表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/51

第1話「気づけば悪役令嬢、でも川の音がする」後編

「どこへ行かれるのですか、お嬢様ぁぁああああ!!」


背後でメイドの絶叫がこだまする中、

俺――いや、**セレナ・フォン・グランディエール嬢(中身:釣りバカおじさん)**は、ドレスのまま屋敷を飛び出していた。


脳内は、完全に「魚>異世界>貴族>己の尊厳」の状態。


「見える……瀬に着いた魚影が……!」


レースひらひらのスカートをたくし上げながら、川岸へ突入。

フリル付きのドレスにレースの靴でぬかるみにハマり、1秒で靴をロスト。


「フハハハハ、いいぞぉおおおお!! これが、自然との対話だあああ!!」


どう見ても貴族令嬢が発狂して川に突っ込んだだけの構図だった。


◆そして釣り竿は現地調達

なんとこの異世界、親切にも近隣の子どもが遊んでいた釣り竿を貸してくれた。


「おねーちゃん、これでつれるよ! スライムのエサつき!」


「サンキュー坊主、恩に着る」


「お、お姉ちゃんが変な顔で笑ってるー!」


ニッコニコで受け取る美少女の顔は、内面43歳の釣りジャンキー。


エサは……スライムか。

まあ、虫よりマシ。異世界仕様ってやつだな!


◆そして──HIT!

ウキがスッと沈んだ瞬間、世界がスローになった。


(来たッ……アタリだ……!)


竿を立てる。合わせる。

魚の反応が、竿を通じて脳髄に響く。


「うおおおおおお!!乗ったァァァァァ!!」


水飛沫! 魚影が跳ねる! 糸が鳴る!


「これだよ! これが……これが俺の人生なんだよおおおお!!」


貴族令嬢が叫びながら魚と格闘してる姿に、

川の子どもたちも村人も遠巻きにざわつく。


「ねぇ……お嬢様じゃない?」「頭打ったって本当だったのね……」


「きゃあああっ! 服が、服が濡れちゃいますわお嬢様!!」


背後から、追いついたメイドが悲鳴を上げる。


だが、俺は全身ビショビショで堂々と魚を掲げた。


「釣れたぞーッ!!“異世界アユ(仮)”、ゲットォォォォ!!」


◆釣った魚は、焼く!

「さあ、エリシア、火を起こしてくれ」


「無理です!貴族令嬢は川で焚き火などしません!」


「俺はもう貴族じゃない。釣り人だ」


「お嬢様、完全に壊れていらっしゃいます!!!」


とはいえ火がないと始まらない。

しょうがない、石で火起こしだ。


10分後──


「やりましたね、お嬢様。焚き火、成功です」


「いや君がやったんだけどな?」


串を削って、魚を刺し、じっくりと塩焼きにする。

川の風が、煙を運び、香ばしさが広がっていく。


──焼けた。


パリッとした皮。ホクホクの白身。


「いただきますッ!!」


(モグモグ)


「うまっ……こいつ、世界救える味してるな……」


◆通報される令嬢

「……えーと、セレナお嬢様が、村の川で勝手に魚を釣り……」


「焚き火を起こし……」


「食べてた、と……?」


数分後、駆けつけた城の使者&医師団によって、

セレナ嬢は**「頭を再び打った疑い」**として保護されることになった。


川辺には、串に刺さった半身の焼き魚だけが、静かに残っていた。


◆後日、医師の診断メモ

「セレナ嬢の行動は常軌を逸しているが、身体には異常なし。

 ただし“釣り”という概念に対して異常な依存傾向が見られる。

 本人いわく『川の声がする』とのこと。

 ひとまず、釣り竿の使用制限を検討すべし。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ