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説明


【change】




今俺とユーリは森の中を全速力で走っている。



早く町に着くために。



早くあの男…dogから逃げるために。



隙をついて咄嗟にユーリの手を引いて逃げたはいいが、振り向いたらすぐ後ろにいるかも知れない。



そんな不安に刈られ、俺はユーリの手を離さないままさらに足に力を入れた。



………が



俺の足はそこで止まった。



予想もしてなかった自体が起こったからだ。



「おいユーリ…何手ぇ離してんだよ!?」



ユーリが俺の手を強引に振り払ったのだ。



「…逃げる必要が無い。戻る。あの人を町に案内する。」



…ッ!何を馬鹿なことを!!



「戻るな!戻ったら今度こそあいつに殺される!!」


俺はそう言ってユーリの腕を掴んで引き止めたが、それもまた振り払われた。



「おいユーリ!いい加減に「いい加減にするのはカインの方よ!!」



俺は言葉が出せなかった。



今まで大声など出せないのではと思っていたユーリが、声を荒げて叫んでいることに



「あの人は私達を助けてくれた…一度も会ったことの無い私達を!!傷つきながら!それを私達は怖くて黙って見てるだけだった!なのに…あの人は助けてくれた!!」



ユーリが初めて声を上げたのは、あいつの為だということに。



「だから…………え?」



俺は、走り出した。



これ以上ユーリの顔を見ているのが辛くて、声を聞いているのが悲しくて、俺はユーリを置いて走り出していた。



dog………優のいる方へ。



【change】



俺は今、森の中を走っている。


逃げた二人を追いかけて、ひたすらに足を動かしている。


『次の大きな木を左!』


ぷー子のナビゲーションを頼りに。


「本当に合ってるんだろうな!?」


他に当てもないからとりあえず従っているけど、どうもさっきから同じところをぐるぐる回っている気がしてならない俺は不安に刈られ聞いてみた。


なにせあの二人がこの森を出るまでに見つけないと、この森に兵器魔法だとか言うものが撃ち込まれる(かもしれない)。


『大丈夫!なんとなく…こっちにあの男女子のいる気がするから!』


「はぁ!?」


というのにそんなふざけたことを言うぷー子に驚き、俺は足を止めた。


「お前ぷー子………勘?」


『違うわよ!本当にこっちにいる気がするのよ!!』


「そういうのを勘って言うんだよ!!

うっわマジか!?これ絶対見つからないだろ!!」

自信満々で言うからその通りにしてきたけど…やっぱ同じとこ回ってるだけなのか?


そう思った俺は近くにあった大きな切り株に腰を下ろした。


『ちょっと!!何してんのよ!?逃げられるわよ!?』


「いいよ、もう…どうせ間に合わないって…しかも、まだあの二人が森の中にいるなんて保障は無いし…諦めよう…。」


自分で言っててなんだが、まさにその通りだ。この広い(?)森の中を直感でさ迷っても、見つかるわけが無い。


ましてや森…茂った木が邪魔になって、雪山で黒ゴマを探すようなものだ…。


『優…』


俺はそう思い、絶望的な顔を上げて前を見た。


そう…もう見つかるわけな…


『前…』



………




「いたーーーー!!!!」




「驚いたな優…いやdog。てっきり追ってきてるもんだと思ってたんだが。」

目の前には、なぜ戻ってきたのかはわからないが、先程の少年が汗にまみれて立っている。


こちらを冷たい目で見据えながら。


対する俺は………


「………」


何故かわからないが見つけることができて、助かった気持ちから泣きそうになっているのを悟られないように男の子を凝視していた。


「意外か?俺が戻ってきたのが…。」


男の子は自分を見つめる俺を見て、何を勘違いしたのかそう尋ねてきた。


まぁ意外だけど。


「まぁ予想もしなかっただろうな、一度逃げた餌がわざわざ自分からやってくるなんて…ってな。俺だって最初は逃げてたんだよ。でもな…逃げられない理由が、逃げてる途中にできちまったんだわ。」


「………」

※ここらへんで、俺は足に力を入れてきている。


「それが何かわかるか…?そう…それはな、俺の連れの女がお前のこと「おおおぉぉ!!!!」を!!?」


俺は奴の話を遮り、ラグビー部真っ青のタックルを放った。


でも、俺こんなに足速かったか…?まぁいいや…とりあえず今は!!


「はっ…離せ!!」


「そいつはできない…わけあって君はもう一人の女の子の誤解を解く為の人質だ。」


こいつらの間違った認識を指摘してやらんと!













「……というわけで、俺は別の世界から飛ばされてきた人間なんだ。」


「……」


『……』


俺が自分の身の上話をし終わり、(強制的に)聞いていた男の子と興味半分でついでに聞いていたぷー子は、話し終えたというのにまた俺から目を離さない。


「終わり…なんだけど」


俺がそう言うと、今まで黙っていたぷー子が口を開いた。


『にわかには信じがたい話だけど……本当なら心魔学もスクイード国のことも知らないのも納得ね…』


「……」


しかしこの男の子はまだ何も言わない。ただ、数秒ごとに鼻をすする音だけ聞こえる。


話しを聞く前まではあんなにやかましかったのにどうしたことかと思い顔を覗きこんでみたら…


「…何で泣いてんだよ。」


感動ものの映画を見終わった後のように、鼻を赤くし、目尻に涙をためていた。


「…俺とっ、同じくらいの歳なのにっ、そんな大変なっ目に合ってっ、なのにっ俺はあんたのことをっ魔物と思って攻撃しようとしてっ…」


どうやら相当涙もろい性格らしいけど、一つだけわかることがあるとすれば、こいつはいい奴だ。


「まぁ、とりあえず泣き止んでからでいいからそっちの話も「師匠!!」………」


目の前の男の子は突如涙を拭って自分にそう言った。


………


「師匠!!

…俺のことは今度から…カインと御呼び立てください!」



……


…こいつは、いい奴だ。

でも…多分バカだ。



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