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007

 あれから数日。

 僕は全財産の銀貨を使って家を買い、とうとう今日から住み始めていた。

 改めてみてみると、庭も広く、周りを高い壁に囲まれているため、もふもふの魔獣たちと暮らすには最適だった。


「本当に来たんだけど……!」


 僕の横で家を眺めている男、ルークを見て僕は小さくそう呟いた。

 不動産の男、ルークは冗談ではなく、本当に一緒に住む気だったらしく、小屋の中の荷物をまとめてここに来ている。

 小屋は仕事場としてこれからも使うらしいが、住むのは僕の家にするらしい。そんなに仲良くない男と同棲……普通に辛い。


「なあ、まだ俺らそんなに仲良くないけどよ、これから仲良くしてくれよな」


 そう言ってルークは僕に拳を突き出した。

 拳を合わせて挨拶するということなんだろう。よく見ると、ルークの手は小刻みに震えている。


 ルークも緊張してるんだ。

 勇気出してくれたんだから、応えないと失礼だよな。僕だって仲良くしたいし。


 僕はルークの拳と拳を合わせた。


「よろしく、ルーク」

「……!ああ!よろしくな、麦!」


 僕とルークの間で友情が芽生え始めていた時、セレスティアがやってきた。


「あら、なかなか立派な家なのね」


 セレスティアは拳を合わせて照れくさそうに笑っている僕たちを見て、眉をしかめた。


「何よ、あんたたちそういう関係なの?」

「どう考えても違うだろ!男の友情だ!」

「なんだ、そういうことね」


 セレスティアは僕たちを見て、鼻で笑い、家の中へと入っていった。

 ルークも「なんだあいつ」と言い、家の中へ入っていく。


 僕は再度この家で新しい生活が始まることを実感し、胸が高鳴った。

 これからここで理想のもふもふライフを作り上げるんだ!


 僕も二人を追いかけるように、家の中へと駆け込んだ。



 ◇ ◇ ◇



「これはなかなかね……」


 僕が家の中に入ると、セレスティアが部屋のあまりの惨状に言葉を失っていた。

 家の中は、部屋全てを埋め尽くす勢いで蜘蛛の巣が張り巡らされ、歩くと床から大量の埃が巻き上がる。ルークによれば100年近く放置されていたらしい。まあ、それはこうなって当たり前だよね。


 セレスティアと蜘蛛の巣を払いながら、家の中を見てまわっていく。

 キッチン、リビング、ダイニング、宴会でもやれそうな会場、大浴場、エントランス……。数え切れないほどの部屋数が一階に揃っている。二階と三階を見なくても、この家が広いことは明らかだった。


「とりあえず掃除しましょう。これはひどいわ」

「そうだな。俺も流石にこれは住めない」


 セレスティアは腰に携えている長剣で蜘蛛の巣を切っていく。

 ルークはどこからか見つけてきた箒で埃を巻き上げている。埃が舞っているだけで掃除できていない気もするが、頑張っているので触れないことにした。

 僕は、ルークが同じくどこからか持ってきた雑巾で、掃除することにした。


「なんかいいな……」


 日本にいた時も友達と呼べる人はいなかった。

 今こうして三人で力を合わせて掃除していることが、僕にとっては楽しくて仕方がなかった。


 僕はエントランスから地道に雑巾で床や扉、棚まで全てのものに被っている埃を拭いていった。3分ごとぐらいの頻度で雑巾を洗いに行き、また拭く。かなりの重労働だ。


 掃除を始めてから30分。僕はようやく入り口部分を終えた。

 周りを見ると、セレスティアとルークの姿はなく、広いエントランスに一人だけになっていた。エントランスにあったはずの蜘蛛の巣は綺麗さっぱり無くなり、床の埃はどこに行ったのか綺麗になくなっている。


 ふとエントランスにある窓を見ると、窓から差し込む光によって空気中の埃が光り輝いている。やっぱり、箒は埃を空気中に舞い上がらせているだけだ。


「長い道のりだなぁ……」


 僕はあまりにも遠い掃除の終わりを知って、軽く絶望した。


「おー、そっちはどうだー?俺は一階は全部終わったぜ」


 絶望していると、ルークが箒を振り回しながらやってきた。


「ルーク、箒意味ないよ。ほらあそこ見て、埃が舞ってるだけだから」

「あらま、まじか。じゃあ俺も雑巾手伝うか」


「雑巾濡らしてくるなー!」と言って、ルークは部屋から出ていった。


 孤独じゃないっていいな。

 たくさんでいる楽しさを知った僕は、再び雑巾でエントランスの掃除を始めた。


「掃除って楽しいなぁ」


 晴れやかな気持ちで掃除を再開した僕は、さっきよりも軽やかな足取りで床拭きを始めた。

 しかしまだこの時の僕は、この後に待っているエンドレス地獄をまだ知らなかった。

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