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第六話 魔法の練習

「ん、お散歩してたのぉ?なんか面白いのあったぁ?


「はい、ちょっとそこらへんを。ここ、凄くいいですね。生き物たくさんいて、明るくて。」


「でしょ?気に入ってるんだぁ。街の方が便利ではあるけど、居心地はここが一番だなぁ。」


 2人で家に入る。サメーラさんは一枚の紙を持っていた。

 聞くと、国からのだそうだ。どうやら、ドラガドールの採取に失敗したため報酬はないらしい。黒い魔物は、冒険者達と協力してなるべく早く討伐、もしくは捕獲してほしいとのこと。同盟国の冒険者達も集めれば黒い魔物を討伐できるほどの実力を持つパーティは作れると判断されていた。黒い魔物は見た目のイメージで「ダードナイト」と名称付けられた。ちょっとダサいと思う。


「サメーラさんて、研究者ですよね。討伐依頼ってふつう冒険者にするものじゃないですか?」


「まあワタシ結構強いから頼られてるんだよねぇ。でも討伐依頼は滅多に行かない。古き友人にいつも行ってもらってるから。多分ワタシより強いかなぁ。」


「古き友人?それもサメーラさんより強いって、どんな人なんですか?」


「学生時代の級友だよ。ちょっと癖強いけどいい人だよ。面倒見いいし。まあすぐに会うことになると思うから、その時また話すよ。それよりご飯たべよぉ。」


 学生時代のサメーラさん、どんなのなんだろう。気になる。

 私とサメーラさんは食卓につき、サメーラさんが買ってきてくれたナポリタンのような食べ物を一緒に食べた。サメーラさんが口元にソースをつけながら話した。


「アカネちゃんてさぁ、魔法は使えないんだよねぇ。練習してみなぁい?すぐにできると思うよぉ。」


 私は魔法という言葉にとても興奮した。そうだ。そもそもこれがやりたくて異世界に憧れていたのだ。魔法がどのような感覚なのかは少しも知らないが、猛練習しよう。しかし、転生者でも使えるのだろうか。


「魔法、私も使えますかね…。魔力とかそういうの感じたことないんですけど。」


「使える使える。感じないのはアカネちゃんに魔力がほとんどないからだよぉ。最初はちょっとキツイかもだけど、慣れればグングン伸びるよぉ。」


「じゃあ、やってみます。」


 それから魔法の練習が始まった。魔法を使うにはまず魔力がいる。筋力とか視力とかと同じように、生物なら最初から持っているチカラだそうだ。

 肝心の魔力の鍛え方だが、元々この世界の住民なら身体の成長と共にある程度勝手に強くなるのだが、転生者の私には"ほとんど"魔力が無かった。("まったく"ではないのが少し不思議だが。)だからまず魔力そのものを感じる必要がある。そこで、サメーラさんが持っていた魔力増幅のポーションを幾つかもらった。

 これを飲めば魔力がほとんどない私でも魔力を感じられる。

 飲むと、本当に魔力を感じた。身体の内側からオーラのようなものが湧き上がってくる。何とも言い表し難いが、感情の上下によって起こる体温の変化に似た感覚というのが最適だろうか。とりあえずなんか凄かった。

 

 まずは火を発生させる練習をした。家のすぐ前で、水の入ったバケツを用意して一日中やっていた。モノを発生させるには、それを強くてイメージする必要がある。火の光、熱、色、音、動き等を強く長く念じていると、小さいが掌の上に火がついた。マッチの方がまだ大きいんじゃないかというほど小さかったが、私にはその火がとても眩しく美しく見えた。

 わあっ!と気を散らすと火はポッと姿を消した。


「わぁ、もう出来たのぉ。凄いねぇ。」


 家の中で見守ってくれていたサメーラさんが小さく拍手しながら出てきた。もう夜だ。わたしはいつの間にか大量の汗をかいていて、息切れもしてた。


「はぁ、はい…!小さいですけど、何とか…。」


笑いながら応えた。汗が口の中に入ってきてしょっぱい。目にも入ってきそうだったので服で顔を拭いた。


「ははは、すごい汗。よく頑張ったねぇ。ご飯作ったから、食べよぉ。いや、先にお風呂入っちゃおっかぁ。沸かすからちょっと休んでてぇ〜。」


「あ、はい…。ありがとうございます…。」


 私はその場で座りこんだ。満天の星空が綺麗だ。やった。達成感などいつぶりだろうか。こんなにも気持ちがいいものなのか。休んでいるとサメーラさんが帰ってきた。

 私はお風呂に入り汗を流して、食卓についた。


「一日で使えるなんて凄いねぇ。今後も続ければすぐ自由自在に使えるようになるよぉ。今日はもうしっかり休んで、明日も頑張ろうねぇ。」


「あ、ありがとうござます。あの、魔法はなんとか使えるようになれそうなんですけど、魔力自体はどうやって増やせばいいんですか?」


「まあ魔法を使ってると自然に増えてくるけど、直接の増やしたいなら、そうだねぇ。何か練習法…。

 アカネちゃん、ポーション飲んだら魔力を感じるけど、効果が切れたらなにも感じなくなっちゃうでしょ。だから効果が切れても魔力を感じれるように意識してみるといいんじゃないかなぁ。そうやって気合い入れてると魔力増えてくると思うよ。

 魔力って結構、精神状態と深く関係するから。」


「じゃあ今度やってみます。ありがとうございます。」


 その日はとてもぐっすり寝た。夢は何も見なかったし、布団に入ってからの記憶もない。布団はサメーラさんが用意してくれた。部屋には布団以外何もない。 自分の好きなようにコーディネートしていいとのことだ。しかし私にはオシャレのセンスが無いのでおそらくシンプルな部屋になるだろう。


 朝だ。スッキリと目が覚めた。顔を洗って朝食を食べ、昨日と同じように火を発生させる練習をした。


 魔法で発生させるモノは、自然物が発生させやすいらしい。例えば火、水、草、石ころなど。魔法で人工物を生成するのは至難の技だそうだ。

 自然物でも、狙った通りだったり複雑だったりする形を作るのは難しい。


 3回目で火を発生させることに成功した。感覚はまだ何となくだか掴めてきた気がする。それも昨日より大きい。

 この日はずっと火を作っていた。最終的に自分の頭と同じ大きさくらいまで大きくすることができた。コツを掴むとすぐにできるようになった。


 翌日は水を発生させる練習をした。火と同様に強くイメージする。音、感触、温度、味、流れる姿。

 水は初日でもうダボダボ発生させることができた。火よりも身近にあるのでイメージしやすかったのかもしれない。

 その翌日は草。そのまた翌日は石。そしたらまた火の復習……。と、猛練習を2週間ほど続けた。


 結果、火は自分の1.5倍ほどの大きさ、水はちょっとした小池が作れる程度、草は一本の木をなんとか作れ、石は石というより岩まで作ることができるようになった。

 魔力もポーションがなくても自分だけで感じれる。


「わぁ、本当にすごいねぇ。もう一人前だぁ。」


 サメーラさんが初日からと同じように拍手をして出てきた。

 

「えへへ、サメーラさんのアドバイスのおかげです。ありがとうございます。」


「アカネちゃん、今度、2人で何かしらの討伐依頼を受けてみない?ワタシ1人じゃ滅多にやらないけど、アカネちゃんの実践訓練みたいな感じで、どうかな?」


「討伐依頼…、大丈夫ですかね、私。戦った事ないですし、ちょっと怖いというか…。」


「大丈夫大丈夫。ワタシがいるし、弱い魔物の依頼もたくさんあるからそういうのにしよぉ。」


「そっか、サメーラさんもいるのか。じゃあ、やりたいです!」


「やったぁ!じゃあ明日依頼見に行ってみよっか!楽しみだなぁ…。

 あ、そうそう、肩にイモムシついてるよ?」


「へぇっっ……!?いやぁぁぁぁ!!!」


 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ある居酒屋にて。


「なあ、ゼグレ。サメーラが言ってたあの依頼、どうする?行くか?」


 長身で、伯爵のような格好の男が言った。


「んー。まだ不確定要素が多すぎるので、自分としては進んで行きたいとまでは思いませんが、誰かがやらなければなりませんからね。

 ダグレストさんはどう思います?」


 そこらへんにいる剣士のような格好をした少年が言った。


「興味はあるんだがなあ。黒い甲冑のような姿。右手がドリル。全く、相変わらずあそこは何でもありだぜ。」


 男は酒を飲みながら笑う。腰につけた拳銃を手に取り、銃口を覗く。


「こいつの試し撃ち相手になってもらうのも悪くねえと思ってんだ。他の魔物じゃあ、こいつの実力を測りきれねえ。うん、よし、行ってみるか。お前も来るだろ?怖えならついてこなくてもいいが。」


「当然、行きます。俺がついていかなかったことないでしょう。」


「ハハっ!まあそうだな。よし、とりあえずサメーラんとこ行くか。何年ぶりだかなあ、会うのは。」


 男と少年は立ち上がり、居酒屋を後にした。


 



 

 

 

新キャラ出てきましたね。コメント、評価等よろしくお願いします( ◠‿◠ )

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