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第九話 特異魔法と呪文

 夜、私は黙々と魔法の練習に勤しんでいた。 


「お前、特異魔法はなんなんだ?」


ダグレストさんが後ろから話しかけてきた。


「と、特異魔法?すいません、何ですかそれ。」


「知らねぇのか。特異魔法っつうのは、そいつが生まれながらに持っている魔法のことだ。誰でも使える、火や水の生成じゃねえ。

 サメーラだったら、魔物を凝縮させ球にして操れる。

 俺は常人離れした武器への魔法付与能力のといったところだ。俺のはただの才能って言っても違いはあまり無いな。

 で、お前は?」


 特異魔法、生まれ持った能力か。全くわからない。わたしはこの世界で生まれていないので持っていないのだろうか。


「すいません、多分ないです…。みんな持ってるんですか?」


「いや、全員が全員ってわけじゃねえ。特異魔法は、本当に死にそうになった時に初めて、発動する。生きたいとそいつが心の底から強く思ったらな。それで運良く生き残れたら特異魔法として使えんだ。


 死にかけたことがねえ奴や、発動しても結局は死んじまった奴の方が多いな。無理もない。能力について何の説明もないまま渡されたってなにが起こったのか瞬時にわかる奴なんてそうそういねえからな。役に立たねえ事も。直感的に能力がわかった奴は運がいい。」


 死にかけた事か、一度高い木から落ちたが、あの時は発動した様子はなかった。サメーラさんが助けてくれたからだろうか。


「お前、あの大森林に1人でいたんだろ?その間に発動しそうだが。」


「魔物と遭遇する前にサメーラさんが助けてくれたので。」


「ほう、なるほど。そいつは運が良かったな。」


 

 その後は魔法の練習をしばらく見てもらった。試しに杖を使ってみたのだが、少量の魔力で大きな火を出すことができた。これは使える。

 

 また、呪文も教えてもらった。呪文を読まなくても、魔法でモノを生成することは出来るが、その後は消すか飛ばすくらいしか出来ない。


 しかし呪文を唱えると生成したものに具体的で様々な設定を付け加えることができる。基本的なモノはこれららしい。


 火:ファルセール

 水:スプラーナ

 風:カザース

 土:グラダルダ

電気:ジュワルド


 魔力だけを発射するなら下のだけでいいが、生成したものに設定を加えるには上のもの唱えなければならない。


爆発:ダルボード

 線:セラントル

圧縮:ギュラル

 球:タミレンタ

連続:ゲノラージ


 他にもたくさんあるのだが、今はこれくらいでいいらしい。そもそも2日で覚えるには結構な量だ。しかし、ダグレストさんが直々に教えてくれるので何とかなるという。


 早速やってみたが、呪文を唱えれば案外すんなりと発動することができた。本当に唱えるだけでいいらしい。あとは咄嗟に呪文が唱えれるように暗記するだけ。暗記なら出来そうだ。


 


 翌朝。


 起きるとゼグレ君が外で剣の素振りをしていた。ダグレストさんは一階のソファでいびきをかいて眠っている。私も外に出ると、汗をかいた爽やかな笑顔で


「おはようございます、アカネさん。」


と挨拶してくれた。私も笑顔を作りながら


「ああ、おはよう。ゼグレ君。」


 "ゼグレ君"と私は言っているが実際どっちが年上なのかはわからない。ゼグレ君は孤児で誕生日はおろか正確な年齢もわからない。一応15歳ということにしているらしい。

 それでは私と同い年なのだが、本人が丁寧語の方が話しやすいとのことで"アカネさん"と呼んでくれる。少し恥ずかしさもあるが悪い気はしない。


 興味本位で聞いてみた。


「ゼグレ君て、特異魔法もってるの?」


  ダグレストさんの話によれば彼は孤児で餓死寸前だった。死にかけくらいいくらでも経験してそうだ。


「ああ、俺の特異魔法は、一時的な身体能力強化です。」


 身体能力強化、あまりにもシンプルで少し驚いた。言ってしまえば失礼だが、ポーションの上位互換と言ったところなのではないだろうか。


「はは、何の(ひね)りも無いですよね。俺もそう思います。でも使い勝手は結構いいんですよ。日常のちょっとした時にも使えるし。」


「いつ、使えるようになったの?」


「俺がダグレストさんと会う少し前です。盗賊から必死で逃げていたのですが、(つまず)いて転んでしまって。すでに傷だらけで出血が酷く、空腹で視界がぼやけながらも、盗賊が俺を剣で殺そう振りかぶったところで何とか立ち上がり、もう一度走ったんです。

 そしたら、自分とは思えないような速度で。火事場の馬鹿力とは明らかに違いました。

 能力が身体能力強化じゃなかったら俺はあそこで死んでますね。」



 たしかに、何の捻りも無いと正直思ったが、身体能力強化という能力は真面目で一途そうな彼には似合っていた。

 

 私は、発動したらどんな能力なのだろう。気になる。でも、死にかけなければならないのか。その際に死んでしまう可能性もある。

 というか、サメーラさんもダグレストさんも特異魔法を使えるということは死にかけた事があるのか。いつだろう。


「2人ともおはよぉ〜。早いねぇ。少年少女で何話してたのぉ?気になるなぁ…。恋バナぁ?」


 サメーラさんがあくびをしながら外に出てきた。"恋バナ"という単語を久しぶりに聞いた。私は少し動揺したが、ゼグレ君はピクリともしなかった。


「あ、サメーラさん。おはようございます。」


「おはようございます、サメーラさん。」


 私に続いてゼグレ君が言った。


「特異魔法について話してたんです。私はまだ無いんですけど。」


「ああ、特異魔法ねぇ。たしかに取得は難しいねぇ。死にかけなきゃいけなけないなんて。ホント面倒だよねぇ。」


 面倒とかそういう部類なのだろうか。でも取得はほぼ運で決まると言っても過言ではないだろう。死にかけの状態に陥った状態で初めて発動し、それを駆使して敵から逃走、もしくは倒さなければならない。

 

 私にそんなことが出来るかと言われれば、出来るはずがない。私に機転のきく頭は無いし、死に追い詰められながらも必死に抵抗する精神力も無さそうだ。


 まあ、今考えることでもないか。


 そういえば、サメーラさんはいつ使えるようになったのだろう。気になって聞こうとした瞬間、家の中から声がした。


「お、お前ら全員起きてんのか。明日にむけて作戦会議、いやその前に朝飯だな。食おうぜー。」


 ダグレストさんが窓から顔を出して言った。今さっき起きたのだろう。髪がボサボサだ。


 私達3人は家の中に戻り、4人で朝食をたべた。


 少しして作戦会議が始まった。


「まず、相手の能力についてだ。サメーラ、見たことだけでいい。詳しく説明してくれ。」


「うん、まず右手をドリル形に変形できて、回転もする。木は容易く貫通できてたねぇ。射程も結構あるみたい。上空にいても狙ってきたからぁ。


 そして、再生能力もあるねぇ。カムロが引きちぎった右腕、すぐに再生してた。右腕自体は、紐みたいで、何本も束になった状態だねぇ。


 ワタシが確認したのはこれくらいかなぁ。すぐに逃げちゃったからぁ。」


 未知な部分が多いほど、怖い。初見であいつの攻撃を防ぐことができるだろうか。私は基本的に後ろで見張りと援護だが、鬱陶しく思われて先に狙われるかもしれない。

 木を貫通するほどだ。急所じゃなくても致命傷になりうる。


「ほう、報告通り、随分おもしれぇ体してんな。…そうか、カムロ、死んだのか。チッ…。」


 ダグレストさんとカムロに関係があったとは知らなかった。ということは、カムロは10年以上もサメーラさんと共にいたのか。だから、あんなに親しくしていたのか。

 そんな彼の生首を見せつけられたら、悔しさは尋常じゃないだろう。


 「よし、作戦をざっくりと考えてみた。まず…」


 ダグレストさんから、作戦の初期案が提示された。

 

 





 




 

 

地味な回でしたが、物語の重要な設定もありましたね。コメント、評価等よろしくお願いします( ◠‿◠ )

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