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ピボット高校アーカイ部  作者: 大橋むつお
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13『たまにはこんな部活も でも事故には注意』

ピボット高校アーカイ部     


13『たまにはこんな部活も でも事故には注意』 





 部活以外で先輩に会ったことが無い。



 一年と三年では校舎が違う。


 昇降口は全学年共通だけど、三年生のロッカーは廊下を挟んだ向こう側だし、そもそも登校時間が違うのだから、意識的に待ち伏せでもしない限り会うことは無い。


「体の中を流れる赤血球みたいなもんだな」


 ポッペの新製品だというミニジャムパンを食べながら先輩が答える。


「赤血球ですか?」


 千切ったジャムパンを手に持て余したまま聞く。


「ああ、わたしと鋲は、学校という体を巡る赤血球だ。だが行き先が違う。わたしは脳みそで、鋲はお尻の方だ。だから出くわすのは、一巡して心臓に戻った時ぐらいだ。心臓にあたるのが、この旧校舎の部室だな」


「ああ、部室が心臓というのは、そうかもしれませんねぇ……」


 人づきあいが苦手な僕は、部活以外では、ちょっとドンヨリしている。


「そうだろ、部活で気持ちを洗い直して、お互い日々の学校生活を乗り越えてるんだ」


「アハハ……」


 おたがい赤血球というのはいいんだけど、どうして先輩が脳みそで、僕がお尻なんだ……とは聞かない。


「人間の体は37兆個の細胞で出来ていて、赤血球もその細胞の一つだ」


「あ、そうですね。アニメで、そういうのありましたよね」


 僕は、あのアニメの擬人化された赤血球が好きだ。


「いや、わたしは赤血球というより、血球を育てて、外敵もやっつけるマクロファージかな?」


「ああ、あの保育所の先生って感じはいいですね」


「そうだぞ、その37兆分の1の確率で出会っているんだから、この縁は大事にしなければな……」


「そ、そうですね」


 ガブリ


 勢いよく二つ目のジャムパンに齧りつく先輩。


「ウ……」


 ジャムがはみ出して、先輩の口の横についてしまう。


 ちょっと無邪気な吸血鬼という感じになった。


「ヒ、ヒッヒユ、ヒッヒュ」


「ああ、ティッシュですね」


 ヒッヒュでティッシュが分かるんだから、僕も、だいぶ先輩慣れしてきたようだ。


「あ、もっらいない……」


 先輩は、ティッシュを受け取る前に、指でジャムを拭って、拭った指を舐める。


 あ……なんか、反則……。


「ポッペのジャムはドイツから輸入したもので、値段の2/3はジャム代なんだぞ。もったいないだろ」


「あ、あははは」


 先輩は、見かけと言動が、まるで違う。


 身のこなしが奔放で『さよなら三角』を『また来て四角』に直す時や、桃太郎の時など、ちょっと口では言えないようなところまで見えたりする。


 さっきも言ったけど、そんな先輩を部活以外で目にすることはほとんどない。


 その日は、けっきょく、魔法陣に足を踏み入れることも無く、先輩と喋っているだけで終わってしまった。


 

 ちなみに、僕は保健委員をやっている。



 保健委員はなり手が無い。


 高校生にもなると分かっている。保健委員と云うのは一学期が大変なんだ。


 発育測定では、記録を取ったり書類を整理したり、けっこう仕事が多い。検尿を集めて保健室に持っていくのも一学期。指定のビニール袋に回収するんだから汚いということはないんだけど。クラス全員のがリアルに入っているわけだから、ちょっとね。


 他にも、授業中体調不良の子が出たら、保健室まで付き添って行かなければならない。


 その日は、女子の保健委員が休みなのに、女子で体調不良の者が出た。


「保健委員、付いていってやれ」


 先生に言われて、仕方なくついて行く。肩を貸すのも大げさだし、まあ、無事に保健室に着くのを見届けて、保健室の先生に事情を説明する。


「ちょっと、廊下に出てて」


「はい」


 まあ、女生徒が体調不良で来たんだから、廊下に出されるよな。


 廊下の窓を開けると、すぐ目の前がプールの壁だということに気付いた。


 開けると、同時に水の音やら歓声が聞こえてくる。


 どうやら、三年女子の水泳の時間のようだ。


 なんだか、バツが悪くて、保健室前の掲示物に目を移す。


 いろいろ、健康に対する注意とかの掲示物があるんだけど、ろくに目に入ってこない。


 まあいい、こういう状況なら、バツが悪くて当たり前。


 視力検査表が貼ってあるので、片目を隠して一人でやってみる。


 あ、近すぎる。


 目いっぱい下がって、背中を向けたまま、窓から上半身を出すようにして検査表を見つめる。



 ドン! キャー!



 なにかぶつかるような音と悲鳴がして振り返る。



 あ……


 

 なんと、プールの外壁のパネルが外側に外れてしまっている。


 ビックリして、外を見てる三年女子たち。


 その視線を追うと、眼下に水着のお尻が……。


「アイタタ……」


 スィミングキャップも外れてしまって、髪を振り乱して股の間から覗いている顔は、見慣れた先輩!


「す、すみません(;'∀')!」


 悪いはずもないんだけど、ペコリと謝ってしまうと、大急ぎで窓を閉める。


 あ、でも助けなくっちゃ!


 思って振り返ると、すでに体育の先生が救助を始めている。


 僕は、窓の下の壁に背中を預けたまましゃがみ込む。


 先輩の白いお尻がフラッシュバックする。


 逃げ出したいんだけど、逃げると、こっちが悪いみたいだし、だいいち、保健室からクラスの女子は、まだ出てきていないし。


 ……え?


 ちょっと違和感。


 フラッシュバックした右のお尻には、ちょっと目立つ傷跡があった。


 部活中、魔法陣の向こう、不可抗力で何度か目にしてしまったけど、先輩に、あんな傷跡あったか……?




☆彡 主な登場人物


田中たなか びょう        ピボット高校一年 アーカイ部

真中まなか 螺子らこ        ピボット高校三年 アーカイブ部部長

田中たなか いさお        鋲の祖父

田中たなか ひろし        鋲の叔父 新聞社勤務


 


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