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地球さん、俺の畑を助けてください!  作者: あにき


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1/1

畑が死んだ日

農民の青年が、ある日「地球そのもの」と会話できるようになったら――。


そんな発想から書き始めた、異世界ファンタジーです。


最強の剣や伝説の魔法ではなく、土、水、植物、そして大地の力を借りながら、主人公レオンが自分の畑や村を守っていく物語です。


農業や村づくりなどのスローライフ要素をベースにしつつ、物語が進むにつれて魔物や世界の秘密にも触れていく予定です。


まずは第1話「小さな畑」。


レオンの何気ない日常から、物語は始まります。


楽しんでいただけたら嬉しいです。

日の出直後の空気は、まだ夜の匂いを少し残している。


俺――レオン・ハーヴェルは、鍬を担いで畑に立っていた。

土は湿って、踏むたびに柔らかい音を立てる。

振り下ろすたびに黒々とした土がひっくり返り、朝日を吸ってわずかに湯気を上げた。


うちの畑は、正直言って立派なものじゃない。隣のドノバンさんの畑の三分の一もない。

それでも、一人でどうにか面倒を見られるちょうどいい広さだと思っている。


鍬を止めて、土を一掴み手に取った。指の間からこぼれ落ちる感触。湿り気。匂いを嗅ぐ。


「……もう少し雨が欲しいところだな」


誰もいない畑で、俺は独り言をつぶやいた。それから、少し照れくさい気分になりながらも、

土に向かって続けた。


「なあ?」


もちろん返事なんてない。当たり前だ。これは物心ついた頃からの癖のようなもので、

特に深い意味はない。


畑の端には、古い木の杭が一本立っている。俺が生まれる前から――いや、父さんが立てたものだ。

それを見ると、いつも同じ記憶がよみがえる。


「畑ってのはな、殴ったって言うこと聞かねえんだ」


幼い頃、父さんによく言われた言葉だ。


「じゃあどうするの?」と俺が聞くと、父さんはこう答えた。


「見るんだ。土を見て、草を見て、虫を見る。そうすりゃ畑の方から教えてくれる」


「……教えてくれる、ねえ」


大人になった今も、俺はその言葉の本当の意味を理解できていない気がする。


「レオーン!」


遠くから声がした。振り向くと、幼なじみのミアが小走りでこちらに向かってくるところだった。

手には包みを持っている。


「また朝から何も食べてないでしょ?」


「食べた」


「何を?」


「昨日の残りの芋」


「それは食事とは言わない」


ミアは呆れた顔で包みを押し付けてきた。中身は焼きたてのパンらしい。まだほんのり温かい。


「今年の収穫が普通なら、冬は越せるはずなんだけどな」俺はパンをかじりながら言った。


「農地、増やしたいの?」


「金があればな」


「冒険者にでもなれば、もっと稼げるんじゃない?」ミアがからかうように言う。


「ゴブリン相手に鍬振り回すくらいなら、雑草と戦ってるほうがマシだよ」


「レオン、魔法も使えないもんね」


「火花くらいなら出る」


指先に集中すると、小さな火花が一瞬だけ散った。すぐに消える。


「料理にも使えないじゃない」


その通りだった。俺は、どこにでもいる、何の取り柄もない農民だ。


村へ足を運ぶと、鍛冶屋の音、井戸端の話し声、子供たちの笑い声が聞こえてくる。

人口百人程度の小さなアルナ村。決して裕福ではないが、俺の知っているすべてがここにある。


村長のガルドさんに会うと、いつもの調子で聞かれた。


「今年の麦はどうだ?」


「まあまあです」


「お前の親父も同じこと言ってたな」


その言葉に、少しだけ胸が温かくなる。


夕方、家に戻る。二脚あるはずの食卓の椅子は、一つにしか誰も座らない。

母さんが使っていた食器が、棚の隅に静かに並んでいる。

過度に寂しいとは思わない。ただ、静かだ。


窓から畑を見ながら、簡単な食事を済ませた。


寝る前、ふと違和感を覚えた。遠くの森から、鳥が一斉に飛び立つ音がする。犬が吠えている。

窓の外を見たが、特に何も見えない。


「……なんだ?」


しばらくすると静けさが戻った。俺は気にせずベッドに入った。


地面のずっと深い場所で、何かがゆっくりと蠢いていることに、俺はまだ気づいていない。


森の奥。一頭の鹿のような生き物が、じっとこちらを見つめている。その目は赤く、

身体の一部が黒く変色していた。


そしてその奥には――無数の赤い光が、闇の中でこちらを見つめていた。

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