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エノコログサ  作者: 創成
5/9

5. 枯れさせはしない

あれから2日・・・・・

「優先輩、この花枯れてますよ!?」

「マジか?・・・・ホントだ!」

実柚は部活にも慣れたようで、だいぶ馴染んできた。

「せっかく育てたのに・・・・」

花が咲いたときや実が生ったときに見せる表情は・・・・

「優先輩、この花どうしますか?」

「可愛い」と思えるほど無邪気だった。

「優先輩?」

下から顔を覗きこまれる。

「んっ!?なっ、何?」

「・・・・・もういいです。大事な話だったのにー・・・・・」

「ごめん!考え事してたんだって!」

「部の存続にかかわる話かもしれないのに・・・」

「マジで!?」

「くすっ!嘘ですよ!」

「あー、良かったー・・・」

「この花どうしたらいいですか?」

「ん〜、そうだなぁ・・・・・」

「私が持ち帰ってもいいですか?」

「ああ、いいよ。じゃあ今植木鉢持ってくるから待ってて」

「あっ!私が自分で・・・・」

「ポンッ」

「?なんですか・・・・?」

「後輩は先輩の言う事を聞いてりゃいーの。大体、女子に行かせるほど非常識じゃねーよ」

「・・・・・ハイ」

そう言って俺は鉢を取りに行った。


「はーっ!」

一人で叫ぶ。

周りから見たらただの変人だが、そんな事気にしている余裕はない。

先刻、実柚の頭をどさまぎに(どさくさにまぎれて)触ってしまったのだから。

思春期の男子中学生か!俺は!

よし、自然に。自然に・・・・


「ただいま。はい、これ」

「あっ、ありがとうございます!」

・・・・・・・・

その笑顔は・・・・・・

反則では?

実柚の動作は全て天然だ・・・・・

しかし!

上目使いや笑顔でお礼は幾らなんでも!


「カシャッ、カシャッ」

後ろから音が聞こえる。

俺が一人でくだらない事を考えている間に実柚は作業を始めた。

「手伝うよ」

「すみません!お願いします」

「カシャッ、カシャッ」

「「・・・・・・・・・・・・」」

・・・・・・・・・・・・・・

気まずい・・・・・・

会話がないからシャベルの音しかしない。


「優先輩って・・・・・・」

「ん?何?」

「優先輩って、女の子の友達はいますか?」

「ん〜・・・・・男はいるけどなぁ」

思い当たらない。

女友達なんかいたっけなぁ・・・・・・

「わかんない。多分いないかな」

「そうですか・・・・」

「実柚は?」

「私は・・・・・女の子は一人だけ・・・男の子は・・・・・優先輩だけです」

・・・・・・・・・・・

そっか・・・・・

友達少ないのか。

だからあの時・・・・


「友達になってください」


なんて事言ったんだ。


「そっか・・・・」

なんて言ったらいいんだろう。

「ポフッ」

なんて言ったらいいかわかんない。

だから、さっきより優しく、静かに頭を撫でた。

心臓はすでに限界を振り切ってます。


「ポロっ・・・・」

実柚が泣いた。

「実柚?」

「すみません・・・・私・・・」


「ギュッ」


「っ!?優先輩?」

実柚を抱きしめた。

そうしないとダメな気がした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・ひっく・・・」

実柚が一通り泣き終えてから俺は言った。

一昨日に続きいきなりのパターン。

ただし今回は相当の勇気が必要です。


「実柚、俺と一緒にいてくれないか?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


言ってしまいました。

出会って二日・・・・

「友達」という枠は、いとも簡単に壊れた。

良い方にか悪い方にか・・・・

それはまだ分からないけど。


「・・・・・・・・・・ハイ」


いい加減大袈裟な驚き方も飽きたので・・・・

今回は冷静に・・・・・


「付き合ってください」


「・・・ありがとう」


君と一緒に綺麗な花を咲かせよう。

例え育てた植物が、雑草だったとしても。

それこそエノコログサだっていいさ。

君となら、それであった事に幸せを感じれるから。


決して枯らさせなんかしないよ。

僕が守るから。

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