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上空、20メートルほど。
そう言うとあまり高くないように思える。
しかし、いざ飛んでみるとなんて恐ろしい。
落ちたら死ぬのだということは、下を見れば考えなくてもわかった。
電波塔サイズのモンスターは、いつのまにか自分の目線の下にあった。
(これ、どうすんの)
『このまま飛んで隙を狙うしかないだろうな』
モンスターは、街に向かって這うように動く。
もうすでに、何個か建物は壊したようだ。
バキッ
モンスターが進むたび、木が折れる音や何かがぱつぱつする音が聞こえた。
ぐんっ
!!!
モンスターは動きを止めた。
(あれまずい、もしかしてこっち見てる)
『敵判定くらったな、避けろ』
電波塔から、ワイヤーのようなものが伸びる。
五、六本こっちに向かってきた。
「ぎゃっ」
咄嗟にプロペラを向ける。
高速回転する刃がワイヤーの二、三本を切った。
『危なかったな。
…これ拾っとこう』
切れたワイヤーの端をビニガサプターは拾うと、吸収した。
何に使うつもりなのかは考えなかった。
電波塔のモンスターは、ワイヤー攻撃をやめなかった。
たまに足や腕に絡まる。
その度に、切り落として吸収した。
頼りなさげだった、ビニガサプターのプロペラも、吸収した金属のおかげか、ヘリコプターらしくなっていた。
ビニガサが重たくなるのは好ましくないと思っていたものの、戦闘中は便利な性質だ。
…ちょっとやって見たいことがある。
そう思った私は、かなり高いところまで浮かんだ。
もう一時間ほど浮かんでいる。
高所の恐怖は克服した。
プロペラの回転を止めて、飛行機を模した翼を作った。
見えない滑り台を滑るように落下する。
滑空だ。
黒いモヤモヤを凝視しながら、私はモンスターの周りを3周した。
見つけた。
今まで見た輪っかとは違いかなり大きかった。
それからは、あっさり終わった。
再び上空まで浮かんだのち、核のあるところへ飛び込むのだ。
翼の金属全部を使って、電波塔を貫く。
核は跡形もなく破壊されたようだ。
終わった。
疲労の中で、落下しながら寝そうになった。
『お疲れさん。
でもまだ寝るな、死ぬぞ』
ビニガサの声がないと本当に地面に叩きつけられるところだった。
傘を開き空気抵抗を大きくしたのち、ふわりと着地した。
このビニガサの丈夫さは異常。
「あー、またお風呂入んないといけないじゃん。
てか、今何時」
『12時丁度』
「ぎえ」
結局、帰ると布団に飛び込んだ。
もう、眠くて仕方がない。
『おやすみ。
君が将来立派な戦士になる事を期待しているよ』
傘は意味深な事を言ったが、疑問に思う体力は残っていなかった。
〈昨夜10時過ぎ、***市の郊外に災害級モンスター警報が発令されました。
モンスター対策委員は駆除員を派遣しましたが、到着前に突然姿を消したとのことです〉
早速テレビは、昨日のことを放送している。
〈後に残されたのは、不自然にまとめられた金属の塊だけだったということです。
モンスターについてはまだ不明な点が多いため、該当地域の方は今後も警戒してください〉
ふーん、実はビニガサが吸収した金属は全部向こうに置いてきた。
当たり前だが、モンスターが発生した場所で変なテツノカタマリが現れただなんて混乱するに決まっている。
なんか、申し訳ない。
ピコッ
スマホの通知が鳴る。
〈マイカちゃん!〉
友人からのメールだ…タナコからだ。
〈今から勉強会しない?〉
…今から。
タナコよ、そういうことは前日に言っておこうよ。
〈一時間後に学校来てよ〉
はぇ?
一時間後だって…!
そんなの無理に決まってんじゃん。
〈流石に一時間後は無理〉
〈今からだと支度に時間かかるから〉
〈プラス30分待って〉
〈オッケー。〉
〈学校で待っておくね〉




