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7話

ハードディスクは砕けない

 俺はラザロを観察した。

 ラフな中でもきちんとした服装をしているし、言葉遣いは(今まであったエルフはみなそうだが)丁寧だ。

 確かに、先輩としては申し分ないが、

「……ラザロさん、失礼だけど、等級は?」

「僕は銀等級をもらっている」

 銀! 俺とマリアが鉄で、その上が銅で、さらに上だ。

「誘ってもらって嬉しいけど、俺たちを仲間にしてもラザロさんがわにメリットがないと思います」

 俺は冒険許可証を見せた。スタンプが一個押してあるだけだ。

「ああ、なるほど。

 等級が釣り合う中で経験のあるものが欲しいわけだ」

「はい。言っちゃあなんだけど、『冴えないベテラン』が理想です」

「はっはっは」

 ラザロは笑い声を上げた。

「『冴えないベテラン』を紹介することはできる。

 でもね、君はきっと失望するんじゃないかな。

 それならまだよくて、君が絶望するんじゃないかと恐れている」

「どういう意味ですか?」

「多くの冒険者たちは、もうすでに諦めてしまっているのだよ」

 ラザロは目線を酒場に走らせた。

「最初は、目的がある。たとえば『蘇りの儀式』だとか、白金等級になってやるとか、その他いろいろね。

 でもだんだん諦めていく。

 『冴えないベテラン』なら、ほぼ間違いなく諦めたがわだ。

 彼らの仲間になることは、勧めないね」

「ラザロさんは、諦めていない?」

「もちろんだ」

 ラザロは赤ワインをくいっと口に入れた。

「それに僕は、君たちと釣り合う等級の仲間を紹介することもできる。

 僕の目的は、少なくとも今は、冒険者どうしが助け合える団体、クランを運営することなんだ」

「クラン――?」

「そう。

 僕の仲間には、銅等級が2人、鉄等級が3人いる。

 鉄等級のうちの一人は、君たちと同じく、まったくの新人だ。

 仲間の間で教え合ったり、協力し合って、『諦めない冒険者』を育成していきたい。

 いや、いかなきゃダメなんだ――」

 ラザロはそこで、ハッとしたように口をつぐんだ。

「まあ、それは大きな目標の話。

 今の目標は君たちの勧誘だ」

「なんで俺たちなんですか? 新人なら、他にもたくさん――」

「まあ、タンカが気に入ったというのも嘘じゃないが、種族のバランスの問題だ。

 僕らのクランには、『人間族』が欠けている」

「種族ってそんなに意味あるんですか?」

「ああ――、そうか、そのへんも知らないといけないな。

 種族によって覚えられる魔法のレベルに差が出てくる。

 たとえば人間なら、『水属性』が得意とされているな」

「うーん……」

 これまでのところ、ラザロの話は願ってもないことだった。

 それに嘘を言っているふうでもない。

「でも俺だけじゃ決められないですね」

 マリアを揺すってみる。

 起きないので首すじをつついてみる。

「はひゃい!?」

 起きた。

「ラザロさん、今の話、もう1回する元気ありますか?」

「もちろんだよ」

 ラザロは微笑んだ。

「エルフは気が長いからね」


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