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他人の事を考える。これ当たり前

桜舞う季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか。

この度突然の手紙お許し下さい

私この地区を担当している魔王ですが今回はお願いがありまして。

この地区一体に七つの魔石を放ちました。

これを一年以内に私のとこに届けて頂きたいのです。

冒険者は五人までとし。魔石はそれぞれ部下を配置しております。

大変唐突な申し出ですがなにとぞ良い返事を。それでは失礼します


追伸――魔石は一年過ぎると暴走しますのでお早めに

国王はとても困りました

家臣も頭を抱えてます

「王!いかが致しますか!返答次第では我が国が危機にさらされますぞ!」

「分かっておる。しかし五人の命知らずの冒険家などそうそう見付からんわ。少なくとも国民にそんな者はおらん」

すると大臣が何かを思い出しました

「そうだ。王!数日前に来た旅人に頼まれては如何でしょう?あの者達は丁度五人組で『旅する魔王』と呼ばれた者達ですぞ」

「そんな者達が来ていたのか!今すぐここに呼び出すのだ!」

「しかし彼等は三日ならぬ四日しか滞在しないルールを持っており、今日旅立った筈です」

王は手元のレバーを引くと大臣の足下がパカッと開き大臣はまっ逆さまに落ちていきました

「早く旅人を呼んでくるのだ!」


もう王室には誰もいませんでした




さてさて、ギリギリ出国前だった五人組は王様の前に座っています。勿論椅子はゴージャスで、美味しいデザートも出されています

右から順に深娜、慎、霞、洸夜、加弥の順です


「実はな、カクカクシカジカなのじゃ」

「意味が分かりません」

霞の厳しい突っ込みです。流石魔王!

「まあこれを読んでくれ」

渡された手紙をじっくりと読み、四人に解りやすく説明した

「カクカクシカジカなんだって」

『成程〜』

「何お前ら!わしの時は解らなかった癖に!」

霞は手元のスイッチをポチッと押すと王様の足下がパカッと開き王様は目の前から消えた。

ついでに慎の席もパカッ


「なぜだ〜・・・」

虚しい木霊だけが残った




第一章 完







前回のあらすじ


台風の目にレモンの汁をおみまいした霞他愉快な仲間達は次の敵、カスタネットのいらない様で実はかなり重要なゴムを目指し、旅立った



第二章 完







嘘だよ?




さて、王様の『何でも願いを叶える』と言う提案を採用し、意気揚々と北の鉱山を目指していた

ついでに王様から軍資金を要求し、みんな装備が充実している



慎は竜の鱗で編んだ碧の武道着に虎と獅子の皮で編んだグローブを身に付け、相変わらず素手で通している


洸夜は白の修道服は変わらないが鉄の杖から神秘の木杖(道具として使うと回復できる)に変え、攻撃魔法も充実してきました。最近は精霊も召喚出来るようになりました


加弥は飛龍の皮で造られた朱と翠の武道着(ちょっと大きい)に、白のリボンで髪を縛っている。最近は新しく短剣の千角(せんかく)を手に入れ、益々狂暴・・・じゃないや強さに磨きがかかっている


深娜はと言うと見た目はあまり変化はないが、黒のローブは〈暁の影〉と呼ばれる魔力を上げるローブで、箒は〈断罪の鎌〉(既に箒ではない)を装備し、全体的にレベルアップしている

最後は霞、正直服装は相変わらず司書の格好である。しかし戦闘能力は飛躍的に伸びた。まずは初級呪文の使用加能。深娜の契約下に就いたので初級程度は扱えるようになったのだ。さらに加弥から強引に武術を叩き込まれ合気道に似た武術を覚えた。さらに負けじと洸夜が回復呪文を覚えさせた(魔術と違い、聖職者に就くことで簡易回復呪文は得られる)。

おかげで中途半端なオールマイティーになってしまった


さて、鉱山を目指して進む一行。それを阻むモンスターの群れ!



意味があるかな?


仮にも旅する魔王と言われた彼等にとって、出てくるモンスターは新品の醤油等のゴムで出来たプルタブ並にゴミだった






鉱山東地区―ダイヤ発掘地


「掘るぞ〜」

『おー!』

早速泥棒です

掘れば掘るほどザックザクです


既に目的を忘れそうになったとき、一人・・・・・・もとい一匹の巨体が話しかけてきた

「あのー、勇者一行様ですか?」

「はい、そうですが貴方は?」

「申し遅れました。私、魔王第三部隊調理部主任のクロケットと申します。こちらの魔石を賭けて勝負せよとのことで」

クロケットさんの手には赤い石が納められている

改めて見ると、クロケットさんは大きくて水色の体毛に覆われた狼みたいな人(獣)で、腰には中華包丁を下げ、中華鍋しょっている


まさに中華の獣!


「一対一の勝負を希望したいのですがよろしいでしょうか?」

かなり丁寧な口調で魔王子分とは思えません

タイマンを受け入れ、相手をするのは我等がフェチ男!

マッスル慎・イン・ザ・チビ!

「武は礼節を持って接するべし」

フェチ男はいつになくマジメです

お互い深く礼をし、身構える。

クロケットさんはまだ包丁を抜かず、左手を前に出し腰を低く構え、全くのスキを見せていない。

魔王配下だと改めて認識できる気迫だ


慎も握った拳を軽く前に出し、低く構えている。先程とあることを耳打ちしたせいか、異様な気迫を放っている



「何て言ったの?」

加弥の質問に笑いながら答える

「加弥の編んだ手袋あげるって言った」



霞、撃沈




最初に仕掛けたのはクロケットだった。左右にステップを踏みながら素早く相手の死角に潜り込み、慎の脇腹めがけて抜き手を放つ。しかし慎はバックステップで回避し、着地と同時に前へ飛び込み低い回し蹴りを放つ。

クロケットは跳躍し、後方に逃げるが慎は追い討ちをかけるようにソバットを叩き込む。

なんとか防いだクロケットだったが予想以上に威力があった為、バランスを崩し着地を失敗し地を転がる。直ぐに起き上がるが目の前には既に慎の拳が突き出され、顎に重い一撃が入った

人間なら当分は目が覚めない一撃なのだが仮にも魔族の一員、すぐさま後ろに飛び距離を取った

「流石は旅する魔王と呼ばれた勇者一行、強いですね」

口から流れる血を拭い、包丁を抜き、鍋を構える

「次は本気ですよ!」

言い終わらぬ内に姿が消える


地を蹴る音のみが周りに響く

不意に慎は体を右に傾ける

その瞬間左の腕に赤い筋が入り、黒い血が滴る

息を飲む三人をしりめに慎はギリギリの所でクロケットの速攻を避けている。しかし次々と傷は増え、碧の服は黒に染まっていった


しかし慎の目はまだ生きていた。血走る目は確実にクロケットを捕えていた

「まだ耐えますか?」

何処からともなくクロケットの声が聞こえる

「素晴らしい体力ですがそろそろ終りですよ」




クロケットの忍笑いが消えると同時に鮮血が空に舞った




「全く恐ろしい人だ」

横薙に切りつけた包丁を素手で掴み、右手を握り締めていた。


「ギブミー加弥の手袋〜〜〜!!!」

降り下ろされた拳は光を放ち、雷を纏う


破砕音と共に落雷が慎の拳に落ち、凄まじい爆風が広がる


飛ばされないよう必死に堪える三人




しかし撃沈した霞は空を舞っていた




「参りました。私の敗けです」

胸が陥没したクロケットは赤い魔石を慎に渡す


クロケットは包丁を地に刺し、高らかに叫んだ


「我が王を楽しませてくれ魔王の名を持つ勇者達よ!いつまでもその姿を突き通してくれ快楽の勇者達よ!」



少しずつ霧の様に体が薄れていく



「またいつか手合わせをお願いしたいな」


その声を最後にクロケットは空に消えた







「断わる!」

慎は断固拒否だった




さて、早速赤の魔石を手に入れた一同は次なる石を目指し旅だっ・・・・・・


「ねえ、霞は?」

深娜はいつもいる仲間が不在な事に気が付いた


『えっ?』

・・

・・・

・・・・


『あ〜!』


さてさて我等のリーダーは爆風に乗ってぶらりぶらり空の旅









――二週間経過――



「かーすーみーどこ〜〜」


加弥は半泣き状態で探し回り、洸夜はぶっちゃけ泣いている

「ひっぐ、ぐすっ。かすみひっぐ、く〜ん」

深娜は相変わらずの無表情で探しているが、心なしが焦っている様だった(慎談)


そして行き着く先は

「加弥さん、貴方が霞を殴らなきゃこんなことにならなかったのに」

「何よ!倒れた霞の脇腹蹴ってた癖に!」

「結局二人とも霞君イジメてるじゃない」

「コウちゃんだってさりげなく精霊使ってイジッテたじゃん!」



通算50回目

三人の喧嘩をよそに慎は崖の上から眺めている。

おやおや?遠くから何かが飛んできてるぞ?数にして三

徐々に近付く物体は鳥の様な羽が有ることが分かった。そしてなんとなく鳥人間っぽい人(獣?)だと判明した



鳥人間ABCは慎の前で止まり

「我等は魔王に使えし第四アクロバット部隊責任者アトモラ三兄弟だ!クロケット殿を倒した腕、確かめさせて貰うぞ!」

そんな宣言を無視して未だに討論は続いている


「おい貴様ラ!聞いてるのか!我等は兄弟の持つ石が欲しくないのか!」

するとビタリと討論が止み、ゆっくりと三人の方に体を向ける旅する魔王三強

「やっと我等の話を聞くきに・・・・・・」

「あいつ・・・うるさい」

「邪魔よね。害虫よねゴミよね?」

「神に変わって成敗ね」



惨劇だった


落雷がアトモラ三兄弟を襲い、地面に落下

そして漆黒の鎌は容赦なく羽を切り裂き一瞬の黒炎で消し炭と化した

そしてまがまがとしたオーラを短剣に纏った鬼はアトモラ三兄弟を血祭りにする。

虫の息状態の彼等を最後に出迎えたのは地中より伸びる巨腕だった。精霊グロウダムの腕は容赦の欠片も感じさせる事なく三人を地中の底に引きずり込んでいった




彼等の最後に立っていた場所には黄、緑、茶の魔石が静に輝いていた






「さて、邪魔ものは消えたし続きと行こうじゃない?」

加弥はは笑いながら千角を構える。赤いオーラが吹き出る

「そうね。この方が早いわ」

深娜も断罪の鎌を下段に構え、呪文を唱え始める

「・・・・・・負けないよ」

洸夜は目を閉じ天に祈りを捧げる。後ろには何か異様な歪みが見える




慎はあえて見ない振りをしていた。




一触即発の緊迫に水を射す者がいた







「これこれお嬢さん、どうしたのかね?探し人かな?」

そこに立つのは身長約120cm、サバドとかの紫の三角ずきんで顔を隠し、上は全裸でたるんだ腹、『男気!』と刺繍された赤のふんどし(無駄に短い)をなびかせた年齢不詳の変態がいた

「わしの名は『超絶占いマスター425番目の弟子、ぷぅぅ〜ラぁぇ〜ズっぅぅ〜マぇぁぁ〜4!2!5!』じゃ!」




『・・・・・・』

「わしの名は『超絶占いマス・・・』」

身構える四人

「この世にいてはいけない生物ね」

加弥は拳を強く握る

「存在が猥褻ね」

深娜の手の紅い炎がどんどん大きくなっていく

「悪魔の化身よ」

さっきまで晴れていた空は真っ暗の雷雲が集まってきている

「ゴミそのものだ」

輝く拳は激しい雷に包まれる

「ま、待つのだ、わしの占いで君達の探しものも探し人も一発じゃぞ!」



すぐさま円を組相談を始める四人



10分経過


チームの代理代表に就任した加弥は

「なら野崎霞の居場所を占って」

「よかろう。では早速始めるぞ!」

変態もとい超絶占いマ(以下、超マー)はブツブツと何かを唱え始めた


小刻に揺れる体に合わせてたるんだ腹もプルンっプルンと揺れる


「ちゅいぬがゃぁ〜みゅひりぬむいたかにやら〜」

段々動きが激しくなる。一段とたるんだ腹がブルっンブルっン

「ベントラー!ベントラー!」

さらに激しさを増す超マー

特に下半身!!!

「ぷ、ププププププ!!」

超マーは方膝を付き、両手を天に掲げる

「プぅゅラぇぁズゅマゅゎ〜〜!!!」

無駄に雷が落ち、派手な演出を見せ付ける

「わかっぞ!」

『なら霞は!』

「この世の何処かで生きておる!」



形容しがたい殴打と断末魔の叫び


自主規制

しばらくお待ちください




「じょ、冗談じゃ。霞とやらは今は南の森の中にいるようじゃ」

崖に逆釣りにされた超マーは息絶え、四人ははるか南の森を目指し旅だった



(北の鉱山から南の森まで約二ヶ月かかります)

「ねえ、たった二週間で南の森に行けるの?」

加弥の当たり前の疑問に深娜が答える

「上位魔道師なら二点の位置を数分で移動出来るわ。一点に魔力の結晶を置いとけばそこを目印に高速移動が可能よ。この場合霞は拉致されたって事かしらね」


「敵に拉致されたのに生きてるって事は人質か?」

「慎君、ちょっと不謹慎だよ」

「わりいわりい」


などと愚痴を言ったりどつきあったり喧嘩(主に三強)したりしながら森を目指す




【森森の森森森な森森的な森森森の森】

と書かれた看板の先には森と言うより林なんじゃないかみたいな森が広がっている

辺りを警戒しながら、たまに大声をだして霞を呼びながら奥えと進む


『いない』


一週間程さまよったが全く見付からない

すると一羽の鳩が飛んでくる

足に縛られた手紙と小包に気付いた加弥は早速手紙を読んでみた


「魔王第五写生部リーダーアネムニです。昨日おたふくになってしまって寝てます。魔石をどうぞ」




複雑な気持になったそうだ(後日談)






「はー・・・・・・・・・」

溜め息を吐く深娜は夜の見張りをしている

五つの魔石を手に入れ、残りの期限が半年を切った今現在、霞の消息は未だに掴めていない

「はー・・・・・・・・・」


霞がいないまま約三ヶ月半が過ぎたが、寂しいと感じた自分に驚いた。


周りの皆と違い、付き合いは二年ちょっとしかないが初めて直接友達と言ってくれた大事な友達だ

二年前に考えてたこと

私は霞をどう思ってるか・・・・



「分かんないわよ」



空には紅い満月が輝いていた






さらに月日が流れ・・・・・と言うか二週間過ぎて


手掛りなし


昼食を取りながら頭を抱える四人

「あの変態嘘いったんじゃないの?」

ようやくその辺に頭の回った加弥

「今度見付けたらこの世こら消すしかないわね」

憎悪の炎が燃え上がってる深娜

「ほんとほんといい加減な奴がいるな」

三角ずきんの赤ふんおやじ

「天罰与えるしないわ」

何やら天に祈りだした洸夜

「皆気付け」

一人冷静につっこむ慎



自主規制

しばらくお待ちください




「わしはあいつとは違うわい。人違いじゃ」

ボッコボコにされた超マーは半泣きで弁明

彼いわく、425のフンドシより自分のは長い


納得した四人は改めてボコる



しばらくお待ちください




「『超絶占いマスター』の弟子である我等の占いは外れん。恐らくその二ヶ月で他に移動したんじゃろう」

木に逆釣りに(ふんどしはめくれないよう拘束)された超マー15は改めて占ってくれた



徐々に震えてくるたるんだ腹

さらに激しさを増す超マー、たるんだ腹はブルっンブルっン



以下略




「ここより西に一月行った荒れ地におる。わしの占いでは恐らく会えるじゃろう」




超マーを逆釣りのままで残し四人は急いで旅立った




「ちょっ、ちょっと君ラ、降ろして!ああゎもういない!こうなったら秘伝の動きでブルップルんブルップルん!」







どうなったかは知らない




荒れ地に着いた一行はまずは建物を探し始める



二時間後



妥協




「ないよ〜」

半泣き状態の加弥は地べたに座り腹いせに近くの石を投げ

「か〜す〜み〜く〜〜ん」

洸夜は泣きながら杖を振る

「ぐひゃ〜〜」

慎に全ての腹いせが集中する


深娜は先ほどから何やら遠くを見てる


「あれって家じゃない?」

米粒みたいなサイズの何かの上は三角形。

まるで屋根の様




四人は今までにない速度で走り、家の前に立っている。

見た目はかなりゴージャスで、玄関には可愛らしい人形が並んでいる

荒れ地には全く似合わないメルヘンなハウスだった


いざ乗り込もうとすると突然上から人が降りてきた


白の着物に身を包み、肩まで伸びた髪は後ろで束ね、顔は狐の面で隠されている。


「何様だ」

冷たい声はやや高いアルトといった感じで女性の声だ

「実は人を探しているんですが」

リーダー代理の加弥は一歩前に出て聞いてみた

「ここに誰か人が来ませんでしたか?」

「誰も来ていない」

即答だった

「本当に誰も来てい――」

「来ていない」

即答だった



押し黙る四人

狐面の人はずっとこちらを見ている




「どしたの〜」

気の抜ける様な声の主は二階の窓から顔を出していた


「千鶴ノ様、この者達が人を探していると」

「なら上がってもらって〜。疲れてるみたいだし」

「かしこまりました」

四人は狐面に促され部屋へと入った

やはり中身もゴージャスでメルヘンなハウスだ

「おまたせ〜」

階段を降りてきたのはショートヘアーに細い目。ほっそりとしていて出るとこの出た体、ニコニコした顔で出迎えたのが千鶴ノさんの様だ

「こんなとこに態々仲間を探しに来るなんて大変ね〜」

しゃべり方といい笑い顔といい、猫みたいな人だ。四人全員がそう思った

深娜は事情を説明する

「三ヶ月ほど前にはぐれたんですが」

「特徴は?」

「髪が伸びると女に見えて司書服の格好をした170前後の男です」

「・・・・・・え?」

「ですから髪が伸びると女に見えて司書服姿の170前後の男です」

「・・・・・・マジ?」

『マジ!』

ゆっくりと千鶴ノさんは狐面の方を向く

「仮面取ってくれる?」

「かしこまりました」

パッと面を外すとそこにいたのは

『霞!』

「違います。私の名前はカスミです」

『霞だって』

「違います。表記が」



「いやーね、たまたま空の旅してたら山と山の間の辺りで血だらけで倒れてるの見付けてさ、慌てて連れて帰ってきて治療したわけ。なんとか意識が戻ったんだけど記憶喪失みたいで。だから家に置いといたの」


深娜の質問

「この格好は?」

「いやね、あんまり女っぽく見えたもんでつい」

加弥質問

「この声は」

「ちょっとした遊びご・こ・ろ♪」


慎質問

「ついでに貴方は何者?」

「魔道使いでナイスなオネーサン!」


洸夜質問

「霞君返して」

「じぇ〜〜〜〜〜ったい嫌!」





討論開始




三日経過

続行中




一週間経過

続行中



さらに一週間

答えでず




結果


「実力で奪いんしゃーい。行くのよカスミ!」

「かしこまりました」

「手加減しないからね」

指を鳴らす加弥

「手加減して勝てるんですか?」

「舐めんな霞、俺らはその道極めてんだ。半端には負けんぞ」

慎も戦闘モードである

すると千鶴ノさんから一言

「ここ二ヶ月私が稽古してたから。これでも私『砂地の魔女』って言われてるのよ〜」


深娜は驚く

砂地の魔女とは魔術を学ぶ上で教科書に必ず載る最強の魔女なのだ

「因みにカスミったら殆んど初級しか使えないのに一つだけ私も使えない魔法覚えちゃったから。私もビックリ〜。テヘッ♪」



「それでは参りますよ」

身構えるカスミ、三人も構える(洸夜は救護班に回ったので不参加)

「ちょ〜っとまった〜!」

千鶴ノさんが急に待ったをかける

「カスミ、あのキメポーズよ!」

狐面の下から物凄く嫌だというオーラが出ている

「千鶴ノ様、流石に人前は・・・」

「だまらっしゃ〜い。乙女の貴方がこんの試練乗り越えれなくてど〜すんのよ」

「千鶴ノ様、私は男です。服まで剥ぎとって調べたじゃないですか」

三強は今年一番の驚きをあげる

「いや〜。霞が見ず知らずの女に〜」

「いくら記憶喪失だからってあんまりだよ霞君!」

「・・・・・・消えなさい」

まがまがとしたオーラを噴出している三人を横目に更に

「勝ったら膝枕してね〜」

「千鶴ノ様、普通は逆です。後訂正してください。服を剥ぎ取ったのは上だけです」

三強既に聞く耳持たず

「さあカスミ!ビシッと決めなさい!」

「どうしてもですか?」

「もっちろ〜ん」



深い溜め息をついたカスミは観念し、足を少し開き仮面を外す

女っぽく見えてしまうその姿と中々可愛らしい声で暴挙に走る




「魔女っ子さんの一の弟子、カスミン参上!悪い輩はカスミンが許しません!何処からでもかかってらっしゃい」




三強+男は精神破壊攻撃に心を折られそうになるが必死に耐えた


それは頑張って告白したら『生理的に嫌!』と言われた男子なみの辛さだろう


立ち直るのに一時間程かかった彼等は改めて試合を始める




最初に仕掛けたのは慎だ。低い姿勢からカスミの溝へ拳を突き出す。しかし霞は拳に手を添え軽く受けながし逆に力を逆手に取り投げ飛ばす

宙を舞う慎は、なんとか体勢を立て直し着地しようとしたが慎の上をカスミが飛び、首に足を絡め左右の手を掴み動きを封じる。

そのままの体勢で落下した慎は喉を強く打ち、その上エビ反り状態で落下したので余りの苦しさに呼吸すら満足に出来ない状態だ

「一人目」

冷たく言い放つカスミンは加弥へと仕掛けた

懐から放つナイフを加弥は千角でうち払う。その隙に接近したカスミへ加弥は下段から上段へと回し蹴りを放つ。しかしカスミは手前で止まり、リズムを崩すような不規則な攻撃を仕掛ける。

決して隙を見せずユラユラと揺れながら加弥の連撃を避け、小さなミスを見逃さず徐々にダメージを蓄積させていく

「か、霞の馬鹿〜」

地を蹴り一瞬で間合いを詰め渾身の一撃が霞の顎に触れた

勝利を確信した加弥に霞は冷たく言い放つ

「まだ早いようだ」

霞はその場で回り加弥の一撃を避ける。加弥は拳を突き出す力を停める事が出来ずに自然と体は前へと向かう

その横で回避した霞は勢いを殺すことなく手刀を加弥の首筋に当てた


加弥は意識を失いその場に崩れ落ちた


「二人目」



仮面の下の表情を知る術のない今、深娜は恐怖しか感じなかった


「貴方は魔術者か。接近戦で行くのは卑怯だな」



そう言って距離を取り手の平を向け身構える

「彼方達の討論を聞いて分かったことですが、記憶のあった頃の私はチームの中では一番弱かったみたいですが・・・」

「・・・・・・・・・」

「負けていいんですか?」

その言葉に深娜は己を取り戻す

「ふんっ、初級呪文しか使えないのに私に勝てるの?」

「なら手合わせ願いますか?」

「死なない程度には抑えてあげるわ」

二人は同時に炎弾を放つ

相殺した炎は煙を放ち視界を奪う

しかし深娜にとっては相手の魔力を感じることが出来るので何の問題もない

煙りなかに向かって

「Mアイス!」

氷の刃を無数に叩き込む。しかし直撃出来なかった事を知ると次なる呪文を唱えた

「ウィンド!」


見えない衝撃波は一瞬で着弾し、一帯を吹き飛ばした

煙が薄れる、黙視が可能になる中、カスミは平然と立っていた

「凄い威力と早さですね。避けそびれました」

右肩に衝撃波を受け着物が破れている

「本気出して良いですか?」

「出さなきゃ死ぬわよ?」

「では!ウォータ!」

放たれた水は深娜へと向かう

「その程度で勝つ気?」

「そんな気は無いさ。ウィンド!」

「複合呪文!考えたわね」

まるでシャボン玉の様になり深娜へと向かう

「でも只の水芸ね」

深娜はウィンドを放ち次々とシャボン玉を割っていく

しかしカスミの攻撃はまだ続いている

「君の周りは大分水気が多い様だね?サンダー!」

電導率の高くなった周りには予想以上の威力の落雷が落ちる

とっさの判断でマジックバリアを張ったが防ぎきれずダメージを負った

その隙を逃さずカスミは空高く液体の入った瓶を投げナイフで瓶を割り、そこ目がけファイアを放つ

「あれはガソリンだ。そうだな・・・流炎って名前はどうかな?」

降り注ぐ炎を必死に避ける深娜へ追い討ちをかけるように次々とアイスを放ち続ける


「息が上がってきてますね?」

「だ、黙りなさい!」

「なら黙ります」

そう言い小さな袋を深娜の足元に投げつける

破れた袋から白い粉が宙を舞い辺り一帯の視界を再度奪う


「私に目隠しは意味ないわよ」

返答は無く、静寂だけが続く。

「深娜ちゃーん。お姉〜さんからの忠告よ〜」

家の方から千鶴ノさんの声が聞こえる

「粉塵爆発って知ってる?」



気付いた時には遅かった

激しい爆発が広がり轟音が響く



「三人目か」


冷たい声は煙の中、静に響いた








「やっと目を醒ましましたか」

ベットに横になっている深娜にカスミは話しかける

額の濡れタオルを交換し椅子に腰掛ける

「服は洗濯しときました。後着替は御仲間の方にお願いしましたので心配しないで下さい」

「・・・・・・」

押し黙る深娜をカスミは黙って見ている

「・・・・・・負けたわね」

「そうですね」

短い会話

久しぶりの会話だ

「皆は無事でしょうね」

「彼方が一番重症です」

「やったのは誰よ」

「私は最初に本気で行くと確認しましたから」

澄ました顔で狐面は話す

「つうかお前ら過信しすぎだ。いくら強いからって俺に負けるようじゃ不味いんじゃないか?」

「か、霞?」

突然の変わりように困惑する深娜

「慎は威力自体問題ないが避けられた時の隙が大き過ぎるし、加弥は連撃に集中し過ぎで初速の勢いを巧く使えてない。お前は魔法に頼りすぎでスタミナの無さ、後化学的知識が足りない。単体で使いすぎだ」

声もいつもの霞に戻っている

「洸夜は多分打たれ弱いのと魔力の安定性だな。全く少しは克服ってモノを考えろ」

溜め息をついて立ち上がるカスミ

「ほれ、居間に行くぞ。みんな待ってる」

ドアに向かうカスミ呼び止めるを

「霞、もしかして記憶が・・・・・・」

振り向くカスミの顔には狐面がしてあり、可愛らしい声で

「たまにはサプライズが必要ですから」

そう言い残し部屋を出ていった





「カスミが勝った〜。膝枕して〜」

「千鶴ノ様、少しは自重してください」


「嫌だも〜ん。とりゃ〜」

カスミの膝の上で気持ち良さそうにゴロゴロする千鶴ノさん、それを非常に悔しそうに見る二人と羨ましそうに見るフェチ


「これでカスミは私のモノよ!」

「千鶴ノ様、勝手な私物化は止めてください」

「嫌っ、カスミは私のモノよ!」

カスミは千鶴ノさんのおでこをベシッと叩く

「か、カスミがぶった〜。親父にもぶたれたことな・・・・・・あったわね確か」

溜め息をついて面は外すカスミ

「千鶴ノさん、ちょっといいですか?」

「あれ?カスミの声が戻ってる?ま〜いいや〜」


千鶴ノさんの頭を持ち上げソファーの上に乗せる。膝枕終了で千鶴ノさんはなんか泣き出しそうな顔になってるが今は無視


痛い眼差しを送る四人の方を向いて怒鳴った


「この馬鹿たれ!!いくら相手が俺だからってあそこまで手を抜くやつがあるか!マジの戦闘なら確実に全滅だぞ!お前ら少しは自分の欠点治す努力をしろ!ただですら武闘派集団なんだから頭を少しは使え!」

その場の全員は呆気にとられてる

「慎は着物の裾辺りばっか見てるし加弥は殴る時目を閉じてる。まともに戦ったのは深娜だけだぞ!少しは見習え!それから」

霞は笑いながら

「ただいま皆」




頭の整理がつくのに30秒


「おかえり霞」

最初に言ったのは深娜だった


『霞が戻った〜』

加弥と洸夜は霞に飛び付き慎は笑いながら肩を叩いた。千鶴ノさんも一歩遅れて膝を死守するべく霞に跳びかかる

「霞が戻ってる!きっと私達の友情パワ〜よ!」

「そうだね加弥ちゃん、私達の友情パワ〜だね」

「いや、違うし。一ヶ月程前から治っていた」

『へ?』


霞曰く

千鶴ノさんに稽古をつけてもらっていて空高く投げ飛ばされて頭から落ちたときに覚醒したそうだ。しかしこのまま行けば皆と全力で戦えると思い今まで黙ってたそうだ

その結果

「お前らが見事に手抜きをしたせいで怒りの矛先が深娜に行っちまったんだよ。すまんなー深娜。お詫びに何かあったら聞いてやるぞ」

霞の提案に数十秒考え、霞に耳打ちをする

「そんなんで良いのか?まあ俺は構わんが」

「なんて言ったの深娜ちゃん!白状しなさい!」

「深娜さん!抜け駆けなんて卑怯だよ!」

「霞!俺はお前を信じてたのに!」

「かすみ〜。お腹すいた〜。ごはん〜」


霞は改めて皆ワガママだと確信した






その夜特製カレーを堪能した皆は直ぐ様熟睡した。慎はソファーの下でコの字で寝て、加弥と洸夜と千鶴ノは見事に霞に引っ付いて寝ている

「・・・・・・暑苦しい・・・」

引っ付いた三人を引き矧がしソファーに置いていく


外に出た霞を迎えたのは三日月の光と深娜だ


「散歩とはまたどうしたんもんですか?」

「聞きたい事があるのよ。砂地の魔女が言ってた自分も使えない魔法の事」

只今黒のローブは洗濯中なので千鶴ノさんの白のワンピースを着て小さな岩に腰掛けている。深娜は手に魔力を込め

「見せてくれないかしら?」

霞は乾いた笑みをし

「脅しは止めてくれ。なんか目に見える魔力の塊だぞ」

「なら見せて」

テコでも譲る気は無いようだ

溜め息をつき何もない方を向く

「我は万物の父を知る者なり。我は戦の神、知恵の神を知る者なり。父なる姿は怒りなり。父なる姿は荒々しさなり。父なる姿は狂暴さなり」


霞は手を突きだし叫ぶ

「父なる名はオーディン!貫きし魔槍、小人鍛えし槍の名はグングニル!」


光の魔槍は大地を削り彼方えと消え去る


大地に爪痕を残し



「今のは・・・・・・」

「千鶴ノさんも知らない魔法だ。俺の知る本の内容を力にする魔法」


深娜は震えていた。今の威力ははっきり言って桁が違う。もしあの時使われていたら


「安心しろ。俺が敵と認識しない限り攻撃できないからな」

「でも卑怯技よね」

「まーな」

霞は深娜の隣に腰掛ける

「会えなくて寂しかったか?」

「馬鹿じゃない?イライラしてたわよ」

「それは残念。折角何かしてあげようかと思っていたが。なら加弥っ洸夜だけでいいか」

霞は側頭部を殴られる

「深娜さん・・・・・・今殺そうとしたよね?」

「別に。それはそうと私は不公平が嫌いなの。」

「つまり何か聞けと?」

頷く深娜は空を見て考える

「夜更かしに付き合って」

「夜更かしね〜、了解了解」

二人は黙って空を見ていた




空には相変わらず三日月が光っている




「改めてただいま、我が友」

「改めておかえり。最初の友」



静かな時間が過ぎていった










「か〜す〜み〜!!」

加弥の怒号で目を覚ます

「どうした加弥、朝っぱらからうるさいな」

「黙らっしゃい!何膝枕なんて羨ましいことしてんのよ!」

霞の膝の上では深娜が静かな寝息をたてている

しかし明日は加弥ねと言ったらあっさり許してくれた。

分からんものだ







「え〜〜行くの〜〜〜〜〜〜!!!!」

「後数ヶ月で期限なんですから仕方ないですよ」

千鶴ノさんは霞を放しません

「今日は(あきら)さんと会う約束でしょ。破ったら晶さん自殺しますよ」

「まっさか〜晶ならだいじょう・・・・・・ぶじゃないや。前好きか嫌いか聞かれて面白半分で嫌いって言ったら首吊ってたからな〜」

「だから諦めて下さい。一段落したら来ますから」

「ほんと!」

「女性に嘘は吐きません」

「やった〜。なら次会う約束!」


千鶴ノの唇が霞の頬に触れる


「へへへぇ〜〜じゃ〜ね〜」

そう言い残し千鶴ノは家に戻った


頬をかく霞は振り向き

「じゃ、行こうか」

場の空気を読めない彼はとても不幸なんでしょうね

「霞・・・・・・今のは・・・何?」

「酷いよ・・・・・・・・・霞君」

「・・・・・・・・・魔女め・・・・・・消すしかないわね」


三人は一致団結して先ずは手始めに霞を包囲する


霞はようやく己の身が危ないと知り叫ぶ

「彼、罪人にして出来損ないの羽を持ち自らの足を失いし愚者、その名はイカロス!」

一斉に跳びかかる三強はその場で身動き出来なくなり宙に浮いている

「下ろせ霞〜〜せめてあの女だけでも!」

「下ろさないと天罰ですよ〜」

「二人とも落ち着け〜。落ち着いたら下ろすから」

途端静かになる二人は直ぐ様下りれた。

しかし深娜は一向に殺気を放つのを止めていない

「お〜い深娜〜」

しかし深娜は一点をじっと見ている

皆も釣られて見ると



ズビシっ!

見事な作戦勝ちで深娜は霞の頭を力一杯に殴った。その場に倒れる霞を加弥と洸夜が包囲、更に地上に降りた深娜が加わり


たこ殴りである







「・・・・・・ここ何処?」



ふりだしに戻るとはこのことだ



さて、只今の位置は魔王宅の前

暗闇にそびえるボロボロの城だと思っていたが小高い丘にある小さくも綺麗な城だ


「んで、後二つの魔石は?」

「安心しろ慎。ここにある」

門の前には小さな子供、まるでカボチャの頭をしたハロウィの様だ

「お前から魔石の匂いする。五個あるな。ならこれで六個だ」

ハロウィン少年はオレンジ色の魔石を渡す


「いいのか貰って?」

「六個ないと門開かない」

ハロウィン少年はケラケラ笑いながら門を叩く

「入れ勇者。隊長待ってる」


ゆっくり開く門をくぐり足を踏み入れる魔王の城


「スッゲー綺麗ー」

隅々まで掃除が行き渡り、チリ一つ見当たらない


「キャッホ〜生メイド〜!!」

跳びかかる慎を袋叩きにして柱に縛りつけておく。メイドさん一行に深く御詫びをしてから聞いてみた

「あのー、隊長さんはどちらに?」

メイド一同は後ろの柱を指差す


「読んだかね?」


そこから現れたのは長身にオールバック、スラリとした体つきにかなりの美形。そしてどことなく傲慢


「私がこの城の隊長を勤めている月野屋政樹(つきのやまさき)だ。様をつけたら賞品としてクッキー二枚だ」

「貴様、なに馬鹿を言っている?」

奥の階段から降りてきたのは長身に黒のショートヘアー、意思の強い表情でかなら美人だ

「紹介しよう。副隊長三木原麗奈(みきはられな)君びぐるおはっ」

脇腹を蹴られて壁に突っ込む政樹、痙攣している


「貴様が相手か?」

懐から抜いた一本の槍、三矛の槍は銀色に輝き、一部の隙も見当たらない構えだ


「待ちたまえ三木原君、勝負の内容は私に決定権があるのだ。矛をしまいたまえ」

いつのまにか復活した政樹は笑いながらクッキーを二枚三木原の口に入れる

「おいしいかね?」



再度政樹は吹き飛んだ




「それではこれより料理対決を始める。お題はデザート!始め!」

政樹の合図と友に三木原、霞は同時に動いた。それぞれ必要な材料を手に取り調理にかかる

三木原の包丁捌きはかなりの腕前でみるみる果物は鮮やかに盛られていく


「中々やるな」

「勝ちは譲れないわよ」

お互い死力を尽す戦いだった




三十分経過




「これより試食を始める。私は公平に判断する。三木原君は実は誰もいないとデレデレになるとか良くお菓子を作ってくれるとか実は結構乙女チックとか抜きで判断するとも」




しばらくお待ち下さい




「では・・・始めよう」


ボロボロになった政樹は始めに三木原の作品、『イチゴと桜桃のタルト』を食べた

薄く焼かれた生地の上にふんだんに盛られたイチゴと桜桃(さくらんぼとも言う)、鮮度を示す様に艶のある果実、派手に飾らずカスタードクリームのみ。

果実の甘味だけでここまで仕上げた最上の一品である


「また腕を上げたじゃないか。余りの甘さに私は倒れたいがいいかい?」

「まだ試合は終っていない。こいつのがまだだ」

霞は政樹の前に料理をだす

「これはなんだい?」

柚餅子(ゆべし)だ」

柚餅子とはユズの頭部を水平な切り、中身を取り出した中にもち米や刻んだクルミ、カヤの実をみそ、醤油で調味して詰め、蒸してから干し、薄切りにして酒のさかなにする食べ物だ(干しは深娜の呪文に任せる)


一口食べた政樹は黙る




「酒を持ってこい!」

高らかに叫ぶ政樹、メイドは急いでお酒をつぐ

「くそ、手が止まらん」


四つほどあった柚餅子はなくなり、政樹はまだ治まっていない

「もうないのかね?早く作ってくれないか?」

「なら聞くが勝者は?」


「決まっている。君の柚餅子は反則級の甘さだ。よって反則負け!勝者三木原!」




しばらくお待ち下さい




「私の敗けだ。これは甘い。後で教えてくれ。それでは」


血祭りになった政樹を厨房に残し、我々は魔王の間へ向かった




大きな扉の前で息を飲む五人、本物の魔王が向こうにいる




意を決し、扉を叩く


「はーい、どちら様ですか?」


?、魔王様?


「あの〜、魔石を持って来たんですが・・・」

「はいはい今行きます」

開け放たれた扉の前に立っているのは白髪頭で長い白髭のおじいさん

「いやー有難う、わざわざ付き合ってもらって、ささ、上がって上がって」

魔王(老人)に促され魔王の間に入る五人


広々とした部屋を埋め尽す本の山

霞の目はせわしなく動き、珍しい本を見付ける度に読みたいというオーラを発している

「少年、読みたいなら読んでも構わんぞ」

「本当ですか!」

直ぐ様本の山に向かい読みだす本の虫、残された四人は魔王と話している

「いやー一応わしも魔王なんだがこの姿で魔王としての威厳というかその辺りが薄くなってな。上の連中にも睨まれておって形だけの戦をしなくてはならなくてな。こんなことをしとったんじゃ」

老人は笑いながら紅茶をすする

「まさかこんな若者が来るとわな。世の中中々楽しめるの〜」

愉快に笑う老人(魔王)を見て四人は思った

世界はいい加減だと



その夜は魔王宅に泊めてもらい次の日の昼辺り城まで送ってもらった。魔王もまた来るよう誘われ了承する五人


国王に無事を告げ早速願い事を叶えてもらった










とある小高い丘の上に一軒家がある。シンプルな作りで何処かの別荘の様にも見える



そんな家の中では


「私が二階の部屋!」

「加弥ちゃんズルイよ。私が最初に言ったじゃん!」

「公平にジャンケンで勝ったんだから私よ」

「嘘だ深娜ちゃん、魔法でズルした癖に!」

「まあまあ落ち着いて。そんなに二階が良いなら俺一階に行くから」

『霞は二階!』


そんな猛攻が繰り広げるなか慎は外にいた



首は鎖で繋がれ小さな犬小屋みたいなのがある


看板には『獣』と書かれている




「耐えようじゃないかこの苦行!きたれ獣の力!我に力を!!!」







彼等の旅はまだ続きそうだ

この作品は暇神さまのネタにより作成されました、有難うございます



はい、すいません。更新がかなり遅れましたウドの大木です。その分ページも最長記録達成です。

いや〜頑張りました。寝不足です。でも書けてうれしいです。

ではまたいつか。




ネタの応募です。小さなネタでもいいのでドンドン下さい。待ってます!


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