表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥府魔道クロニクル  作者: 星沢 享
3/3

冥府魔道の土産物

 「あんたを呼んだ理由は、簡単さ。

 あんたが、冥府魔道に一回足を踏み入れたおかげであんた自身、現世と冥府魔道の橋渡し的になっちまったということさ。」

 誠には、千鶴のこのひとことがわかるようでわからない。

 なんで死にかけた奴がそんな力を持ってしまうんだろうか。

 そもそも、死にかけた人間はみんなこんな風になるんだろうか。

 「安心しな。 

 あんたのは希も稀、超レア、スーパーレアだ。 

 大体、冥府魔道を簡単に行き来できたら、現世とのバランスはもう酷いものよ。」

 こちらの考えがわかったのだろうか、千鶴は答える。

 ただ、誠は一つ疑問があった。

 冥府魔道の道が開かれたらどうなるんだろう。

 何か困るのだろうか。

 いや、あの禍々しい空気が流れてくるのか。

 それは、困る。

 寒気がたまらない。

 「それだけではないぞ。」

 千鶴は、本当に自分の考えがわかるのだろうか。

 誠はまじまじと千鶴を見る。

 千鶴は、それを知ったか知らぬか話を続ける。

 「冥府魔道には、悪鬼羅刹がいる。

 お前達には鬼と言った方がわかりやすいかの?

 冥府魔道は生きるだけで辛い場所よ。

 そんなときに、現世という極楽があれば、そりゃあ行きたがるわな。」

 鬼も逃げる冥府魔道。

 誠は少し恐怖を感じた。

 「さっきも言ったけど、あんたは一度死にかけた。 

 なんの因果かわからないが、あんたは、冥府魔道の行き方を覚えたまま戻って来てしまったんだ。

 しかも、その力はあんたが、ドアを開けようとすると発揮されるみたいだね。

 すなわち、あんたがドアを開こうとすると、冥府魔道の扉が開いてしまうのさ。」

 千鶴がカステラに手を伸ばす。

 誠はカステラをさらに遠ざけて、

「それは大変ですね。」

と言う。

 「おい、誠とやら。

 わらわが、お前の開けた扉を影で閉めていたのを知らぬのか!

 冥府魔道の悪鬼羅刹は、現世の人間を不幸にする。 

 お主が知らぬとはいえ、わらわがそれをふせいでやったのだ!

 もちろん、わらわだけでは面倒く…、いやいや限界がある!

 だから、わらわがお主にその術を教えてやろうというのだ!」

 なるほど、千鶴の目的はそうだったのか。

 だから、自分を呼び、自分に何が起こっているか教えてくれたのだ。

 おそらく、いちいち冥府魔道の扉を塞ぐのが面倒くさいのも本音だろう。

 しかし、誠は不安があった。

 自分が無意識で開けたとはいえ、その悪鬼羅刹が現世に出てきて悪さをしていないのだろうか。

 そして、千鶴はその扉を塞ぐ術を教えてくれるというのだが、自分にそれが出来るのだろうか。

 不安でいっぱいの誠ではあるが、千鶴はそのことよりも何かを訴えたいようである。

 千鶴は何を自分にまだ言いたいことがあるのか?

 誠が、思わず前のめりになった時、千鶴はこう言った。

 「だから…、カステラを…、カステラをわらわに…。」

 誠はカステラを千鶴に渡した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ