表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/35

BINTA




【change】






「……ふー。」


今俺はユーリの旅館の温泉に入っている。


疲れをとるためとの名目で勧められ断りきれずに入ってみたが、これがなかなかどうして心と体の疲れを洗い流すかのような心地よさを与えてくれた。


それにしても…


…こうして湯に浸かって温泉の温もりを感じていると、これが紛れも無く現実だということが思い知らされる。


俺が異世界に来てしまったことも、なぜかそこでは化け物が存在することも、

もう自分が簡単には帰れないことも…。


俺はそう思いながら、自分一人しかいない浴場で誰に問うでもなく呟いた。


「俺にどうしろってんだよ…」


「何を?」


「色々だよ…お前がいきなり男湯に現れた時のリアクションとかな、ぷー子」

まさか返事が返ってくるとは思わなかったのに…冷静だな俺。



「んー…よく寝た!……ここどこ?」


そう言って軽く伸びをしながら周りを見回すのは先程とは違う寝間着のようなラフな服装をしたぷー子で。


目前には全裸で湯に浸かる俺の姿であって。


そしてそれに気づいたぷー子が固まるわけで。


「タオル持ってき……」


タオルを持ってきたユーリもそんな状況を見て固まるわけ…って何で来てんだ。ドアの外に置いとけ。


正直に言わせてもらうと

死ぬほど恥ずかしい。早くこの二人に消えてもらいたい。


でもここで俺が焦って暴れたら、今は事の凄まじさに硬直してる二人だが絶叫し出すかも知れない。


冷静に…ここは冷静に、何事も無かったように済ませるんだ。


心を落ち着かせろ…俺ならできる…。



「おいおいユーリちゃん…ここ男風呂だぞ?タオルはそこ置いといていいから、早く出て行きなさい。」


と、言うわけでまずはユーリだ…ユーリをこの場から一時的に消し、ぷー子を素早く脳内に戻す!これしかない。何、ユーリも女の子。自分が今男湯にいると言うことを指摘されれば恥ずかしさと外聞を恐れて出て行くだろう…。


「……。」


…と思ったら出ていかねーよ畜生。それどころか顔赤くして頬膨らましながらこっちに歩いて来るって意味わから…

俺の思考はそこで一度中断され、頭には左の頬っぺたの痛み、目には振り切ったユーリの右手だけが映った。そして耳には


「…この浮気者」


とんでもない言葉が入った。


そしてユーリはそれだけ言うと踵を返しそのまま浴室から出て行った。


……


未だ叩かれた意味と俺があんなことを言われた意味と結局何がしたかったのかがわからずに唖然としている俺だったが、ぷー子が俺の顔をじっと見ているのに気付いた。


「なぁぷー子、さっきのってどういう…」


………


…わぁ冷たい。



すっごく…冷たい眼。

あまりにもの冷たさに全裸の俺は耐え切れず硬直してしまったわ。


「優…」


そして…なんて冷たい声でしょう。

あれ?ここ温泉なのになんで俺こんな寒いんだろ。ちゃんと汗もかいてるのに…あ、これ冷や汗だった。


「浮気者って…あんた一体あの娘と何したの?」


ヤバい…恐い…このままじゃ…このままじゃ俺の中のもう一人の人格…[鶏優(チキンマサル)]が出て…


「な…な、何も?本当に何も?」


出てきた。


「…そういえばここ…どこ?」


「ユ、ユーリの家の旅館の銭湯のタイルの上…」


「ん…?」


「だ、だからユーリの…」


「…何であの娘の家にいるの?」


なんだよこれもう助けてくれよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ