【近未来ショート】平日の徘徊者たち
それは、奇妙な光景であった。
老人会の帰りに、休憩で立ち寄った公園でのこと。
そこに、同じニット帽と眼鏡を装着した、奇妙な集団がいた。
色の違いこそあれど、細部まで同じ規格のニット帽と眼鏡に、私には見えた。
各々がバラバラに、公園内を黙々と徘徊していた。
平日の、まだ昼前の話である。
時折、立ち止まる者もいたが、皆が「心、ここに在らず」といった表情で、それは気味の悪いものであった。
最初に、私は『新たなカルト宗教』の登場を想起し、顔を曇らせた。
しかし、偶然、集団の中のひとりと会話をする機会を得て、今度はまた別の気まずさを覚えることとなった。
「ああ、このニット帽ですか。これは新しいBCIです」
ベンチで隣に腰掛けた、その青年は、被っていたニット帽を外し、私に差し出した。
「ほら、この内側に無数のセンサーチップが見えるでしょ。これで脳波を読み取って、手作業なしに、思考を直接、端末に入力できるという仕組みで ―― 」
セールスマンのような軽い口調で、嬉々として、デバイスの説明を続ける青年。
BCIというのは『ブレイン・コンピューター・インターフェイス』の略称であるらしく、仕組みは、先のとおり。また、ここでいう端末とは、彼らがかけている眼鏡=OSを内蔵したスマートグラスであることも、彼から教わった。
「だが、君たちはいったい何のために、わざわざ公園に集まり、皆でうろうろとしてるんだい? オフィスで出来る作業ではないのかい?」
「いやぁ、もちろんオフィスでも構わないのですが、やはり身体を動かしながらの方が、良いアイデアも出やすくて ―― あっ、一応言っておきますけど、あそこにいる彼らは全員、私の同僚というわけではないですからね。今この公園にいる、うちの会社の人間は……あっ、あそこにいる赤のBCIを装着した無精ひげの男だけですからね」
―― 溜息のこぼれる話であった。
私は、コンビニで入れたコーヒーを少し口に含み、無意識に胸のポケットをまさぐっていた。とっくの昔にやめたはずの、紙のたばこが、無性に吸いたくなったためであった。




