7. 君といてこそ
「そうだ。手紙・・・・」
まだ手紙を開けていなかったことに気づく。
「ペリッ」
ご丁寧に宛名まで書いてある。
「・・・・これは・・」
誰?
全然知らない名前。
とりあえず内容を・・・・
優先輩へ
こんにちは。
1年の相木留美です。
名前を言われても誰かは分からないでしょうね。
実は、校内では先輩は実柚ちゃんと一緒にいるので伝えづらいので、
手紙で伝えようと思いました。
確かに、優先輩は実柚ちゃんの事が好きでしょう。
見ていればわかります。
でも、それなら尚の事、知らせなければいけません。
実柚ちゃんは、迷っています。
あなたと付き合う事を。
そして、揺らいでいます。
あなたを選ぶか、音無先輩を選ぶか・・・
詳しくは電話でお伝えします。
もし知りたければ、↓の番号へどうぞ。
は?
揺らいでる?
俺と音無を?
比べてる?
何が何だか分からない。
とりあえず冷静になろう。
そう思い、頭を冷やすべく俺は帰宅した。
「ボスッ!」
ベッドに座る。
つまり、手紙の内容は「実柚は音無に告られて、俺とどっちを選ぶか迷っている」と。
それを俺に言ってどうしろと・・・・
大体音無は実柚の友達狙いじゃ・・・・
そうだ。
コイツが嘘を言ってるに違いない。
そう思えたら楽なのに、手紙の内容がシミとなって心を染めていく。
・・・・俺は。
こんな奴より実柚を信じる。
実柚の言葉を。
実柚の想いを信じる。
こんな奴の手紙に壊されてたまるか。
翌日。
山羊座は厄日なのか?
また手紙が入っている。
俺に恨みがあるのか、実柚に恨みがあるのかは知らないが、
こうなると悪意がある事は決定だな。
今回は隠さないで、実柚に言おう。
「知らない奴から」って。
「優先輩?」
「ん?何?」
自分から言う勇気はなかった。
だから、隠すつもりは無いが、聞かれたら答えるようにしよう。
そう決めた。
「今日も私が水やりをしますから、先に帰っててください」
「いや、俺も行くよ」
「いいんです!」
実柚に押される。
でも、そんな事より・・・・・
実柚の明らかな拒絶の方が驚いた・・・・・
「すみません・・・・また・・・明日・・」
そう言って実柚は俺のそばから去って行った。
俺はと言えば・・・・
立ち尽くしていた。
「何でなんだろうな・・・・」
体の自由が利くようになった頃には、外は静かだった。
どれくらいの時間がたったのだろうか。
まだ、実柚はいるかもしれない。
俺は温室へ向かった。
自分のバカさとかって、何かあってから気づくんだ。
でも、「変わろう」って思えば思うほど、俺はどんどん変われなくなっていく。
できればこんな思いしたくないけど、それも仕方ない。
君と一緒に、花を咲かすと決めたのだから。
君といてこその俺なのだから。