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ピボット高校アーカイ部  作者: 大橋むつお
15/32

15『螺子先輩の正体・2』

ピボット高校アーカイ部     


15『螺子先輩の正体・2』 





 大規模な通信障害が起こった。


 スマホが通じにくくなり、通販サイトや通販と繋がっている運送会社に甚大な影響があったらしい、一部には、GPSやら、救急車の手配まで影響がでたという話だけど、お祖父ちゃんとちがって、そういう方面に詳しくないボクには、よく分からない。


 仕事をサボって、うちで昼寝していた叔父がすっ飛んで行ったところを見ると、相当の大事件のようだ。


「大地震が起きて、鉄道や電気のインフラが停まってしまうのと同じ……それ以上かな」


 お茶を持っていくと、仕事の手を休めて、お祖父ちゃんが頭を掻いた。


 この仕草は、以前パソコンがウィルスにやられて仕事ができなくなった時以来だ。


「そんなに大変なことなの?」


「ああ、博のやつ、すっとんで行っただろう」


「あ、うん……」


 あの叔父の表情は、仕事サボって買いに行った馬券が大当たりした時以来だ。


 今どきの馬券はネットで買えるらしいけど、わざわざ競馬場まで出向いて馬券を買って観戦して、その結果を自分の父(お祖父ちゃん)に自慢しに来るのを、ちょっと微笑ましく思った。


「総務大臣が、重大事故だって臨時記者会見で言ってる」


 お祖父ちゃんがクリックすると、沈痛な面持ちで記者会見やってる総務大臣の動画が出てきた。


「ネットも、テレビも、こればっかりだな……」


「お祖父ちゃんの仕事に支障はないの?」


「うん、幸いな。いまやってるのは、あまり通信には関係ないからな……」


 もう一度クリックすると、お祖父ちゃんの作業画面が出てきた。



 え?



「今は、こんな下請けをやってるんだ」


 画面に現れたのは、女の子の3Dモデルだ。


 真っ直ぐに立って、両手を水平に伸ばしている。ダヴィンチだったかの人体図にこんなのがあった。


「ゲーム会社の下請けだ……」


 全身・頭・髪・胴体・胸・手・足などの項目に分かれていて、クリックしていくとさらに細かい項目。たとえば、首なら、目・瞳・まつ毛・鼻・口・耳・額・頬・顎などの細かい設定が出来る。


「ええと……」


「そうだ、シミレーション系の……まあ、エロゲだな」


「う、うん……」


 こういうのは苦手だ。


「慣れれば思い通りの女性が作れるが、ちょっとマニアックで難しい」


「だろうね(^_^;)」


「ちょっと、ゴーグルを付けてくれ」


「え、ボクが?」


「うん、まだまだ試作なんだがな……」


「うん……あ、VRなんだ」


 目の前に、たったいまモニターで見た3Dモデルがリアルに現れた。


「それで、女の子をイメージしてくれるかい」


「ええと、入力は……」


「思い浮かべるだけでいい、CPがイメージを視覚化してくれる」


「言葉にしなくてもいいの?」


「うん、そこがミソなんだ。文字とか言葉にするのは、抵抗を感じる男もいるだろう。むろん、そういう入力もできるんだけどな、ほら……」


 VRの中に、すごい入力画面が現れた。パッと出ているだけで50くらい、スクロールすると、まだまだ続いていて、項目を選ぶと、さらにそれが数十の項目に分岐する。


「ああ……これじゃ、やる前に気持ちが萎えてしまうね」


「だろう……だから、思い浮かべるだけでエディットできるようにやってるんだ……ちょっと、イメージしてくれないか」


「う、うん……」


 入力画面が消えて、左上に白いドットが現れた。


「そのドットがグリーンになったら完了だ」


「えと……」


 思い始めると、ドットが心臓のようにドキドキしながら色を変えていく。


 淡いグリーンになったのでモデルに目を移すんだけど、モデルはビリビリ振動するだけで、なかなか姿を変えない。


「処理能力が追い付かないんだ……フリーズしてるわけじゃないから、そのうち出てくるだろう」


「うん、すぐには商品化はできないみたいだね(#^_^#)」


 ホッとしたような、ちょっと残念なような気持ちで、お祖父ちゃんの部屋を出る。



 あくる日の部活は休んでしまった。



 いちおう部室には足を向けたんだけど、ドアが開かなかった。


 部室の中には気配はある、たぶん先輩はいるような気がする。


 だけど、気後れしてしまって、もう一度ノブを回してみようとか、ノックしてみようかという気にはならなかった。


―― 用事かなにかで、先輩遅れてるんだ。ひょっとしたら休みかも……あ、あとで、もう一度来よう ――


 そう正当化して、部室の旧校舎に背を向けた。



「あら、田中くん」



 昇降口の前まで来ると、帰り支度した中井さんに出会った。


「いま帰り?」


「え、あ、うん」


「いっしょに帰ろうか?」


「あ、うん」


 本当は図書室にでも行って、もういちど部室に寄ってみようかと思ったけど、あっさりと中井さんの誘いにのってしまった。


 保健室に連れて行った時は青い顔をしていたし、階段の下で話したのは、ほんの数秒だったし、こんな至近距離で中井さんと居るのは初めてだ。


 学校に居る時の三倍くらい表情が豊かだ。ボクの鈍い反応にも抑制の利いたツッコミをしてくれて、駅前までの十分ほどは、ちょっと楽しかった。


 電車で帰る中井さんを改札まで……と思わないではなかったけど、ちょっとためらわれてロータリーで別れた。



「鋲、できてるぞ」


 家に帰るとお祖父ちゃんが声を掛けてくる。


「え?」


「ほら、昨日の」


「あ、ああ」


 ちょっとだけ時めいて、モニターを覗き込む。


「あ……」


「なかなかいい感性をしてるじゃないか」


 お祖父ちゃんが褒めてくれた、その3Dモデルは、白いワンピースを着た螺子先輩の姿だった。




☆彡 主な登場人物


田中たなか びょう        ピボット高校一年 アーカイ部

真中まなか 螺子らこ        ピボット高校三年 アーカイブ部部長

中井さん                 ピボット高校一年 鋲のクラスメート

田中たなか いさお        鋲の祖父

田中たなか ひろし        鋲の叔父 新聞社勤務


 

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