落下
氷上 優
生れつき運が悪く、お人よしな性格。
持ち前の判断力と天性の勘で、その才能が発揮されることもしばしば。
中学生の頃までは極度のマザコンだったが、ある事件をきっかけに姉以外の家族には干渉しなくなる。
両親のことについては後々。
俺は今、異世界で暮らしている。
地球と比べると科学的な面から見たらどこか劣るところもあるけど、この世界には地球にはなかった文明が存在している。
それが、魔法。超能力とも、超現象とも言われている。
この魔法は本当に便利なもので、地球で問題になっていた森林伐採や発電、また、交通手段としても使われている。
そして俺はこの世界では神童と呼ばれていて、運動をさせたら何でも表彰。勉強は小学生時に国立大学受験を好成績で突破、そして毎日500人の女の子と獣人に告白されるという、リア充を絵に書いたような存在だ。
「優、ご飯できたからそろそろ起きな。遅刻するよ。」
まあ、夢なんだけどね☆
「優、どうしたの?顔色悪いけど、なんかあった?」
「いや、あっちの世界から地球にきた時のあまりにもの落差に絶望してるだけだよ…」
そういいながら、俺は姉ちゃんの用意してくれた朝食のカレーにスプーンを入れる。
「つかなんで朝からカレーなんだよ……」
「だって昨日残っちゃったから、勿体ないじゃん」
「そう言いつつ姉ちゃんはなんでランチパック喰ってんの?」
「そ、それは賞味期限今日(2010年4月5日)までだから、腐らせちゃいけないと思って…!!」
「今日は2011年の7月14日じゃない気がするんだけど」
「いいからあんたはカレー早く食べなって!入学式遅れるでしょ!」
「はは!はぐらかそうったってそうはいかないぜ姉ちゃん。蓮見高校の入学式は10時半からだ。まだ7時前なのに…ってなんでこんな早く起こしてんだよ…」
「ああ、その時計、3時間遅れてるから。」
「は?そんなわけないじゃん。だって昨日の夜、遅れちゃいけないと思ってその時計、1秒足りともずれてないか確認したんだから。」
「うん。そのあと私が3時間遅れさせた」
なにを言っているんだこの馬鹿は………もし時計が3時間も遅れてたら今はもう10時前で入学式には絶対間に合わ……………
「…………マジすか?」
「マジすよ」
「……………なんで?」
「いつも時計を3時間前にしておいたら、時計を見て待ち合わせに遅れそうな時間でも実は3時間遅れてるから、余裕ができるっていう。お姉ちゃん頭良いでしょ?」
「………………馬鹿」
「え?」
「それは3時間進めた時の理論だあああああ!!!!行ってきまああああす!!!!!!」
「ああ!!優!カレー残しちゃ駄目!!それに寝間着で行くの!!?待って!優!!優ーーー!!!……………」
「……………ふぅ」
変な想像したやつ死ね。
ったく……姉ちゃんの天然ぶりにはほとほと殺意が沸くぜ………携帯で確認したら、3時間どころじゃねえ、もう10時20分じゃねーか…
蓮見高校には9時に出てバスに乗って電車に乗ってバスに乗っていかなきゃいけないのに……10分で走りで行くとか、これなんて無理ゲ?
でも、もたもたしてたら高校自体終わっちまう…初日で欠席っていう不良には見られたくない!!
そう思って俺は、ストライドを更に広げて、陸上部員も真っ青のスピードで横断歩道に飛び出した。
信号が赤に変わったことにも気付かずに
危ない!!
そんな声が聞こえた気がして、俺はやっと気づいた。
前も、後ろも、横も
どこも車が通っていることに
当然ここにも………
「危ない!!!大型トラックだ!!!!!」
都合よく即死運搬車が突っ込んでいることに。
目の前に迫るトラック
急いでブレーキを踏む音
周りの人の悲鳴
突然足元に開いた穴
死ん………え?穴?
「あああああああああああああああああああああ!!!!?????」
九死に一生を得るって、まさにこのことだね☆ミ
とか言ってる場合じゃないね☆ミ
氷上 しぐれ(ひかみ しぐれ)
天然。一言で表すなら、一味違った天然。(あ、一言じゃねーや)
ブラコン。優を弟以上の存在として見ているが、優にそのことを悟られないようにしている。しかし、優に褒められたりした時は、少し自が出る。
容姿端麗。眉目秀麗のスーパービジンだが、弟以外の男には微塵も興味を持たないので、言い寄る男は鬼畜に沈めている。
両親のことについては後々