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 だがその時――両側から腫瘍が伸び、パカッと開くと中から液体が垂れ始める。倒れ黒靄と化したはずのカリオクラスだったが、その液体が瞬く間に形を成すと再びカリオクラスはその姿形を再生させた。


「あれっ? 戻っちゃったよ」


 思わずタック五を顔から離し眉を顰める陽哉。


「ちょっ……あれどーしよっか?」


 二人は忙しなく戦っているにも関わらず陽哉は悠長に背中へ尋ねた。


「さぁ? 一気にぶったたく?」

「賛成! ゲームでも同時にやらないと復活しちゃう敵いますからね」

「なら僕は真ん中もらおうかな」


 いつの間にか変わったレベックスのスライドを引いたりと弄る陽哉は戦闘の真っ最中とは思えない脱力ようだった。


「なら空鏡はそのまま左で」

「りょーかーい」

「空鏡ちゃん、トミー君貸してくれない?」

「いいよ」

「悠はアタシ、葉は空鏡に足場出して」

「それじゃあ僭越ながら合図はあたしが……」


 んんっ! とわざとらしく喉を鳴らした空鏡。


「じゃっ、いきまーす! ――ハートゥーセッ!」


 掛け声の後、空鏡は両手にトミーガンを出しながら目の前の敵を踏み付け宙へと跳んだ。そして跳ぶのと同時に体を翻し二丁トミーを陽哉へ投げ渡した。すると空中にいる空鏡の足元へ片足分の半透明な足場が出現。

 その隣では燈莉も同じ様に跳躍し、これまた同じように空中へ足場が現れた。二人は次から次へと現れる足場をリズム良く踏み付け、それぞれの目標へと向かう。

 一方、手元からレベックスを消した陽哉はトミーを受け取ると、前方では壁が消えコリオクラスの大波が彼目掛け押し寄せ始める。


「さぁーて次は僕の番か」


 両手でトミーを構えた陽哉は映画のワンシーンのようにありったけの弾を連射した。スナイパーとは表裏的に一発の重みより手数の弾数で敵を圧倒し、二人の移動時間を稼ぐ陽哉。しかしトリガーを引きっぱなしにしていた所為でトミーはすぐに弾切れ。

 陽哉は上空へ投げ捨てるとレベックスを構え銃声でリズムを刻み始めた。とはいえ、トミーに比べれば弾数はほんの一部。すぐに弾切れとなり大波が彼へと迫る。

 すると陽哉はタック五を手にしながらトミーを追うように上空へ。そのタイミングで足元には二人と同じ足場が一つ。そこから更に跳躍した陽哉だったが、その方向は前ではなく後ろだった。バク宙するように上下逆さになりながら体に捻りを入れる彼はまるで体操の技でも披露しているよう。


「わぁーお。上下反転って新鮮。おっと! 二人共、僕みたいにちゃーんと上手くやるんだよっ! っと」


 アイアン越しに狙いを定め陽哉はトリガー引いた。身を捩りながら突き進む弾丸。今度は腫瘍が割り込むこともなく先程を再現するように同じ箇所へ風穴を開けた。

 その右隣ではカリオクラスへと迫った空鏡。最後の足場は壁のように蹴り飛ばし、ルナークと九雷を構えながら一気に接近し行く。そして目で捉えるには余りにも速く、言葉で説明するには余りにも多い手数で、瞬く間にカリオクラスの頭部をバラバラにしてしまった。

 一方左隣では、鞘に納めた刀を構え眼前へと跳んだ燈莉の姿が。力を溜めるように右腰の刀へ上半身を集中させ、どこか気怠そうな眼光はじっとカリオクラスへと向けられている。そして一瞬の静寂が辺りを包み込み――。

 一閃。刀は瞬間移動したかと思わせる速度で鞘から抜かれ、振り切られていた。だがカリオクラスの顔へ一本の斜線が刻まれたのはそれから一秒程の間を空けた後。敵も世界も全てを置き去りにした一刀は、頭部だけでも巨大なカリオクラスを気持ち良いほど綺麗にかつすんなりと斬った。瞬く間に大量の黒靄に覆われながらも二つに斬り分けられた顔は上部がずり落ち、後方へと倒れていく体。

 そして三体のカリオクラスは手段は違えど同時にその場へ倒れていった。


「まぁこの三体をこの手際でやれるのは世界を探しても僕らがぐらいだよねぇ」


 コリオクラスも全て消えた世界でタック五を担いだ陽哉は、冗談交じりにピノキオですら驚愕してしまう程に鼻を伸ばしていた。


「末期にしては弱い方だったし、世界どころか他のチームでもほぼほぼ失敗しないっしょ」

「にしてもあか姉のあれ良かったなぁ。こうジュパって一瞬で」


 水をぶっかけるような燈莉の横で反応すら見せない空鏡は、彼女のカリオクラスへ放った一刀を真似ていた。


「あれ? 僕の一発は? こう逆さでトリックショット決めたんだけど?」

「んー。見てない」

「あちゃー。見てないかぁ。あのスーパーウルトラデリシャスショット」

「でもあんなデカい的だったらあたしでも当てられるよ。なんならもっと凄いの出来そうだし」

「いやいや。そんなあまいもんじゃ――」

「悠、葉。終わったからさっさと戻してくれ」


 盛り上がる二人を他所に溜息交じりに呟く燈莉。

 すると三人は引き摺り込まれるように一瞬にして地へと吸い込まれ――気が付けば手術室へと戻っていた。


「お疲れ様」


 モニターの数値を確認しながら梓は一言で三人を迎えた。


「今のとこ安定もしてるし、取り敢えずは大丈夫よ」


 梓の言葉の最中、悠と葉が組んだ手を離すと三人と羽崎を繋いだ鎖が砕け散った。


「それじゃあ燈莉、行くわよ」


 そう言って梓と燈莉は手術室を先に出て行った。

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