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dog覚醒[3]



…数分後、一つの足音が近づいてくるのがわかった。


と、言ってもまだ50m程離れてるから俺にしかわからないが。


俺は、さっき見回りに出した魔物が帰ってきたのかと思った。


しかし…



「…ナンダオマエ…!ドコカラ…ウッ!…」


「オマエ、イマナニヲ…ウッ…」


40m…30m…


「オイ、トマレ…ウッ!?…」


20m…


「オマエダレダ?ドウヤッテココマ…デ…」


…なんだ?


この足音が近付くにつれ、俺様の見張りの魔物達の声が消えていく…?


15m…


ここまで来たら、いくら薄暗いこの屋敷だろうと姿は見える。


しかし…こいつは…。


10m


完全に姿が見えるようになった時、俺はそいつに話しかけた。


「…お前…誰だ?」


すると、その魔物は足を止めた。


俺は目の前にいる魔物を、今まで見たことがなかった。


少なくともこいつは、この山の中の魔物では無いのだろう。


まず、鋭い赤い目。

そして3mはあるだろう体全体に生えた、思わず魅入ってしまいそうな美しい針金のような真っ白い体毛。

どうやら四足歩行のような足の先には、とても太くなんでもえぐってしまいそうな大きな爪が4爪。

そして口には、噛まれたら痛いじゃすまなそうな研ぎ澄まされた牙をこしらえていた。


薄暗い屋敷の中で、一際目立つ程真っ白な美しい魔物。


こんな魔物俺は知らない…


こんな向き合ってるだけで、並の魔物なら魂ごと吸い込まれそうになる真紅の目を持つ魔物など…。




「バンプ…。」


突然、目の前の白銀の魔物は初めて俺に向けてそう言った…喋れたのか。



「…俺様のことを知ってるということはこの森にいた魔物か?」


「ずっといた…。」


「ずっと?」


嘘だ。


こんな膨大な魔力を持ったやつがいたら、今まで俺にばれずにいられるわけがない。


しかし…何故こんな嘘を?


「ずっといたと言ったな…ならば今までどこに…」


「おレは今まで…おまえに逆らったことはない」


「は?」


「おまえが大量に保有してる食料を奪ったこともないし、おまえの手下の魔物を殺したこともない…」

「そうか。まぁそれは当たり前のことだ、俺様の物に手を出す奴なんて「だけどおまえは殺した」


「おまえは俺からアイツを奪った…俺の生活を壊した…俺の世界を殺した…!!」


アイツ…?


今まで淡々としていた口調が急に荒いでいくのを見る限り、そのアイツという魔物がそいつの地雷みたいだ。


敵討ち…か。


よくみると、この虎の形をした白銀の魔物の口元についているあの赤い液体は、どうやら俺の手下共の血のようだ。


俺は目を閉じて耳を澄ました。


しかし聞こえるのは風が屋敷内を吹き抜ける音だけ…こいつは屋敷内の魔物をほぼ全て噛み殺したのか。


そしてそいつは更に俺を睨みつけたまま続けた。


「だかラ俺は殺した…おまえの仲間を…この姿で…そして」


「おまえを殺す!」


そう言い切った。



「ふむ…」


この殺気、魔力を見る限り、こいつはA…いやS級クラスの力の持ち主だろう。


現にこの俺でさえ、こいつのこの鋭い眼光に見詰められて少し体が強張っている。


金縛りの呪い…いや、ただ単に殺気が尋常ではないというだけか。

どうやら仲間が殺されたというのは、嘘じゃあ無いみたいだな…だが


「アイツなんて魔物俺は殺した覚えは無い…いや、殺した魔物の数が多すぎて、一々把握してられん。故に俺様とお前が闘う必要は、微塵も無い。」


そう言うと殺気が一層増して、それだけでB級魔物くらいなら殺せるのでは無いかという視線を浴びながら俺は続けた。


「だが…!

お前はこの屋敷の魔物を殺しすぎた!

この屋敷内にいる魔物を殺していいのは俺様だけだ!他の奴は触れることも許さん!

だから…お前は俺様に殺されろ。」


言い終わった途端、俺達は同時に飛び出した。



…!?


何が起きた!?


まさかやられたのか!?一撃で!!?


なんで俺の腕があんなとこにあんだ!?


S級魔物の俺がこんな死に方を…?


「…嘘だ」




【change】



「…は?」


弱い…弱すぎる。


こんなやつに今まで、ここの魔物達は従っていたのか?



なんだ…


倒したのに…


敵は討ったのに…


この満たされない気持ちはなんなんだ…


この姿になってから、何かが変わってきている。


この爪で、牙で獲物を殺す時に、快感を感じている。


俺は、何故ここにきた?


アイツを殺されたせめてもの恨みを晴らそうと思ってきたのに、これ以上何を求めているんだ?


俺はふと、足元に落ちていた切り落としたバンプの右腕を見た。


何故そうしたのかはわからない。


俺はその腕を拾い上げ、そのまま飲み込んだ。


今まで食べたどんな木の実よりも美味かった。


この中には、アイツの血も混ざっている筈…


アイツの血…


美味い…


この味が、もっと欲しい…。


気付けばその時からだった…俺が山を下り人間を喰らうようになったのは。


俺の心が、汚れていったのは…。




最後らへん適当になってすいません…


でもこのdog編が自分で思ってるよりも全然長引いてしまったので、少々強引でも終わらせて次のステージに進むのが吉かなという愚策を使いました(汗)


ではこれからも不幸な異世界奮闘記をよろしくお願いします


アデュ!




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