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プール
夏休みの夜、俺は忍び込んだプールに立っていた。
水面だけが、ぼんやり光を映して揺れている。誰もいないはずなのに、奥で、水の揺れとは違う影が立ってる気がした。
女だった。肩まで濡れた髪、半分崩れた顔。片目だけが、俺を見ていた。
息が止まった。友達の声も、夜の虫の声も、届かない。振り返っても誰もいない。
影はじわじわ近づいてくる。足元の水が冷たく沈む。肩に触れる気配。振り返れないまま、水に引きずり込まれる感覚が広がった。
次の瞬間、女が肩に顔を押しつけてきた。髪は濡れ、顔は見えない。ただ冷気が首筋に触れる。声も出せず、身体は水に吸い込まれるように硬直する。
水面に映る自分だけが動く。浮き輪も足も、友達もいない。肩に貼りついた女だけが重く、俺を押さえつける。
翌朝、プールは静まり返っていた。泡も足跡もなし。ただ、水面に昨日と同じ光が揺れていた。




