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氷上優VSdog…③


【change】


「襲わないなんて」


目の前の男はそう言った。


なぜそんなことを言った?


俺の体を動かせなくしたのは、お前だろ?



…力を持ってみると、相手の力がわかるということがある。


例えば空手や柔道の経験者等がそれだ。


今俺が擬態した魔物【白虎】は、S級魔物の中でもトップクラスの魔力を持っている。


だから、わかる。


さっきまではただの少年にしか見えなかったこいつに隠された

とてつもない魔力が…


そして気付くと、動けなくなっていた。


動作も無しに俺の体の自由を奪う魔法使い…

そんなやつこの国…いや、この世にいるはずがない。


わけもわからず男を睨みつけることしかできない俺に、目の前の少年はそう言った。


「時間稼ぎくらいはできっかな…?」


次の言葉はこれだった。


時間稼ぎ…?

こいつ…自分の異常な量の魔力に気づいてないのか?


それがわかると、俺は少し緩んできた口元を閉じた。


これは勝機につながる…

という、確信を持って。



「時間稼ぎなんてできるわけねーだろ…俺を誰だと思ってんだ!!」


自分の魔力量を何故知らないかなんてどうでもいい。

とにかくこれは、つけ入る隙になる。


俺はそう確信していた。


「…かもな。

でもな、俺はお前に殺されたとしても、お前にあいつらを追わせられない理由があんだよ」


「何言ってんだ?お前殺してあいつら殺して皆喰う。

そうなることはもう決まってんだよ!」


「…お前…」


「だ、だけどまぁ、一人で残って他のやつらを逃がした時は素直に感心したぜ?

思わず見入っちまって襲うの忘れてた。」


「…?」


な…何だ今の魔力!?

元々桁外れにある魔力がさらに増えた!?


こいつ一体何者なんだ…

いや、考えるな。

考えずに、気付かない振りをし、こいつを上手く引き離すんだ…。


「だからそこを買ってやってな、お前がもし邪魔しないってんなら、お前だけは喰わないでやるよ!」

終わった。

今までに盾として残った奴は何人かいたが、どんな奴だろうと最終的には自分の命が惜しい。

だから俺はそんなやつにはずっとこう言ってきた。


するとどうだ?全員が安堵の表情を浮かべて承諾する。


実際他人との繋がりなんて、そんなもんだ。

ただ、利害が一致するか?

それだけ。


だから全員、承諾する。

「自分が助かってよかった」

という顔をしながら、承諾する。


まぁ結果としてはそいつのことも喰うんだけどね。


つまりこいつもそんな奴らと同じ、体裁と精一杯の度胸で盾になった一人。

すぐ乗ってくるはず…


「…か」


「あん?」


「二人を売ったら、自分だけは助かるってことか」


ほら…やっぱりな


「ああ、悪くないだろ?あんな女二人くらい、これからいくらでも手に入るかも知れない。

でも、自分が死んだらそれもできないんだぜ?」



どんな魔力を持ってようと結局こいつも同じ…

自分可愛さに他人を売るような下衆…

これでこいつは確実に乗ってくる!!


俺がそう確信すると、目の前の少年は何かを一人でつぶやきだした。



「そうか…あいつらを見捨てれば俺は助かるのか」


「フ…フフフ」



…はいおしまい。駄目人間一丁上がり。


そう思いさっきの女を食いに行こうと動き出そうとした俺だったが、突如襲ってきたとてつもない殺気と魔力によって急に身動きが取れなくなった。


「!?」


わけがわからない俺を鋭い目付きで睨みつける少年。


いつもと逆の立場な状態に戸惑っている俺に、その少年は隠そうともしない怒気を含んだ声で言った。



「ふざけたこと言ってんじゃねえ!!」




「他人を見捨てる…


それは俺が一番嫌いな行為だ!!



もしそれで助かったとして、この先一生、その呪縛に縛られたまま笑っていられるか!?


平和な生活を幸せに送れるか!?


できるわけねぇだろ!!!

一生罪悪感と後悔という怨霊が纏わり付き、終いには生きるのが辛くなって気が狂う!!



それに、あんな女…?


なんも知らないお前があいつらを馬鹿にすんな!!


もし俺があいつらを失っても、女は星の数程いる。



だけどその中でも、ぷー子とユーリという人間は

あいつらだけだ!!!


それにあいつらの命を軽々しく終わらせる権限なんて俺には、

ましてお前になんかあるわけない!


足止めだなんだ言ってたけど


止めだ!!



お前は!ここで俺が倒す!!」



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