表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刑法三十九条~そして行く先へ  作者: i/o
加害者、被害者達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

サイドd

 俺は家に向かうために街角を歩いていた怪我人d(仮名)、高校二年生だ。友達が告白されそうだから行ってくるわと言って校舎裏に行くのを見届けた普通の高校生……ではないと思う。普通さ、他人にそんなこと言うかよと嫉妬しながら帰り道を眺めた。自分で言うのもあれだが、成績は良い方で、妬みなのだがアイツがモテるというのがとてつもなく悔しい。リア充爆死セヨ。この気持ちが少なからずわかるものである。釈然としない気持ちをぶつけるために帰り道にあった書店である程度の参考書を買った後にぶらぶらと帰っていくつもりだった。目の前の不思議な光景に思わず足を止めた。


「なんだ、なんだ?映画の撮影か?」


 観衆は見つめるだけ。刃物を持った変質者が車から降ろされそれを持ったまま震えた様子でまるで助けを求めるかのような混沌とした光景に目を疑った。思えばこの時すぐにでも書店へ戻り逃げるべきだった。男が走ってくる。二十代くらいの若い男が俺を目指してここへ来た。恐ろしく、何もかもが早く見える。咄嗟に足をあげながら、


「逃げろ!」


 人生で初めて路上で叫んだ。その直後太腿に人生最大の激痛が走る。こんな恐怖を俺は人生で初めて知った。いつもニュースで見る程度の通り魔事件。それが今、僕の身に襲い掛かってきたのだから。


「大丈夫ですか!」


 気付いた時には病床にふせていた。看護師の説明によれば失血によるショックで丸一日寝込んでいたそうだ。起き上がろうとすると太腿に再度激痛が走り悶絶した。そして、恐怖がよみがえる。今にも殺されるかと思ったその恐怖が身を蝕んでいくほどに。


 結局僕の怪我は当分の間、治らないそうなのでまずは安静にして歩けるようにしてからが始まりのようだ。医者に突然頭の中にあの風景がよみがえって体が動かなくなることも説明すると心療内科への受診も強く勧められた。診察に行った結果、ptsd(心的外傷後ストレス障害)との診断が下る。それほどまでに大きな心の傷を負ったのだ。


 警察の事情聴取は優しかった、僕の心が傷ついていることを配慮しての対応なのだろう。警察には若い男が車から降りてナイフを持ちながら、震える様子で突然僕を差しに来たことを説明した。思ったより体に堪え、取り調べ中に吐いてしまった。しかし、その若い男を絶対に許したくなかった。この体では学校生活は不可能と言ってもいいだろう。登校なんてもってのほか。通信制高校への転校も余儀なくされることになるだろう。中学三年生の時に死ぬほど努力して勝ち取った高校を辞めざるを得ないのだ。若い男に実刑判決を下してもらうためにも俺のことはいいから彼が刑務所へ行けるようにしてほしいと懇願した。そうでなければ僕はこの世界を、普通に生きることなんて絶対にできないのだから。


 加害者が外の世界に出て罪も償わずのうのうと生きるそのざまをもう二度と見たくない。


 そして長い長い判決の日を待ち続ける日々が始まった。地獄と同じ様なすぐにでも終わってほしい感覚である。


 俺は常に思う。刑務所に行かずしてどんな償い方があるのかと。


 俺の人生は、お前と違って、絶対に元には戻らない。戻ったとしても、俺が抱える心の傷は永遠に残り続けるのだから。


 裁判所の証言台に俺は怒りをぶつけた。


これは僕なりの考えです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ