3話
ハードディスクは砕けない
講堂に集まっていた転生者たちは、三々五々散っていった。
俺もまた部屋を出て、今までいたのが城の中の会議室的なところだったと気づいたりする。
エルフ・ドワーフ・人間……と、デボラは並べていたが、本当にいろいろな種族がいる。
長身でとがり耳なのがエルフだと思うが、あとで確かめてみよう。
きょろきょろしながら城の正門まで来ると、不審な影がいた。
さっき質問していた体の弱い少女だ。桃色のお下げ髪。種族は人間……だと思う。
少女は少し前を歩く別の少女に、声をかけようとしてはまた城壁に隠れている。
「あのー」
「はひゃい!?」
「前の人に用事? 声かけづらいんだったら、かわりに行ってこようか?」
少女は真っ赤な顔になった。
「いえ、いいんです……。あの、大した用事ではないというか、わたし自身が大した人間ではないというか……」
種族が人間なのは確定(でいいのか?)。
「そんなに卑下しなくても」
「いえ、あの……。
仲間を探していたんです。わたし、体が弱くて、一人では冒険者やるの難しいかなって。
『冒険』みたいなことは仲間に行ってもらって、わたしはサポートみたいな……。
でも、わたしにできることなんてそんなに……」
「いい案だな。仲間になろうぜ」
「えっ」
「そうか。一人で銀等級? までのし上がらなければならないのかと思ってたけど、仲間を作ればいいんだよな。
名案、名案。
あ、俺はセト。お前はなんて名前?」
「名前はマリアですけど、いいんですか、わたしで。
何も役立たないと思いますけど」
「俺より早く仲間の必要性に気づいたし、頭が良いんだよ、きっと。
まあもしダメでも、仲間がいるってだけで違うじゃん?」
「そう、です、か?
ええと、よろしくおねがいします」
マリアはにへらと笑った。かわいい。
「へえ、君たち仲間になったんだ〜」
後ろからやってきたボサボサ頭の少年が、間延びした口調で言った。
「あっ、さっき質問してた人……」
「お前もなっとく? 人数多いほうがいいだろ。
こっちがマリアで、俺はセトな」
「僕は、シモン〜。よろしく〜」
少年は笑顔で答えた。
「でも、仲間になるっていうのは保留だな〜。
人数が多いほうが得なシステムか、分からないからね〜」
それはまあ確かに。
とりあえずの目標であるスタンプが、チームに均等に入るのか代表一人だけなのか、そのあたりのシステムはまだ分からない。
「それに、僕コミュ力ないからね〜。
それでいったら、セトくんも一人でやりたい派かと思ったけど」
「俺? そうでもないよ。こだわりはない。
ていうか、何も考えてないだけなんだけどな。
HDDを壊せればなんだっていい」
「えいちでぃーでぃー? は分からないけど、
目標があるのは強みだね〜。
まっ、お互い頑張ろうね〜」
シモンは手を振りながら去っていった。
「セトくん、さっきお城で、元の世界に帰るって話してたよね。
『HDD』を壊すっていうのが、セトくんの目標なんだね……」
「大目標はそれだな。
でも、まずは小目標をこなそうぜ。
腹減ってない? 俺は減った」
「……わたしも」
「じゃあ飯屋だ。
50マナで何日ぐらい食えるのか、調べとかないとな」