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 なぜだかこの状況を打開できる。そんな不可思議な熱がこの身を駆け巡った。


「離すんだ!」


 ノグチが看守を押しのけて立ち上がると、輝くステッキを取り出し、眼前で構えてみせた。ふと部屋の鏡に自身の姿が見え、気恥ずかしくもなったがそれも言っていられない状況であった。


「力は使われる前に使うのよ」


 タマミが鞭を振りかざすと、ノグチのステッキが、まるで空間に貼り付けられたように、静止した。微動だにしないどころか、手を離しても空中に留まっている。シーロの言っていたことは本当であった。


「な、なんだこりゃあ!」


「情けない声。あなた何にも知らないみたいだけど、ここはそういう世界なのよ。転移した人間が、必ず何か強い力を手に入れてるの。だから原住民はそれにひれ伏すしかない! わかる!? この! 快感がっ!」


「わからないし、わかりたくもない! 変えなきゃダメなのか、僕も、この力で……!」


 ノグチは再びステッキを手にした。それは不可思議な力で押さえつけられていた。

 ノグチの頭の中には、ノキアライズの言葉が反芻していた。


 "不条理を、理不尽に審判する力"


 まさにこの状況、そしてこの世界が不条理そのものであった。ならばその不条理をどうするか、それを理不尽に決定できる力、すなわち審判の力であるということを、悟っていた。


「ふんぬぁ!」


 力を込めればステッキはいとも簡単に動くようになった。


「ええ!?」


 異変に気付いた看守二人がノグチに掴みかかるが、体がピタリと動きを止めた。その横を通り過ぎ、ゆっくり、一歩ずつ、タマミへと近づいていく。


「来ないでよ! ヘンタイ!」


 タマミは幾度もノグチへと力を行使するが、強引に振りほどかれ、効き目があるようにはとても見えなかった。

 やがて眼前にまでやってきたノグチは、静かにステッキの先端をタマミへと向けた。


「審判を下す。タマミを"羞恥の刑と善行の刑に処す"」


「な、な……。殺さないで!」


 ノグチはステッキを重々しく振りかざす。

 ぽん、ぽぽんっ! とどこからともなく音が聞こえたと思えば、タマミはみるみるうちに水玉模様のノグチと同様の格好へと変身していた。

 淡い水色と白色の配色を持つ、またも魔法少女を彷彿とさせるような可愛らしい服装であるが、ノグチとは違いサイズもタマミの背丈に合っていた。手に持っていた鞭は無論、ステッキへ変貌を遂げていた。


 タマミは自らの格好に「え……」と絶句し、シーロは「えぇ……」と情けない声を漏らした。

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