第138基地、強襲
「エイリ!左30℃方向から“キラービー”3!挨拶代わりに串焼きにしてやれ!」
隊長機仕様のBMW“グレッド”から、部隊内通信で指示が飛ぶ。
指示を受けたのは長距離砲撃仕様の“グレッド”
装備したBMW-C68“ギャリク”180㎜超射程鉄貫砲を素早く構え、躊躇なく引き金を引く。
「ダブル!そっちだカザード!」
放たれた音速の釘状の弾丸が、軌道の重なった二機の空戦用BMW“キラービー”の腹を撃ち抜いたと同時に、群れからやや離れていた“キラービー”が大きく右にスライドした。
蜂のような外観をした“キラービー”ならではの空中滑空軌道は、戦争当初はその独特な運動能力により、対地・対空問わず高い戦果をもたらしていた。
「ビンゴだ羽虫が」
しかし、カザードと呼ばれた男が操る“グレッド”は、その軌道を正確に読み、右手のBMW-GM124アサルトライフルをスポット射撃する。
まるで吸い込まれるように射撃ポイントに滑り込んだ“キラービー”は、文字通り蜂の巣にされて爆散した。
『ロウルズ隊長!このままじゃジリ貧ですぜ!』
後方に待機している電子戦仕様の“グレッド”から通信。
ロウルズと呼ばれた隊長機の男がサブモニタを走視しながら答えた。
『わーってるよそんな事!ワイツ、状況は?』
電子戦仕様の“グレッド”のシートに座るワイツが、モニターを見ながら報告する。
『北東の陸路から“ゴリア”、“ウルフェン”の陸戦部隊が中隊3隊規模で向かって来ます!多分後続の航空部隊もいるでしょうね』
『こんな湿気た基地にご苦労なこったぜ』
『やっぱ感づかれてんじゃない?隊長』
長距離砲撃仕様の“グレッド”に乗るエイリが回線に入った。
『タイミングばっちりだし、敵さんの規模的にもさ』
『だとすりゃ感づかれてるなんて控え目な表現はノーだな』
『ではやはり』
同じく回線に入ったカザードの言葉に、頷きながらロウルズが答える。
『こっちにPBMWが来るのが洩れてるみたいだな』
その時、ロウルズの“グレッド”の右手側前方300m地点で、轟音が鳴った。
『うおう!?』
『地上部隊の奴らか』
『当たったらどうすんだクソ野郎!』
『当てにきてんでしょうが』
『熱源、さらに増大!きますぜ!』
ワイツの言葉の直後、空に無数のミサイル郡が飛来していた。
『全機散開!』
ロウルズの号令とほぼ同時に、集まっていた三機の“グラッド”が三方に散る。
『エイリはポイント215で火力支援!カザードは俺と185まで前進!ワイツは電サポしつつ適時武装切り換えでエイリと支援!』
『『『ラージャ!』』』
『他の隊の連中は自分のとこで精一杯だ!優等生の俺らでクソ共に鉛弾のウェルカムサービスだ!』
『『『食べ残しは?』』』
『もちろん厳禁!』
『『『ボーナスは?』』』
『“フロンテアで一杯づつ!”』
『『『オーライ!』』』
『安上がりな部下を持って幸福者だよ俺は』
全く無駄のない動きに無駄話を添えて、第138機動戦隊基地第3戦闘小隊は、戦場を駆ける。