2話 化身
改行に慣れておらず最初のうちは度々改行の修正をするかと思われますご了承ください。
目が覚めると日が結構上っている、丁度正午ぐらいか。
眼前には都会育ちの俺には見たこともないぐらいの大自然が広がっている。
街道っぽいのはあるがその周りは自然というか
木、木、木、木しかない、森の中っぽいな。
「無事これたのはいいが何すりゃいいんだ、てか何ができるんだ俺。」
神の化身とか大層な肩書きがあるから色々できるんだろうけど
その辺完全に聞き忘れた、失敗したな。
そもそも俺はてっきり神が出てきたから
剣と魔法のファンタジー世界かと思ったけどどうなんだろ。
よくよく考えると俺の世界にも神様はいたけど魔法なんてなかったわけだし。
その疑問に答えるわけじゃないだろうけど足元にリュックと剣が転がっていた。
一応剣は必須ってことか、そういえば魔物はいるとか言ってたな。
てことはここは危険なのか?
冷静に考えると行き当たりばったり過ぎる。
あの決断に若干後悔してしまったがこうしてても仕方ない。
どこに行くかの指針を出すためにも恐らく慈愛の神様が用意したであろう
リュックをあさってみる。
「なにがでるかな、なにがでるかな。」
若干下がったテンションを上げるため歌いながらリュックをあさってみる。
リュックの中には
お金(金貨、銀貨、銅貨っぽいの)
手帳(詳しく見てないが白紙ではなかった)
食糧(カチカチのパンと謎肉)
水筒(瓢箪だった)
ちなみに服装はいかにも布の服か旅人の服って感じの質素な服装になっていた。
「リュックは大したもん入ってねえな、手帳は後でみるとして後はこの剣か、
ん〜ちょっとでかくね?」
いかにも鉄の剣って感じで大した効果があるようには見えない剣だが
妙にでかい、 はっきり言って扱いづらい。
たぶんこれ振り回したら逆に体が振り回されそうな気がする。
持つところも俺の手に比べて太くて持ちにくいって、あれ?
「なんで手がこんな子供みたいな可愛らしい感じになってるんだ。」
剣の握り手をつかんでいる自分の手を見て気づいたが
あきらかにちっちゃくなっている。
サイズが小さいだけじゃなくて子供みたいな手だ。
荒仕事はしてないが一応16才男子だけあって
それなりに無骨な手をしていたはずの手は小学生みたいな手になっている。
改めて体を見ると身長もたぶん、かなり低くなっている。
比較するのにいいものがないからはっきりしないが
身長は前より頭一個分以上低い。
「若返ったのか
不老不死なら若返りとか逆に迷惑なんだが、元の年齢がよかったんだけど。」
そういいながら体を見回し続けているとなんか後ろにチラチラ見える。
なんだこれとよくみると銀色の髪の毛だった、勿論俺のだった。
頭を触ってみると髪の毛が銀色になってて
長さは腰まで届くぐらいロングヘヤーになってた
まさかと思って体を見回しながら慈愛の神様の容姿を頭に浮かべる。
身長、姿形、髪の毛ともにあの慈愛の神様にそっくりだ。
顔は鏡がないから分からんがここまでそっくりなら多分一緒だと思いたい
これで顔だけ俺のままならチクハグ過ぎる。
若返ったとかじゃなくて神様と同じ容姿になったんだろう。
化身だからって姿形まで同じにしなくていいだろうに。
ちょっとまて、てことはもしかして。
重要なことに気が付いて慌てて手をとある部分に伸ばす。
「よかった、一応男だ。」
一応男の勲章はあった、この容姿で男ってのもどうかと思うが
まあショタ好きのお姉さんがいればなんとかなるだろと思いたい。
色々あってかなりトンチカンなこと考えながら手帳に目を通してみる。
手帳には日本語じゃない言語で色々書かれていたが問題なく読める。
たぶんこの世界の言葉なんだろうけど勉強せずに読めるのはありがたい。
とりあえず役に立ちそうな情報としては
化身はその神の司る魔法と固有スキルを覚えるとのこと
慈愛の神は光属性と闇属性の魔法を司るらしい
固有スキルは人によって違うので俺が何を覚えるかは分からない
慈愛の神の化身なら補助系だろうとのこと
光魔法と闇魔法については
光魔法 攻撃、防御、回復、バフ、闇属性に対しデバフとバランスのいい魔法
慈愛の神の化身は一応すべて使用できるが攻撃魔法は苦手
闇魔法 攻撃、デバフが多い魔法だが闇属性を癒す闇魔法と
闇属性を防ぐ防御魔法があり慈愛の神の化身はその系統のみ使用可能
身体能力は化身の中ではかなり低く頑丈さだけは平均なみだが
それ以外は人と大差ない、魔力はトップクラス。
自分の能力としてはこんなところか
聞き逃していたことが色々載っているのがありたがった。
光魔法はともかくなんで闇魔法使えるんだ?
補助系のみの制限はあるがよく分からん。
魔法があることにテンションが上がるが
俺って完全にゲームでいうところのヒーラーだな、慈愛の神って時点で予想できたことだがこれはパーティーとかそういったの考える必要がありそうだ。
後、手帳に書かれていたのはこの世界の簡単な常識的な事とこのあたりの地図。
近くにアルーシャという街がありその近くの遺跡にいいものがあるので
そこを目指すといいと書いてあった。
その遺跡にいきなり飛ばしてほしかったがどうも魔物もいるから
アルーシャ付近でレベル上げて挑めってことらしい。
レベルがあることにさらにテンション上がりつつ身支度を整え出発する。
ただ手帳に教会関係者に化身とばれると協会に祭り上げられることになるのでお勧めしないとあった、大丈夫この世界の教会。
日が傾いて夕方ぐらいになるころには森を抜け、ほどなくして街が見えてきた。
ずっと歩き通しだったけどそんなに疲れてない。
見かけと違って意外と体力がある体なのかもしれない。
確か頑丈さはそれなりにあるらしいがこういうのも頑丈さにあたるのか?
道中色々魔法が使えないか試してみたがレベルが低いのかやり方が間違っているのか使える魔法はなかった。
いや正確にいうと一つ使えたようなんだが・・・
本当に使えたのかどうかがわからないのがあった。
途中小腹が空いたので食糧も試しに食ってみたがパンは文字通り歯が立たないぐらい硬かった、どうやって食えというんだこのパン。
謎肉は怖くて食っていない、結局水だけしか口にしてない。
「もしかしてあれ襲われてる?」
街まで目測で30分ぐらいまでのところで行商しているっぽい
2台の馬車がなんか変なのに襲われている現場に出くわした。
いかにもゲームにでてくるようなゴブリンっぽい奴ら5体ぐらいに
馬車が囲まれていて護衛っぽい屈強なやつら3人が応援してる。
ただ正直全然ピンチに見えない、護衛は馬車守るのに専念しているから
攻めあぐねているようだが攻めてくるゴブリンは簡単に追い払っている。
あ、一匹たおした。
残り4体になりさらに馬車側が有利になっている。
普通に考えると俺はここで見学でもしているのが一番いいだろう。
ただ逆に考えるとここで加勢にいくと間違いなく勝ち戦に乗れる。
戦闘経験のない俺が周りに人がいる状態で実戦
しかも勝ち戦に参加できるってのは大きい。
それにこのあたりで鍛えなさいってことで送り込まれたってことは
このあたりの魔物は俺一人でもなんとかなるってことだと思う。
頭の中でそういった打算を行いまずは戦ってみようと馬車へ向けて駆けていく。
狙いは少し離れたところにいる奴に決めた。
「っはぁーーー!!」
全体重を剣に乗せて突進しつつ狙ったゴブリンまであと少しのところで叫ぶとゴブリンたちがこっちに気を取られる、狙ったゴブリンも気づくがもう遅い。
勢いに任せて突っ込んだ剣に体を貫かれる。
「グゲゲェゲェギィーーーーーー」
叫び声を上げ、体を痙攣させつつ血走った眼でこっちを睨んでくる、怖えよ。
ゴブリンは持っていた武器を手放し体に刺さった俺の剣をつかもうとする。
意外としぶといなと思いつつ小内刈の要領で足をひっかける。
学校の授業程度でも柔道やっといてよかったと思いつつ授業とは違い
受け身なんか取らせないようゴブリンを地面へ叩き付けてやる。
「グゲェー!!ゲェ・・・ゲ・・・」
倒れた後、馬乗りになり刺さっている剣をねじってやると
叫び声が段々か細くなり体から力が抜けているのを感じる。
完全に力が抜けたのを確認した後、剣の抜こうとするが中々抜けない
足でゴブリンの死体を固定しつつ何度か引っ張るとやっと抜けた。
抜けた後周りを見渡すと残りのゴブリンも全部地面に力なく横たわっていた。
ゴブリンと格闘中も横目でチラチラまわりを見ていたが、ゴブリン共は俺の叫び声に気を取られた際に、護衛の人らに一気に攻められて総崩れになっていたが無事に全部打ち取ったようだ。
「いやーお嬢ちゃん大したもんだな」
そう声をかけてきたのは護衛らしい人たちの一人
30歳半ばぐらいのおっちゃんだった。
おお、日本語じゃないが言葉ちゃんとわかる。
「いえ、ゴ・・・、こいつら一匹ぐらいなら何とかなりますよ」
ゴブリンといいそうになったが正式な名前は分からんので一応伏せておく。
後、やっぱり俺は女に見えるのか。
「お嬢ちゃんじゃなくて一応男ですよ俺。」
「おお、そうなのかそいつはすまねえな、助かったよ。」
「いえ、まあ正直援護なんか全く必要なさそうでしたけどね。」
「いやいや、こいつらゴブリンどもは数が多いからな
今回はこいつらで打ち止めだったが追加で来るかもしれん事を考えると
数減らせるに越したことはないからな。」
男がゴブリンって言ったのに驚いたがこの翻訳能力的なのが
俺がわかりやすい言葉に置き換えていると考えるとそう不思議でもないか。
「俺の名前はガルディっていうんだがお前さんは?」
「えっと、ユウトといいます。」
マエダ ユウトで通じるかわからんのでとりあえず名前だけで答える
相手も名前だけだし大丈夫だろ。
この世界で苗字があるのが一般的かわからんし
苗字と名前どっちが前に来るかもわからんからユウトで通すか。
「俺たちはこのままアルーシャへ向かうんだがユウトお前さんも一緒に向かうか。」
おお、お誘いいただいた。勿論OKだ少しでも情報がほしい
取りあえず俺の設定は田舎から出てきた何も知らない若者でいこう。
「ええ、俺もアルーシャに行くつもりだったのでぜひお願いいたします。」
「おうわかった、じゃあちょっとまってなゴブリンの魔石とったら出発するからな
お前さんも自分が倒したゴブリンの魔石回収しときな。」
いきなり新単語が出てきた、なんだ魔石って。
「魔石ってなんですか?」
「なんだ知らねえのか魔物には魔石ってのがあって魔炉の燃料や討伐証にしたり装備の材料になったりするんだよ、大体心臓の近くにあるから探ってみな。」
そういいながらガルディさんは俺が倒したゴブリンを指さした。
「はぁ、ちょっとやってみます。」
そういいつつゴブリンに剣をザクザク突っ込んでいく
結構スプラッターなんだが意外と平気だな。
そういえばいきなりの実戦でもビビってなかったし
混乱とか怯みとかが状態異常扱いで化身ってそれに耐性でもあるのかな。
俺がゴブリンに開けた体の穴を広げる感じで剣を差し込んでいくと
固いのにあたった感じがした、これが魔石かな。
手を突っ込んでいくと丸っこい石みたいなのがあったので引っ張りだしてやると
ビー玉ぐらいの大きさの半透明の綺麗な石が出てきた、以外と小さいな。
「これが魔石かな。」
「おう、それが魔石だ、ゴブリンは素材もねえし魔石しか換金出来ないからな
街行ったら冒険者協会で換金しときな。」
また新しい単語がでてきた、冒険者協会ってのがあるのか
ゲームとかだとそういったところでクエストとか受けれるんだが
実際はどうなんだろ。
「冒険者協会ってなんですか?」
さっきから質問ばっかだな俺。
まあ、ものを知らないから仕方ないんだけど。
「なんだ坊主、冒険者になって一旗上げにでてきたんじゃねえのか?」
「いえ、実は一旗上げに出てきたのはあっているんですけど
ド田舎出なんで全然ものを知らないんですよ。」
取り敢えずそう言っておく、まあ間違ってはないだろ。
「じゃあ人生の先輩が道中色々教えてやろう。
お、こっちも魔石の回収ができたな、じゃあ出発するか。」
ほどなく馬車が出発しそれに合わせて俺も同行する。
俺はガルディさんと一緒に馬車の横を歩きながら色々教えてもらった。
まずこの馬車一行は商団だった、それは大体予想通りだったけど
てっきりガルディさんは雇われた護衛かと思っていたがこの商団のリーダーで
護衛は残りの二人とのことだ。
「なんで商団のリーダーが戦っていたんですか?」
「俺は昔冒険者でそれなりに腕に自信あるからな
まだまだこのあたりに出てくるゴブリンやコボルトぐらいなら負けはせんよ。
で、俺が戦えればその分護衛の人数が減らせる
まあこのあたりならレベル3の冒険者が3〜4人もいればまず大丈夫だ。」
「何度かやめるように言ったんだけどね
うちの旦那たまにこうやって魔物と戦ってないとストレスが溜まるって言って聞かないのよ。」
馬車の業者をしながらそう言ってきたのはカルディさんの奥さんの
リディさんという人だ。
さっきの戦闘の際は馬車の中に避難してたらしい。
リディさんにそう咎められガルディさんは笑ってごまかしていた。
多分まだまだやめる気はないんだろう。
それより気になったのがガルディさんの言っていたレベルだ。
「逆にいうとこのあたりってレベル3の冒険者3〜4人いないとやばかったりするんですか?」
俺のレベルは分からんが多分1だと思う、しかも一人だ。
もしかして運が良かっただけで道中結構やばかったりしたのかな。
「いや、あくまで今のは護衛をする前提の構成だな。
旅をするだけならレベル1が一人でも大丈夫だ。
ゴブリンやコボルトぐらいなら子供や年寄りじゃなきゃタイマンで勝てる。
複数なら走って逃げりゃよっぽどのデブでもなけりゃ逃げ切れる。
このあたりでやられるってのは大体駆け出しのひよっこが実力を過信して、一人で複数のゴブリンとかに挑んで返り討ちにあうってのが多いな。
正直お前さんが加勢にきた時は返り討ちにあうんじゃねえかと心配したが・・・
それなりに鍛えてたんだな、あんなにあっさり倒すとは思わんかったよ。」
「そうそう、私もいきなり女の子がゴブリンに突っ込んできたと思ったから
びっくりしたわ。」
あー、やっぱり危なっかしい感じで見られてたのか
まあいきなり今の俺みたいなやつが弱いとはいえ
魔物に強襲する姿は無謀に見えるよな。
ただ、最初に剣に触った時、剣の重さや長さと体の重さや大きさが合ってなくて
使いづらいのはあったけど重いとは思わなかった。
戦って確信しけど腕力とかは見た目と違いそれなりにあるのが分かった
手帳にあった人並みっていうのは成人男性並みってことだろう。
「ええ、見た目の割に頑丈ってよく言われます。」
「前衛職になるつもりなのか?」
「いえ、一応体も鍛えてますがヒーラーになろうと思ってます。」
「ああ、だったら慈愛の神様の信徒になるのがいいな、アルーシャにも神殿があるからまだなら信徒になっといた方がいい。」
ええっと確か信徒って言葉は手帳にあったな。
特定の神様の信徒になるとその神様の司る魔法しか使えなくなるが
詠唱が不要にあり効果も上がるとか。
信徒は神殿で簡単に変えれるからヒーラーは
とりあえず慈愛の神の信徒になるのが一般的らしい。
化身の場合は初めからその神に固定状態になるから意味はないが
その神の信徒と言っておけば無難とのことだ。
「一応、慈愛の神様の信徒にはなっているので大丈夫です。」
「おお、そうだったのか。
しかし珍しいな、若い男だと前衛職か派手な攻撃魔法の使える
マジシャンになるのが多いんだがその若さでヒーラーってのは渋いな。」
まあ、正直攻撃魔法ポジションにもあこがれるが
こればかりはもう決まってしまっているのでしょうがない。
ただ俺ゲームじゃヒーラーとかやったことないから不安なんだよな。
一度だけヒーラー職やった時は自己バフ、自己回復しながら戦っていく
殴りヒーラーという異色の戦い方だった。
さすがにここでそんな戦い方通用するかは分からんし
取りあえずは正統派ヒーラー目指すか
折角、慈愛の神の化身って立場なんだし。
「でもユウトちゃんにはあっていると思うわ。
上半身裸のむきむきで斧振り回したり
奇声あげながら攻撃魔法撃ちまくるユウトちゃん見たくないわ。」
「おまえなぁ、それは冒険者に対する偏見だぞ。
たしかに俺が昔組んでたパーティーメンバーはそんな奴らだったけど。」
どんな濃いパーティだったんだよと思いつつ
街道を進んでいくと 街が目の前まで見えてきた。
周りを高い壁に囲まれ中心にはさらにでかい建物がいくつも建っている。
どれも中世ヨーロッパを思わせるようないかにもな建造物だ。
ダンプカーがそのまま入れそうな大きさの城門前にはいくつか馬車が止まって、順番待ちをしており一番先頭の馬車が衛兵とやり取りをしている。
多分検問だろうが手帳にあった教会関係者に化身がばれないようにだけ、気を付けりゃ何とかなるだろとか気楽に考えていると前の馬車がはけてきた。
次が俺たちの番だな、さあ初めての街だ。