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殺生(さっしょう)
こんな悲惨に奪われるために貴女は
この世に生まれたのか
もしこれが自身の結末だと知っていても
貴女はこの世に生まれたいと言うだろうか
こんな残酷な死に方と知っても
生まれて良かったと言えるだろうか
こんな残酷に奪うためだけに貴男は
この世を生きるのか
もしこれが自身の末路だと知っていたら
貴男はこの世に生きたいと望むのだろうか
こんな醜悪な生き方と知っても
そうなっても良いと奪えるだろうか
これが二人の最後と
出逢う前に分かったとしても
貴女は彼を愛し
出逢えて良かったと笑えるのだろうか
これが二人の最後と
出逢う前に分かっていたなら
貴男は彼女に出逢い
刃を振るうことが出来るのだろうか
悲嘆に悲痛な想いと
残酷に残虐な殺意は
出逢いも一度は愛し合った時間も
それまでの歩みも幸せな日々も
全てを虚偽に変えて行く
意味もなく
価値もなく
愛し合っていた二人は今
ただの過去に起きた事件の
被害者と加害者としてだけ
虚しく人世の記録に残る