虹色の今日を
わたしは不死身。不老不死。
老けない、死なない。
『最強』って思った?
そんなことない。
好きな人達が、好きな景色が、どんどんわたしの前から消えていく。
もうそんなことを何百回も繰り返した時、わたしは決めた。
死のう、と。
建物の屋上から身を投げた、体にナイフを突き刺した、毒薬を飲んだ……。
他にも色々試したわ。でも駄目なの。
死ねないの。
痛みがわたしの中を巡るだけで、わたしは死ななかった。
絶望した。
この体を恨んだわ。
でもある日、虹色の空を見つけたの。
暗闇に浮かぶそれは、とても綺麗だった。
初めて見たわ。
感動した。
美しくて美しくて、わたしは思わず涙を流した。
そして長いこと、じっとそれを見つめていたの。
そしたらそれがとても優しくて、強くて。わたしは抱かれているようだった。
星を見つけたの。
あの日、見た星と同じ星。
変わらないものもあるのね。
そう思った。
長い夜だった。夜が明けて日が差して、真っ白な光にわたしは包まれた。
気付いたの。
わたし、死にたくなかった。
ずっと、死ねなかったんじゃない。
死にたくなかったんだ。
遠い昔誰かからもらった贈り物、たった今世界にもらった贈り物……。その全てがわたしの胸に詰まっている。
わたしはこれを抱いていたい。
世界がわたし以外なくなっても、ずっと。
そして今日わたしがもらった贈り物を、また誰かに渡したい。
あの日、大切な人達からもらったように。
本当は、そう。
見たいことも、やりたいことも、まだまだたくさん溢れていた。
わたしが世界を諦めるにはまだ早かった。
いつか、朝日が昇らなくなる日が来るのだろうか。
いつか、やりたいことが一つもなくなる日が来るのだろうか。
そうなったら、わたしは死ぬのだろうか。
分からない。
分からないことだらけだ。
でももし、いつか死ぬ日が来るのなら、その日笑ってわたしはかえりたい。
読んでくださりありがとうございます。
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