4. 思わぬ収穫?
「キュッキュッ、ジャー」
何してるかって?
水を汲んでるんだ。
如雨露に。
これでも園芸部部長ですから。
「シャー」
水をかける。
植物に話しかけるほど暗くはないから、
水の音しかしない。
うし、水やり終了。
そう言えばこっちのトマト、そろそろ収穫だな。
先生に言って来よう。
うちの学校の温室は割と本格的なものだから、
プチじゃなくてちゃんとしたトマトが育つ。
今年の部費どうしよっかなぁ・・・・・
何か別な種類の種でも買うかな・・・・・
そんな風にボーっとして歩いてると、
何かが飛んできた。
「ヒュッ」
とっさに避ける。
「本・・・・?」
本を投げるって・・・・・
どんな奴だよ・・・・・
「すみません!当たってませんか?」
「あー、大丈夫」
顔を見ないで返事する。
「ハイ、これ・・・・」
顔を見て気づいた。
拍手の子だ。
「君、拍手してくれた子・・・だよね?」
「え?・・・あ、ハイ!」
「あのときはありがとね。俺、拍手されなきゃ降りちゃダメだったんだ」
「いえ、別にそんな・・・」
少し顔を赤くする。
照れるとこか?
「そうそう、本・・・・「雑草辞典」・・・?」
「あっ、すみません。気にしないでください・・・・・」
「・・・・君、植物は好き?」
「えっ?・・・嫌いではないですけど・・・・」
「「雑草」か・・・・「エノコログサ」って何か知ってる?」
「?わかりません・・・・」
「実は、猫じゃらしの正式名称なんだって」
「そうなんですか!?私、猫じゃらしは猫じゃらしって名前だと・・・・」
「俺もそう思ってたんだけどさ。んで、何が言いたいかって言うと・・・・」
今でも俺は、何でこんなこと言ったんだろうと思う。
でも、言ってよかったと思う。
だって、言ったおかげで実柚と過ごせてるんだし。
園芸部的に言うと、毎日が花のよう、みたいな。
例え、その花が何度も枯れかけたとしても・・・・・
「園芸部に、入部しませんか?」
「・・・・・・・・・・・」
黙っちゃったよ。
そりゃそうだ。
いきなりこんな事言われてすぐに「OK」出せる奴いたら見てみたい。
「・・・・・・・・・ハイ」
・・・・・・・・・・
えっ?
「入部します」
えええええええええええええっ!!??
「いっ、いいの?そんな簡単に決めちゃって」
「ハイ。もともと体育は苦手だし。それに・・・・・」
「?それに・・・・何?」
「いえ、何でもないです」
?まあ、いいや。
「そっか。じゃ、先生に手続きしに行こっか」
「あ、待ってください。入部するには条件が・・・・」
「?何?」
「私と・・・・友達になってください」
再び赤面。
・・・・・・・・
うん、ココはいいんじゃないかな。
照れても。
これは・・・・・・
断る理由はないよな?
友達だし・・・・・
「・・・うん。いいよ。「友達」になろう」
「・・・はい。ありがとうございます!」
自然と笑みがこぼれた。
彼女の嬉しそうな微笑みに。
「友達」っていう関係なんか、保てるはずなかった。
もしかしたら、気付かない方が良かったかもしれない。
彼女に惹かれてる、ってことに。