9.大変です!
「あのー。私は大丈夫なのでしょうか?」
「あー、昼間から言う事じゃないんだけど、俺と体が結ばれれば大丈夫だ!」
何てことを昼間から!私が言わせたんだけど。でも、そうなのかぁ。
「キャシーちゃんは可愛いし、レイリー様は男前だから、二人の御子はたいそう可愛いだろうね。乳は出ないが、乳母やりたいよ」
「乳が出ないと乳母はできないだろ?」
「おしめを替えたり、世話係をしたい!」
「なんだよ、アメルは婆か?」
「なんとでもお言い!ああ、きっと目は黒目だろうね。髪はどうだろう?黒か赤だね」
赤黒かったら血生臭いとか噂になるんだろうなぁ、王都の方で…。
「お二人とも!気が早いです!私達はまだ……」
恥ずかしい~!
「おや、まだなのかい?レイリー様ともあろう人が」
「うるさいなぁ。俺にも事情ってものがあるんだよ」
「あー、はいはい。男の事情ね」
「ぜってーわかってねーだろ!」
「説明もナシにねぇ?キャシーちゃん?」
いきなり流れ弾が私に?!
「私にはわかりかねます!」
***
部屋に戻って一呼吸。
レイリー様との御子…。そりゃあ可愛いと思う。
「キャシー様、顔の表情筋が緩んでいます」
つまり、にやけてるのね?
「あー!!そんなことじゃなくて、隣国が攻めて来てるんじゃなかったかしら?」
「それなら、辺境騎士団の前衛で引き上げてったともう聞きました」
辺境伯独自の騎士団―――強そう。その前衛(第1陣)で勝ったという事?強いなぁ。
……魔族の血が混ざってるのかぁ。コンプレックスなのかなぁ?
神様の血が混ざってるとかなら?それはそれで隠すと思うけど、変に崇められたくないし、教会に縛り付けられたくない。
それなら魔族だろうと、神様だろうとなんでも関係ないじゃん!
腹黒さなら貴族の方が……とよく思う。
うーん、こういう有事の際の事を考えて乗馬の訓練も護身術もしてきたけど、隣国からどうとかはなさそうだなぁ。
「大変です!」
今日は色々と大変だなぁ。
「国王より参城せよ。との召喚状が届きました」
えぇ?私はこの国、ジョーシィク王国の国王になどお会いしたことないけど、レイリー様はあるのかなぁ?
「はぁ?面倒だな。その召喚状、風に吹かれてなくなったことにすればいいじゃねーか?」
「そんなことをしたら使者の人がお亡くなりになります。やめてください!」
「そ・・・そうか?」
「そうです!」
「その召喚日は?」
「『出来るだけ早く』と」
「さっさと馬に乗って来いってことかぁ。リックとティナの出番と行きたいところだな。恐らく、のん気に馬車で移動してたら、その馬車が襲われる。だから俺とキャシーは護衛に扮して、それぞれリックとティナに乗って移動ってのが妥当なところか。馬車には野営に必要な荷物を載せよう」
何故?辺境伯が国王に襲われる??
「何故?って顔だな。俺達が未だに魔族と繋がってると思いこんで、暗殺を企んでるからだ。俺達が留守の間は辺境伯ヴェナス領が手薄になると思って、王国軍が仕掛けてくるだろうなぁ。事前にわかりきったことだから対策が練れるってもんだけどな」
「隣国からこの国を守ってるのに、何たる扱い!」
幸せに浸る暇まなく国王が辺境に軍を?そりゃあ大変ですね!キャシーちゃん…王都に行きたいのかなぁ?