7.馬ちゃんの考えはわからない。
私はティナとリックが思っているっぽいことをレイリー様に伝えました。
「アハハハハハハ、確かに馬同士の方がいいよね。で、俺がティナに好かれてる?困るなぁ、俺はキャシー一筋!」
だから、ティナがなかなか言う事聞いてくれなかったりするんです。
「あくまでも‘乗馬’の訓練ですし、パートナーを交換しませんか?私がリックに乗って、レイリー様がティナに乗るんです」
「まぁ、乗馬の訓練だからなぁ。―――俺がリックにヤキモチなんだけど…」
「何か?」
「なんでもない!」
その後からは私がリックに乗って、レイリー様がティナに乗るという形で訓練を行った。
これなら、誰も文句はあるまい!と思ったのに、思わぬ所からクレームが……。
「キャシー様ぁぁぁ!キャシー様とティナとコラボという美しいビジュアルを楽しみにしていたのに!」
という侍女たちからのクレーム。
とはいえ、訓練にならないからなぁ。リックとティナがくっつけば解決するんだけどなぁ。というか、ティナが女王様気質だからなぁ。困りました。もっとリックに頑張ってもらいたいと思うのは人間のエゴでしょうか?
私が乗馬の訓練をする目的も『有事の際に自分で馬を駆り動けるように』というのが目的ですから、私が乗る馬はリックでもティナでもいいのですが、せっかく用意して下さった馬ちゃんですし、ティナに乗りたかったです。ティナとも仲良くなりたかったなぁ。
どんな馬ちゃんにも乗れるというのが理想的なんでしょうね。有事の際に馬ちゃんを選んでいる暇などありませんから。
それにしても―――リックは逞しいので非常に安定感のあるいい馬です。ティナはレイリー様のどこが好きなんだろう?リックのどこが不満なの?馬ちゃんとコミュニケーションは取れても会話はできないからなぁ。
リックに現状を伝えよう。
「ねぇ、リック?レイリー様は私の婚約者なのよ。ティナは絶対にどうにもできないの。私はね、ティナとも仲良くしたいのよ。だからお願い!リック!!リックがティナと仲良くできたらうまくいくと思うの。リック、頑張ってティナを口説き落として!男を見せるのよ!リックは逞しくて素敵だと思うんだけど、ティナはリックのどこが不満なんだろうね~?」
「ブフォッ」
どこからか吹き出し笑いの音が…。
レイリー様?
「キャシーが独り言をブツブツ言ってると思ってたら、馬相手に何を説いてるの?」
「あ、あのっ、リックとティナがうまいことカップルになれば私がティナに敵視されることもなく、ティナと仲良くできるなぁと思って、リックに話しかけてたんです。私はリックが逞しくて素敵な馬ちゃんだと思うんですけど、ティナはリックの何が不満なんでしょうね?」
「馬にもいろいろあるんだろう……」
私にはわからないけど、レイリー様が言ってたことが真理だろう。
馬ちゃんの考えてることはわかりません。でもキャシーちゃんも大変だなぁ。有事のことを考えたらと思うし、難しい。