11.陛下に謁見
そんな王都観光(?)でしたが、王城に辿り着きました。
「国王の召喚状により、辺境より王城にやって来たレイリー=リチャードソン=ヴェナス辺境伯である。召喚状もある」
「確かに確認を致しました。謁見の間までご案内いたします」
こそっとレイリー様は私に囁いた。
「ここから謁見の間までの間でも暗殺しようってやつがゴロゴロいるから気を抜くなよ。エマは側にいるし、他の護衛達もそばにいるからなんとかなるか……」
「ただいま謁見の間で会談をしているので、この部屋で少々お待ちください」
はぁ、ほっと一息。私がソファに座ろうとしたところ、
「いけません!ソファに猛毒が塗られた針が仕込まれていることも考えられます。我々は立っているのが無難でしょう」
厳しいなぁ。私はただの人間なんだけどなぁ。
プシュ~~~~~~~~
「どこからか、なんらかのガスをこの部屋に充満させる気だ」
私が急いで窓ガラスを開けようとすると、そこでも…。
「いけません。何が仕込まれているものやら…」
エマは丁重に濡らしたハンカチで窓ガラスを開けた。
「これで換気は十分ですね」
換気をさせることが目的という事は考えられないんだろうか?
「外から我々がいる部屋が丸わかりというわけか…」
なんだか、ゴロツキと呼ばれるような人たちが部屋の中にどんどん入ってくる。王宮の警備はどうなっているのだろう?
レイリー様とその侍従様及び護衛の方々によって、悉く倒され屋外にどんどん放り出している。
その光景を見ている身としては、微妙。
今こそ身につけた護身術を使う時ではないのかと思う。
と、レイリー様に伝えると、あくまでも護身術あって、自ら進んで攻撃をする武術ではない。相手が攻撃してくるからやむを得ず自分を守るためにというのが護身術だ。と言われた。なるほど、と思う。
でも、すごく守られている感じがする。
光景はシュールだけど、まさに千切っては屋外に投げ捨ててるから。
謁見の間に通された。
長い道のりだった。ここまでも襲撃され、王宮内でも襲撃され……。
「国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅうございます」
あんなに襲撃を受けてなおも、口上を言わないとならない貴族社会の理不尽さがなんとも言えない。
「よいよい。最近、其方が婚約をしたという噂を耳にしてなぁ。是非ともその婚約者に会ってみたいものだと思ったのだよ」
だったら、襲撃しないでほしい。
「初めまして。国王陛下。実家はホワイト家となります。女主人の家です。私の名前はキャシー=ホワイトと申します。レイリー様と婚約をしていますのでもうすぐキャシー=ヴェナスとなりますね」
「なるほど。なかなかの美女ではないか。辺境伯も隅に置けないなぁ。また二人が正式に挙式する時などに顔を見せてくれないか?」
「はぁ、辺境からここまではなんぶん距離があり、時間を要するので難しいですね」
レイリー様は、ヤダよーと断っている。まぁ、いろいろ面倒だったしなぁ。いいのかな?陛下を相手にワガママ言って。辺境で国境を守っている実績があるから言えるのかな?
「年に一度は顔を見せてほしいものだ」
「そうですねぇ、5年に一度は」
「「ハハハッ」」
貴族の腹の探り合いってコワイ。
陛下は何を考えてるの?襲撃しまくりじゃんかぁ。