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ピボット高校アーカイ部  作者: 大橋むつお
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32『再生リボンからいきなりの勝負』

ピボット高校アーカイ部     


32『再生リボンからいきなりの勝負』 





「こちらに、青山さんのお店でよろしいでしょうか?」



 帳場の女の子が「はい、姓は青山、屋号は肥前屋ですが」と笑顔を向けてくる。


「キャ、かわいい……」


 揃って横に立っている麗二郎、いや麗が恥ずかしくなるほどときめいて、巾着持ったままの手を口元に持っていく。


 カミングアウトしたんじゃねえのか! つっこみたいけど我慢。


「こちらに、おリボン置いてらっしゃるって伺ってきたんですけど」


「あら、よくご存じですね、リボンはこちらです。あまり出ないもんだから、お父さんが奥に引っ込めちゃって……こっちに……」


 左手で袂を押え、身を乗り出してリボンが入った箱に腕を伸ばす。


 うなじと右手の肘から先が露わになる。その色の白さと容の良さに、僕もドキッとする。


 うなじも肘の裏側も、街でも学校でも普通に見てるんだけどね……お祖父ちゃんが言っていた『秘すれば華』という言葉が浮かぶ。


 いやいや、僕まで時めいてどうするんだ(^_^;)


「ご維新も二十五年、そうそう古着も売れないんで、いいところを採って、小間物が作れないかって、取りあえずリボンから初めてみたんです」


 籐籠の中には再生品と言われなければ分からない、きれいなリボンが一クラス分ほど並んでいる。


「左前の打合せとか帯で隠れるところとか、けっこう状態のいい生地が採れるんですよ。古着の売れ残りは、雑巾ぐらいにしかならないんです。西洋じゃパッチワークなんてツギハギが伝統的だったりするんですけどね、日本人は好みません。それで、こんな風に」


「そうですね、古手を粗末に扱えば付喪神つくもがみが祟るって言いますものね」


「あら、女学生さんなのに、古風なことをご存知ね」


「貧乏旗本の裔ですからね、モノは大事にいたします」


「それは、よい心がけですね。わたしも同様ですよ、そして、古いものを新しく。明治を生きる古道具屋の心意気です」


 ポンと、小気味いい音をさせて帯を叩く。


 令和の時代なら中学生かというくらいに小柄な人だけど、言葉や表情が小気味よくって先輩と対等に会話ができている。


「過ぎたお洒落はひかえなくてはいけないんですけど、おリボンぐらいは……女学生の心意気!」


 ポン


 アハハハハ


 先輩も帯を叩いて調子が揃って、店の中に花が咲いたようになる。


 その明るさにつられたのか、数人のお客が店を覗き始め、奥から主人が出てきて対応を始める。


 こういうのも女子力って言うんだろうか、傍で見ているだけで楽しくなってくる。


―― 勝負に出る、お前たちもリボンを手にとれ ――


 え、勝負?


 任務の詳細を聞いていないので面食らう、でも、慣れている「これなんかもいいなあ」と呟いてオレンジ色のリボンを手に取る。麗もエンジ色を髪にかざしている。


「着物との釣り合いを見たいから、表で見比べていいかしら?」


「そうですね、お日様にあてると色合いがかわりますからね」


 四人でウキウキしながら通りに出て、髪にリボンをかざしてみる。


―― 脇に寄れ! ――


 先輩の命令は、いつも突然。反射的に看板の方に身を寄せ、先輩は逆に道の真ん中に近づく。


 ガラス戸を鏡にしてリボンの映り具合を見ている感じになる。




 ドン!




 通行人とぶつかって先輩が倒れ、通行人の大男がタタラを踏む。


「オウ、コレハ、スミマッセーン」


 大男が片言の日本語で謝りながら先輩に手を差し伸べる。


「いえ、わたしこそ、往来の真ん中で……」


 そこで、先輩と大男の目が合った。


 ドッキン


 アニメならエフェクト付きで心臓の音がしただろう。


 大男は、先輩に一目ぼれしてしまった。




―― チ、しまった! ――




 先輩の舌打ちが盛大に頭に響いて、僕らは緊急タイムリープした……。


 


☆彡 主な登場人物


田中 鋲       ピボット高校一年 アーカイ部

真中 螺子      ピボット高校三年 アーカイブ部部長

中井さん       ピボット高校一年 鋲のクラスメート

西郷 麗二郎or麗   ピボット高校一年三組 

田中 勲       鋲の祖父

田中 博       鋲の叔父 新聞社勤務

プッペの人たち    マスター  イルネ  ろって

一石 軍太      ドイツ名=ギュンター・アインシュタイン 精霊技師 


 

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