表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

2.お客に混ざってこんにちは


 辺境伯様について、お姉様達は噂話を色々と言っていました。だからでしょうか?お会いするのがとても楽しみになっていました。


 辺境伯ヴェナス領へと着き、私は御者に少ない荷物と共に放り出されました。ええ、放り出されたのです。辺境伯邸までは送って頂いてはいません。

 荷物が少ないことが幸いです。辺境伯様のお邸までどのくらいなんでしょうか?

 私は街の方に訊ねることにしました。

「あんた、ずいぶんきれいな格好をしているねぇ。まさか貴族様?」

「えーっと、辺境伯様のお邸はどこでしょう?どのくらい時間がかかりますか?」

「カーッ、そんなことも知らないでここにいるのかい?お邸はほらあそこの山の上に建ってるアレだよ。時間かい?徒歩では…たぶん半日くらいかなぁ?今日は日も落ちて来てるし、とりあえずうちの宿にでも泊りな!」

「スイマセン…。お金持ってないんです」

 あのお母様もお姉様もお金とか持たせてくれなかったのです。

「……まったく仕方ないねぇ。一泊だけだよ?無一文で泊らせるよ」

「ありがとうございます!代わりに一生懸命働きます!」

 

 私はその宿(夜は酒場)でホールに出て、接客などしていました。計算もできるので、会計に行く前のお客様にいくらくらいかを事前に伝える手法が好評でした。

「キャシーちゃんはいい子だねぇ」「あの新しい子、キャシーちゃんて言うのかい?」

「新しい子じゃないよ。事情があってちょっと預かっている子だね」

「まぁ、女将さんが言うんだからそうなんだろう。深く追求しないよ」

 などと言う会話があったとはつゆ知らず、私は仕事に没頭し、その日の寝床も確保していました。翌日には辺境伯様のお邸へと行きたいものです。



 翌日、私は意を決して辺境伯様のお邸を目指して進むつもりです!徒歩で。

「ちょっと待ちな!キャシー、あんたのその靴。相当古いんじゃないかい?」

「そうですね、えーっと3年は履いていると思います」

「年頃の娘が嘆かわしい!ほら、辺境伯様のお邸まで行くんだろ?その古い靴じゃ、もたないよ」

 そういって女将さんは、まだ新しい靴を私にくれました。

 女将さんの顔が紅潮しているように見えますが、口に出さないでおきましょう。

「いや、それは…だな。もう私が履かなくなったお古ってやつだ」

 まだ新しく見えるんですけど?

「昨夜、寝床を与えてくれたことと、この靴の御恩は必ずお返しします!」


「……ヘンキョウハクサマ?いい子じゃないかい?あんたが縁談話を送った家から来た子なんだろ?」

「あぁ、その家の噂は「女家族で一人だけ黒目に黒髪の子がいる。その子だけ侮蔑されている」という話だったんだが、どういうわけか侮蔑されても腐らず真っ直ぐに育ったようだな」

 そう言うと、辺境伯レイリーは馬に乗りキャシーを追いかけた。




キャシーちゃんはイイ子やぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いよいよ辺境伯殿下の元に出発だね。辺境伯領の街に着くなり、御者から馬車から追い出されるか!御者も嫌な奴だね。仕方ないく徒歩で向かう事に。辺境伯邸の場所を街の方に尋ねると、半日は掛かるとの事。尋ねた婦人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ