虚脱人生
ふらふらと歩き
ふらりと立ち寄る
飲んでいる積もりが
いつの間にか呑まれていた
理性を飛ばす飲料水
味も分からず
意味も無く
ただ煽るだけ
情けない自分を肯定して否定して
大人になるとはこういうことだと
言い訳だらけの毎日に
開き直っただけの人生
何時も通り向上心は無く
相変わらず努力は嫌いで
一丁前に語った理想は
一人前の人世に崩され
世界なんてこんなものだと
偉そうに自嘲気味に笑った
詰まらない喧騒に塗れた雑踏の中
一人の少女が弾き語りをしていた
綺麗事臭い言葉
白々しい絵空事
どうようもなく腹が立って
たくさん罵倒して傷付けて
穢してやろうと近寄ったが
体たらくな酔っ払いの足は
簡単に縺れて
酩酊した駄目野郎の肉体は
安易に崩され
そのままシャッターに凭れかかる
虚ろな眼差しで仰ぐ月は眩しく
空虚な心に染みる歌声は美しく
いつの間にか流れる雫は
いつの間にか震える唇は
何の泪で何に耐えていたのか
そんな俺の目の前で
向こうから歩いて来た
俺と同じような酔っ払い野郎が
無垢な弾き語りの少女の上に
覆い被さるように凭れかかり
「邪魔だボケ」なんて
理不尽な罵声を浴びせていた
黙ってふらふらと立ち上がった俺は
そいつをぶん殴ってやったが
殴り返されて倒れ込んだ
そいつの罵声を聞きながら
俺はただ無気力に無抵抗に
暴力を受けていたんだ
なんでやり返せないんだよ
って自分を叱咤して
また自嘲気味に笑った
俺に暴力を振るった酔っ払いは
ふらふらと何処かへ消えていき
虚脱気味に寝返りをうった俺に
誰かの手が差し伸べられた
大丈夫ですか、なんて
こんな体たらくな俺を心配して
不安そうな顔をした無垢な少女
俺は自分に嘲笑して
「酔っ払いだから大丈夫」
なんて言ってみせたんだ