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ピボット高校アーカイ部  作者: 大橋むつお
10/32

10『ピカピカの看板』

ピボット高校アーカイ部     


10『ピカピカの看板』 





 あ……



 一瞬目をつぶってしまった。


 角を曲がって校門が見えてくると、朝日が学校の看板に反射して眩しかった。


 入学して一か月がたったけど、こんなに眩しく感じたのは初めてだ。 


 朝日と看板の微妙な角度で目を刺すんだろう。五歩も進むと眩しくなくなるが、その刺激で、思わず校門を潜るまで、看板を見つめてしまった。




 PIVOT HIGH SCHOOL(ピボット高校)




 英語の横文字表記の下に2ポイントほど小さな日本語の校名がレリーフになっていて、朝日が反射しなくてもピカピカ。


 入学式の時は大きな『2022年 ピボット高校入学式』の立て看板の横で写真を撮った。


 門扉の横のレンガ塀に学校の看板があるのは分かってたけど、マジマジ見るのは初めてだ。


 英語の横文字は、古めかしい亀の子文字だ。


 今どき、こんな古い書体じゃ読めないだろう……まあ、書体を含めてのデザインなんだろうけど。ひょっとしたら著作権があるのかも……と思いつつ、一時間目は体育で、早く着替えて移動しなくちゃと思ったとたんに忘れてしまった。



「ちょと、看板を磨いていたんだ」



 部室に入ると、マネキンには、いつもの制服ではなくてジャージがかけられていた。そのジャージから、クレンザーのような匂いが漂っている。


「あ、先輩が磨いたんですか?」


 今朝の看板が浮かんできた。


「おお、気が付いたか(^▽^)」


 なんだか、すごく嬉しそうな顔になる。


 素の顔でも美人なんだけど、笑顔になると、ちょっと反則なくらいの可愛さが加わる。


「あ、でも、授業は出てたんですよね?」


「ああ、むろんだ。昨日一度磨いたんだけどな、なんだか足りない気がして、六時間目に、もう一度やったんだ」


「サボリですかぁ?」


「人聞きの悪いことを言うな、自習だったんだ」


 自習でも、終礼はあったんだろうけど、深くは追及しない。


「でも、なんで先輩が看板磨くんですか?」


 いつものようにお茶を淹れながら背中で聞く。ひょっとして、なにか悪さをして、その罰にやらされていた?


「愛校精神だ」


 青信号で横断歩道をを渡りました的に当たり前の答えが返ってきた。でも、愛校精神で看板を磨くというのは、青信号の上に、手を挙げて渡りましたというぐらいに珍しくて、わざとらしい。


 でも、指摘すると、きっと顔を赤くしてワタワタしそうなので追及はしない。


「お、今日はケーキですか!」


 お茶を飲むときには、なにかしらお菓子が載ってるテーブルに、今日はコンビニのそれよりは二回りも大きなショートケーキが載っている。


「ひょっとして、先輩のお手製?」


「バカ言うな、自慢じゃないが、そういう乙女チックなことは苦手だ」


 お手製と思ったのは、ちょっと大振りなことと、作りがザックリしていたからだ。


「駅前のポッペってパン屋がケーキも作ってるんだ。まあ、食え」


「いただきます…………おお!」


 ちょっとビックリした。どうにも遠慮のない甘さなのだ。


 今日は体育もあったし、お昼を食べたとはいえ、高校生が放課後にいただくには、ちょうどの量と甘さだ。


「ハハハ、男が美味そうに食べる姿はいいもんだな」


「看板見て、改めて思ったんですけど、なんで英語表記の方が日本語よりも大きいんですか?」


「英語じゃないぞ、スペルは同じだがドイツ語だ」


「ドイツ語?」


「ああ、ピボッ ハイスクールだ」


「え?」


「英語では、ピボット ハイスクール。微妙に違う。だから亀の子文字で書いてある」


 あ、そうか、あの書体はドイツって感じだ。


「この学校は、百年以上前にドイツ人が作ったんだ。ホームページに書いてあるだろうが」


「あ、えと……」


 あんまり読んでいない。二校落ちた後、ここしかないから入ったんで……笑ってごまかす。


「PIVOTというのは、日本語で要という意味だ」


「ああ、要市の要」


「昔は、要中学とか要女学校とかがあったからな、差別化の意味も込めてドイツ読みにしたんだ」


「ああ、そうだったんですか」


 納得はしたけど、それほど感心はしない。街の名前が要市かなめしだ。


 僕の覚めた反応に興ざめしたのか、先輩は、この可愛い口がここまでいくかというくらいの大口でケーキにかぶりつきながらパソコンを操作した。


「よし、今日の部活は、ここだ!」


 思い至った先輩は、口の端にベッチョリとクリームを付けて、いかにも「これから悪戯をやるぞ!」というわんぱく坊主の顔になっていた。




☆彡 主な登場人物


田中 たなかびょう        ピボット高校一年 アーカイ部

真中 螺子まなからこ        ピボット高校三年 アーカイブ部部長


 

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