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写真の女
最初に気づいたのは、写真だった。
学食の前で友達と撮った一枚。笑っている私の肩のすぐ後ろに、知らない女が立っていた。
髪は途中で縮れ、顔の半分がただれている。片方の目だけが、妙にはっきりこっちを見ていた。
消しても、次の写真にもいた。
講義室の窓。駅のホームのガラス。コンビニの冷蔵ケース。いつも私の後ろにいた。
振り返っても、誰もいない。
でも、ときどき変なにおいがした。
何かが焦げたみたいな、古い煙みたいなにおい。
ある夜、洗面台の鏡を見たとき、いた。
すぐ後ろに。
女は私のうなじに顔を寄せていた。
悲鳴を上げて振り向く。誰もいない。
その日から、背中に誰かが張りついているみたいだった。
エレベーターでも、布団の中でも、ずっと。
夜、部屋に帰ると、ドアノブが熱かった。
鍵を開けた瞬間、部屋の奥で何かが弾ける音がした。
次の瞬間、火が走った。
カーテンが燃え、天井まで一気に炎が上がる。
熱くて、逃げようとして、玄関の脇の姿見が目に入った。
炎の中、鏡の中の私の背中に、あの女がぴったり重なっていた。
髪が焼け、顔が崩れ、片方の目だけが、はっきりこちらを見ていた。
写真の女は、私だった。




