表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

8話

ハードディスクは砕けない

 メトシェラの風光明媚な町並みからやや奥まったところに、こぢんまりとした喫茶店があった。

「ラザロさんが言っていた建物は、ここみたい」

 マリアが地図を見ながら言った。

「よし、堂々と行くぞ」

「うん」

「ミルク出されても飲むなよ」

「あれはもう忘れて」

 俺とマリアはその喫茶店に突入した。

 中に入ると、見慣れない種族の面々と目が合った。

 入り口近くの席で武器を研いでいたのは、ずんぐりした体格でヒゲを蓄えている男性。これは見るからに、ドワーフだ。

 その奥のソファで横になって本を読んでいるのは、ほとんど子供のように見える種族、ホルピットだ。性別は不明。

 そして一番奥のカウンターでシェイカーを振るっているのは、

 ――一瞬、見とれてしまうほど美しい翼を背中に持った、ホークフォークの少女。

 彼女は少し俺たちに目をやると、ぷいとよそを向いてしまった。

「すみません。いま営業時間外なんですよね」

 ホルピットが言った。声を聞いてもなお性別不明。不明でいいか。

「いや、俺たちはお客じゃなくて」

 俺は居住まいを整えて言った。

「日本から来た、佐々木瀬人」

「同じくヒルキヤから来ました、マリア・マグダレナ」

「今日からみなさんにお世話になります」

「お世話になります」

 お辞儀をしたまま10秒くらい経過した。ちょっときつい。

「ああ、ラザロが言っていた――」

 ホルピットが納得したように言ったが、ホークフォークがそれを遮るように、

「あなたたち、なにか勘違いしているんじゃなくて?」

 俺たちは顔を上げた。

 ホークフォークの少女は美しい眉を曲げて、

「『お世話になります』っていいますけど、わたくしたちからお世話を得られると決めてかかっているようで不服だわ。

 ギブ・アンド・テイク。

 まずあなたたちにできることを示してからもう一度同じ言葉を聞きましょうか」

 ホルピットは仕方ないというふうに肩をすくめ、ドワーフは斧を研いでいる。

「えっと……、掃除します!」

「あ、あの、お皿洗いなら……」

 とりあえず下手に出よう。あとで見てろよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ