表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

第二話 ハロー異世界

 泥の中を沈んでいるようだ。何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。あるのは微かな意識だけ。これからどこへ行くのだろう。この意識も無くなって、無へと還るのだろうか。気が楽で心地がいい。少し眠たくなってきた。自分の心の声も聞こえなくなってくる。



 夜、ある森の中、それは何の前触れもなく現れた。直径1m程の黒い渦。不気味な音を奏でながら、円を地面と水平にして2m程浮いている。それは1人の少女を吐き出した。少女は眠っている。服は着ておらず、左胸には黒いヒビの様な模様がある。

 黒い渦は円を閉じ消滅した。森には誰もおらず、少女は起きずに寝息を吐いている。そして、朝がくる。


 

 眩しい。天国なのだろうか。いや、私が天国に行けるほどの善行を積んでいたとは思えない。それに下が硬い。天国なら柔らかい雲とかだろう。背中が少し痛い。なんかスースーするし。


 そっと目を開けた。ん、何ここ。上半身を起こす。見えるのは、木、草、土、見たことのない気持ち悪い形をした小さい虫。などなど。森?どうして森なのだ。天国でも地獄でも無でもないのか。森なのか。森か。へぇ森。


 これって、異世界転生ってやつ?転生というより転移だろうか。死ねたのか。よかった。自分の顔を触る。しっかりと感触がある。夢なんかじゃない。

 私は、解放されたのだ。あの世界から。


 胸元で花火が咲いたような喜びの感覚が舞い上がってきた。身体が少し熱い。息もしやすい。いつも半分閉じていた目は全開で、背筋は伸びきっていた。


「やった。もう、行かなくていいんだ。学校。やった。やった…!」


 大きな声というわけではなかったが、叫ぶたびに喜びが溢れてくる。やった。もうつまらない日々を不安だけ抱えて生きていかなくていい。好きなようにすればいいのだ。何もかも。


 足のそばにいた虫を見る。背中に棘が生えていて、脚が多い。緑色でブニブニしてる。胴体は柔らかそうなのに脚は硬そうで、歪。こんな生物、流石にいなかっただろう。あっちには。


 あ、てか私全裸だ。

 それに気づいて少し冷静さを取り戻した。解放されたはいいものの、どこへ行けばいいのだろうか。行っても全裸だし。どこかに人はいないのだろうか。転生してすぐ死ぬのなんて嫌だ。この世界なら生きたい。

 とりあえず立った。


よし、まずは高いところから辺りを見回してみよう。登りやすそうな木を探して近寄った。木登りなんかろくにしたことなかったが、太めの枝がたくさん生えているので比較的登りやすいだろう。最も低い位置にある、私の頭と同じ高さ枝を掴んだ。足を幹につけて登っていく。

 1人なのに全裸というのがヤケに恥ずかしかった。これじゃまるで猿や原始人みたいだ。途中途中足を滑らせたが、なんとか上まで登ることができた。横向きの枝に座っていた。


街を見つけるつもりが、しばらく朝日に目を奪われたいた。こんなに綺麗だったのか。少し眩しすぎな気もするが、それくらいがちょうどよかった。しかし、街などは近くにありそうにない。


 左胸がズキンと響く。あれ、なんか痛い。見てみると黒くなっている。


「あれ、何これ。ヒビ入ってるみたい。いてっ!」


 痛くて両手を胸にあててしまった。木の枝から手を離し、ただ座っているだけ。またズキンと響く。


「いたっ!」


 その時、胸を庇うようにして前のめりになり、バランスを崩した。枝からずり落ちる。


「あっ、やばっっっ、!」


 言い終わる前には落下を開始していた。

 まずい、死ぬ。ん、待てこの高さなら…いや、ダメだ。多分死ぬ。運良く生き残っても骨折はしているだろうし、それでは移動すらできない。そんな、、せっかく願いが叶ったのに、、、

 力強く目を閉じた。ただ祈った。また胸が響く。

………。あれ、地面に到着しない。風も感じない。不思議に思い、目を開くと、


「わあ、危なかったねぇ君。大丈夫?怪我ない?」


 包み込まれるような優しく柔らかい声だった。白髪のお姉さんが、こちらをのぞいている。地面とはあと1mくらいだった。私の身体は淡い青色の光に包まれていた。私が固まっているとその人は微笑みながら私を立たせてくれた。

 

「え、あ、ええと、ありがとう、ございます…。」


「そっか!よかったよかった!何してたの?木登り?全裸で木登りかあ。面白いねぇ。」


私は顔を赤らめて即座に恥部を隠した。

 

「え、いや違うんです。あの、私、いきなりここで倒れてて、人いないかなぁって思って、それで」


「へぇ、そうなんだぁ。大変だったねえ。もう大丈夫だよ。はい、これ貸してあげる。あ、わたしサメーラ。君は?」

 

 サメーラさんは羽織っていた大きなマントを貸してくれた。優しくて、大人っぽい香りがする。

 サメーラさんは長くて綺麗な白髪で、ずっと微笑んでいた。身長は170cmくらいと女性にしては高めだった。服は魔女みたい。というか魔女なのだろう。右手に大きな杖を持っている。

 

「あ、ありがとうございます。私、アカネっていいます。あの、どうしてこんな所に?」

 マントを羽織りながら言った。あっちの世界の名前をこっちでも使うのかと言ってしまった後に思ったが、咄嗟にしっくりくる名前を思いつくことなど出来なかった。

 

「ああ、わたし生物の研究をしてるんだ。この地方はまだまだ発見されていない新種の生物がたくさんいるの。だから。君、ついてきなよ。拠点があるんだ。公共のものだし狭いけど、あんまり人来ないし。」


「あ、はい。行きます。」

大きな安心に包まれた。私は、これから始まるのだ。



 


 

 

 

 

 

自分も行きたいなぁ異世界(>人<;)。コメント、評価等よろしくお願いします( ◠‿◠ )。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ