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神社の入口を守る「狛犬」のルーツと霊力

 神社を参拝した時、参道ですぐに目にするのが、一対の狛犬だ。古来より、狛犬は霊獣とされ、神域に邪気が入るのを防ぐ魔除けとしての役割を担ってきた。


 昔の人は狛犬の魔除けの力を借りて、身体の痛むところがあると、信仰する神社の狛犬の前にお賽銭をそなえ、腰が痛む人は狛犬の腰を、足が痛む人は足を撫で、痛みのもとになっている「魔」を封じてもらい、早く痛みがとれるよう祈願したという。


 その2頭の狛犬だが、片方が「狛犬」で、もう片方は「獅子」だと聞く。口を開けている阿形が獅子、頭に角があり口を閉じている吽形(うんぎょう)が狛犬だとのこと。


 そこで魔除けのご利益にあやかろうと、北野天満宮の狛犬に会いに行ってみた。京都市内で最も大きいといわれる大鳥居前の狛犬は、日本画壇の巨匠・竹内栖鳳が考案したもので、威風堂々とした容姿は、まさにライオンのようだ。牛の像で知られる天満宮には、角のある狛犬など、多くの狛犬に出会える場所でもある。


 北野天満宮大鳥居と狛犬。

 右は京都市最大といわれる大鳥居脇の「阿」獅子


 北野天満宮の角のある狛犬と獅子


 ところで、狛犬のルーツはライオンにあると言われている。古代オリエントでは、群れをなして獲物を狩り、時には人をも襲うライオンを猛獣として恐れていた。その一方で、耕作の豊穣を根こそぎ奪う草食獣を退治してくれる神獣として、また豊穣と多産をもたらす地母神として崇めてもいたという。


 以前、京都市動物園でライオンを飼育されている方から、昔はライオンの生息地は広範囲に及んでいたと伺った。大型のライオンはアフリカ北部からエジプト、チュニジアやアルジェリア、モロッコなどの地中海側にまで豊富にいた。だが、その地域のライオンは20世紀初頭に絶滅した。インドライオンはインド、イスラエル、イランやイラクにも生息していたという。


 京都市動物園の前身である、京都市紀念動物園の古絵葉書

 日本初!ライオンの人工保育に成功した(筆者所蔵)


 鉄器を作り出したことで知られる古代ヒッタイトでは、ライオンは王城や門を守る獣神とされ、重要な門には一対の像が置かれていた。こういったライオンの情報や文化がやがてインド、中国を経て日本に伝わり、日本固有の文化と融合して伝統芸能の獅子舞が生み出され、獅子・狛犬になったとされている。また、角を持つ狛犬の姿は、インドに生息するサイがライオンと融合したともいうが。


 北野天満宮の狛犬(角がある)


 2頭の狛犬の片方「獅子」といえば、正月の縁起物の一つである獅子舞が頭に浮かぶ。最近こそ、市内ではあまり見かけなくなったが、伊勢大神楽は祓い浄めの強力な霊力を持つとされ、街を巡ってくると、「お獅子に頭を噛んでもらうと賢くなる」「痛いところがやわらぐ」と言って、大人たちは怖がる子どもたちをなだめ、頭を噛ませていた。知恵を授けてくれる文殊菩薩は獅子に乗った姿で表現されることから、その信仰も加わって、獅子舞に頭を噛ませるという風習が生まれたのだろう。他にも沖縄のシーサーは、ライオンを示すサンスクリット語が転訛したもので、村や家の災い除けとして知られている。


 さて、京都の神社には逆立ちをした姿など、個性的な狛犬がたくさん鎮座している。正確には狛犬ではないが、北野天満宮の牛をはじめ、伏見稲荷大社の狐、護王神社の猪、岡崎神社の兎、大豊神社の鼠など、それぞれ神社とかかわりのある神獣がいて、さまざまな言われやご利益があるので、巡ってみるのも楽しい。


 境内の紅葉を楽しむとともに、古今、人々から信仰され、親しまれてきた霊獣たちに出会い、その霊力に触れ、年末にかけての忙しない日々を厄除けで過ごしたいものだ。

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