サイドj
私は、今日C君に告白する。気になったのは二か月前。最初に彼にアプローチされたのはなんか変な感じで気色悪く感じた。優等生なのに残念系な男子。それが第一印象。
「どこが好きなの?」
直球で聞いてみた。昔から良く告白されていたが大概この質問をすると、取り繕うように性格だとか、努力だとか、嘘のようなことしか言ってこなかった。
「一目惚れです。特に顔」
前言撤回、ド直球も嫌だと思った。
「あと、こんな僕のアプローチに付き合って、溜息つきながらも結局はなんだかんだ付き合ってくれる優しいところが一番大好きです」
流れで告白された。勢いで言い切った感じではなくほぼ単純に感想を述べただけのようにしか、私には感じられなかった。こういうところが勘違いを生む原因になるんだよ、お前さんは。そう言いたくなる。でもそういうところは憎めないように感じた。思えばこの時点で少し惚れていて、チョロい人間だったなと思う。
何故今回私の方から告白するかというと、一種の確認である。受け取られたら一回付き合って彼の性格をしっかりと確認したいのだ。昔、だらだら付き合って本当に後悔した覚えがあるからこの確認は私にとって必要不可欠のこと。そう思いながらC君を校舎裏に呼び出し告白したわけである。
「やったあああああああああああああ‼‼」
「うるさいな、君は」
やっぱり別れようかな……。まあ、アプローチした覚悟は認めるけど。私だって周りに迷惑をかけないように、そして冷やかされないようにすることなんてできないから、それは才能なんだよなと思う。
そして、彼と帰る途中、下校中に起きる大惨事を私は見ることになった。
そろそろ駅に着くだろうなというところで突然叫び声が聞こえる。
「逃げろ!」
聞き覚えのある声が街に響き渡る。
直ぐに見えたのは、人を刺したであろう長い刃物を振り回しながら無言で突っ込んでくる青年だった。速すぎる。ビル二つ分くらい離れた場所にいた青年は気づいたときには私の目の前にいる。足が竦んで動かない。避け切れない。
「伏せろ‼‼‼」
Cが叫びながら私を庇う。
Cが横たわるのを見て一瞬、時が凄まじく遅く流れるように感じた。何で?どうして避けなかったの?その言葉がずっと頭をよぎる。しかし、「逃げろ!」と叫んだ人の声が突然頭に浮かぶ。
その次の瞬間、私は必死に助けを呼んだ。携帯を持っていない私は必死に叫んで叫んで、
「助けて!誰か、誰でもいいから救急車を呼んで!」
犯人は押さえつけられて暴れているがそんなこと、気にも留めず必死に心肺蘇生を行う。誰かが持ってきてくれたAEDを使い何度も、何度も彼の胸を押し続けた。多くの人がスマホで写真や動画を取っている中で私は、
「全員、救急車の道を開けろや!」
人生で一番大きな声で恫喝し道を開かせた。数分後に救急隊が到着し開かれた道の中、彼は救急車で大学病院へと搬送されることになった。私も同行し病院に到着した後病院の関係者専用の待合室で待機していた。五時間経過すると一旦縫合手術は終了し、あとはCの自然回復力に任せるほかなくなった。
家に帰っても眠ることはできず、ずっとトイレで何も食べていないはずなのに吐きたくなるような感覚に襲われた。結局夜は眠ることができず翌日の高校は休むことにした。今回の事件は全国ニュースになった。そのせいで好きだったテレビも全く見ることができなくなってしまった。
警察の事情聴取で一通りの様子を話した後、私は大学病院へ行った。足が竦む。もしかしたら死んでいるかもしれない。私のせいで死んでしまうのかもしれない。そんな恐怖を尻目に病室へ向かった。
「マジで生きてたわ。奇跡だってさ」
そんな馬鹿らしい返事と共に、私は思わずベッドに抱き着き号泣した。彼が私から告白されたときよりも泣いた。声は出ていないのかもしれない。でも、涙の量だけは、絶対に彼に負けないほど出ていた。
「ごめんね、ごめんね……」
声にならない声を出し続けた。
「泣かなくてもいいよ。謝らなくていいよ。君が悪いことをしたわけではないのだから」
そんな掛け声は頭に入ってきても、それは止まることがなかった。
それからというものの、学校からはカウンセリングが実施されたり、全校生徒への緊急説明会が開かれていたりした。彼が生還したと同時にニュースも見ることができるようになった。
「関係者によれば容疑者の内、実行役については当時統合失調症を患っており、警察の発表では容疑者の供述に影響が出る恐れがあるとし、実名は公表されていません。そしてもう一人の指示役Bは実行役を精神病院から誘拐及び監禁し街へ連れ出したとの供述から殺人未遂に加え住居侵入、監禁の疑いも含め捜査を続けています」
このニュースで初めて犯人が二人いることを知った。私にとってはどちらも彼を傷つけた犯人以外何物でもない。鑑定留置が終われば来年ごろには裁判が始まるそうだ。私も検察からの要望で証言台に立つことが決まった。
もう二度とこんなことを考えさせはしない。それを示すためにも私は検察庁からの手紙の封を切った。
次回、最終話にします




