでもらいつつ

 残りの二人を回復させれば手傷を負ったあいつを倒すのは可能だろう。

 そんな甘いことを考えていたが傷が治ったはずの二人は起きる気配がない。

 回復は完了している、たが二人が気絶しているからか

 回復したからってダメージでかいとすぐ動けないのか

 どっちが理由か分からないがこれは計算外だ

 まじで俺一人で倒さないといけなくなった。

 予想外の事態にあせっていると魔物がこっちへ向かってくる。

 でかいくせに速い、避けられない。

 

「ぐぅぅーーーーーがっ!」


 魔物の蹴りをまともに食らい吹っ飛ばされた後

 地面に墜落しそのまま地面を転がっていく。


 かなり飛ばされたが両手でガードしたからか以外と大丈夫だ

 いや、そもそも普通ならこの細腕で防御したって

 あの巨体に蹴飛ばされたら乗用車にはねられるのと大差ない、全身の骨が砕けるだろ。

 恐らくステータスのHPと頑丈が高いから生きてるんだろうが

 さすがにこのまま何発も食らうと死ぬなこれ。


『ヒール』


 正直呪文を口にするのも若干つらいが・・・

 この痛みの中、集中し魔法を使うためにあえて呪文を唱える。

 光の粒子が体を包むと痛みがあっという間に消えていく

 すごい効き目だなこの魔法。

 

 よし、これでこっちは全快だ。

 しかしまさかゾンビアタック作戦をこんな早く使うことになるとは思わなかった。

 こうなったら残りの二人にもどうにかヒールしつつ

 四人が起きるまでサンドバックになって耐えるしかないか。

 そんなことを思いながら回復した体で立ち上がりつつ魔物の方を見る。


「やべぇ・・・。」


 しまった、 俺が吹っ飛ばされて移動してしまったせいで

 あの冒険者二人が俺と魔物の直線状に入ってしまっている。

 魔物が二人を捉える、回復したことには気づいてないとは思うが

 何か思うところがあったのか、明らかに二人を標的にした。


「ガァアアアアアア」


 叫びながら二人に向かっていく魔物。


「やめろ!ばか!こっち狙いやがれ。」


 俺も叫びながら二人に走っていく

 位置は俺の方が若干近いが向こうの方が圧倒的に速い、間に合わない。

 いやそもそも間に合ったからってどうなるんだ

 叩き潰されるのが二人から三人になるだけだ。

 頭じゃそう思っても足は止まらない

 俺より魔物が先に着き、振り上げていた拳を二人に振りかぶる。


 くそもうちょい、そう思い懸命に走るが間に合わない。


 少しでもと、左手を懸命に伸ばす。


 ―――やめろ!!!


『グチャッ』


 俺が二人の手前数mの所で骨と肉が砕ける嫌な音がした。



 ―――ただし砕けたのは魔物の腕だった。


 魔物と二人の間に半透明な楯のようなものがあった、かなりでかく魔物よりも大きい。

 魔物の振りおろした拳はその楯に阻まれそして折れていた。


「グゲギャゲエエエエエエエ」


 折れた右腕を抱えながらのたうちまわっている魔物を尻目に考える。

 タイミング的にこの楯は俺が出したんだよな。

 少し念じると俺の手前まで来る。

 やっぱりそうだ、ちゃんと制御できる。

 よし、これがあればなんとかなる。


 その後、楯を駆使しこっちへ再度向かってきた魔物を防いでいく。

 向こうも学習したので最初の時の様に殴りかかってくる腕が折れるようなことはない。

 少しこの楯を使って分かったのは

 これは俺の左腕から出しているのか左手を構える必要がある。

 同時には1つしか出せず、大きさは今3mほどで

 これが最大の大きさだが小さくはできそうな感じだ。

 で、これが重要なんだがこれの射程距離が5mほどなんだが

 この射程ならなら自在に動かせる。

 これに気づいたとき一つ閃いたんだが

 中々タイミングが掴めなくて試せずジリ貧が続いている。

 

「ウウウゥゥゥ、ウオォォオオオ!!!!」


 痺れを切らしたのか左腕を思いっきり振りかぶりってきた、よしこのタイミングだ。

 楯をギリギリ俺の方まで寄せておき

 振り下ろさせれてきた腕に向かって飛ばしてやる。

 カウンターの様に相手に向かっていった楯と腕がぶつかり合い

 再度相手の腕をへし折った。


 またもや折れた腕を抑えながら魔物は転がる。

 多分最初にあいつの腕おったのも無意識に楯を出した時に

 たまたま今みたいにカウンターになってたんだろう。


 改めて意識した状態でカウンターをして気づいたんだが

 相手の攻撃に対しこっちが楯を押した際、若干の抵抗はあったがすんなり押し切れた。

 この楯を移動させる力ってかなり強いようだ、だったらもう一つ試してやる。


 魔物が懲りずに立ち上がるのを見ると今度はこっちから射程内にまで近づく。

 今度はカウンターとかそういうのではなく小細工抜きの力押し。

 この楯を全力で魔物に叩き付ける。

 たしか楯を叩き付けるシールドバッシュとかいう技があるが

 それをこの3mはありそうな魔法の楯で行った。


「ゲハァギェアッ」


 楯を叩き付けられた魔物はピンボールの様にその巨体を吹っ飛ばしていく。


「すげぇ・・・」


 予想外の威力に逆に驚かされてしまう。 

 2m半はあろうかという巨体をあっさりと吹っ飛ばすとかどんだけ力あるんだこの楯。

 吹っ飛ばされた魔物は打ちどころが悪かったのか

 それともさすがに限界だったのか立ち上がる気配はない、虫の息だ。


 もう一つこの楯の使い方を思いついたのだが、さすがにグロイし可哀想かなと思ったが

 止め刺さないとこいつはかなり危険だなと思い実行することにした。

 

 横たわっている状態の魔物の顔近くに来ると

 楯を地面や魔物と垂直になるように出現させ魔物の首の上に持っていく。

 そしてそのままギロチンの刃の様に楯を振り下ろす。


『ザクッ』

 

 無事ギロチンと同じ役割を果たした楯を消すと疲れでその場にへたり込んでしまう。


「あーやばかった。」


 実際この楯の魔法覚えなかったらかなりやばかった。

 いくらなんでもお人よしにもほどがあるなと少し反省しつつも

 全員助かったことに安堵する。 


「さてこの後、どうすっかな。」

 

 そういいながら立ち上がる、まずは残りの二人を回復しないとな。



「ランス起きて、ランス。」


 弓使いが声を掛けながら体を揺さぶる。


「・・・うぅ、シルバー・・・、はっ、あいつはどうなった。」


 そう言って炎の矢の男は飛び起きた

 唯一分からなかった弓使いの名前はシルバーっていうのか。

 俺がどうでもいい感想をもっていると残りの二人もやってきた。


「ギガンテスはすぐそこで死んでいるよ、首無し死体になってな。」

 

 怪我した女魔術師を背負っていた男、多分アイザックって名前の男がそう答えた。

 あの魔物はギガンテスっていうのか、あんな奴ごろごろいるんじゃないだろうなここ。


「アイザック、エルザ二人とも無事だったのか。」


「ええ、全員無事よ。怪我も全員治癒されてたわ。」


 そういわれてランスは自分の体を見まわし怪我がないことに驚いている。


「フレイムアクセルの痛みもなくなっている、誰が治してくれたんだ。」


「ギガンテスを首チョンパしてくれた人達なんでしょうね。

 ただ、一番最初に私が目を覚ましたんだけどその時には誰もいなかったわ。」


 エルザと呼ばれている女魔術師がそう答えた。

 たしかにこの人が最初に目を覚ましていたな。

 回復魔法をこの人とアイザックって人に掛けて

 ギガンテスとやらに刺さった剣回収してたら目を覚ましそうになってあせった。


「別になにも盗られてなくて、ギガンテスを倒してくれて、傷まで治してくれて

 おまけにギガンテスの魔石もそのままって都合よすぎない?」

 

 シルバーって人はそう言うが物をくすねる気は最初からないが

 ギガンテスの魔石はエルザって人がすぐ目を覚ましたら取れなかっただけだよ。

 まあ止めさしたのは俺だけどこの人たちががんばって弱らせてたのを

 掻っ攫ったような真似は後ろめたさもあるからかえって良かったかもしれない。


 四人はあーだこーだ言いながらギガンテスの魔石を回収すると街の方へ帰って行った。

 それを見届けると俺は木の上から降りて引き続き薬草回収に勤しむのであった。

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