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009

「本当にこんなところにいるのか?今のところ全くそんな気配はないけどな……」


 ルークは少し気だるそうに言った。

 僕とルークは、チリトリスが生息しているというごみ焼却場に来ている。ゴミがたくさん集まるチリトリスにとって絶好の生息場所らしく、どれだけ駆除しても発生が後を絶たないらしい。

 そのため、冒険者による殲滅計画なども立てられているほどだ。

 もふもふの魔獣だが、人に迷惑をかけている害獣でもあった。


「いるはずだよ。管理している人もそう言ってたし……準備しておいたほうがいいかもね」

「何を?」

「戦闘の準備に決まってるでしょ」


 戦闘の準備をするに越したことはない。

 多分チリトリスは宝石リスと同じように、そんなに強い魔獣ではないと思うが、万が一のことを考えると、いつでも戦えるように準備しておいたほうがいい。


 そう思って言ったつもりが、自分が思っていたよりもきつい言葉と態度になってしまった。ルークはなぜ怒っているのかわからないというように、首を傾げた。


「戦闘準備する必要はないだろ。ここ焼却場だぞ?整備されてるところで魔獣がそんなにポンポン出ていたらやばいだろ」


 ルークは両手でポップコーンが弾けるかのような手真似をして、「ポンポン」言い続けている。まあ確かに、そんなに頻繁に魔獣が出てくることはないだろう。

 この焼却場はこの前まで使われていた場所で、チリトリスが焼却の邪魔をするという理由で停止されている。そのため、魔獣が入らないように整備されていて、魔獣が入れるようなスペースはない。

 どうやってチリトリスが入ったのかと思うほど、厳重な設備が施されているのだ。


「それにしてもよくここに入る許可もらえたよな」

「チリトリスって言ったらすぐokもらえたよ。多分、相当困ってるんだろうね」

「管理の人も大変だな……」


 そういえば管理の人に中に入りたいといった時、今にも死にそうなほど疲れた顔で震えながら「どうぞ……」と言われた。これからどうなるか分からないという状況で管理し続けるのは、相当辛いんだろう。頬もこけていたし、いつ倒れてもおかしくないほど衰弱していた。


 僕はチリトリスを自分のためにも、管理人の人のためにも、絶対に捕獲しようと意思を固めた。


「それで、この広い敷地のどこにいるんだ?このまま探しても多分見つからないぞ?」

「うーん……どうしたものかな……僕もどこにいるかはわかってないんだよね」

「管理の人に聞かなかったのか?」

「ちょっと聞けるような状況じゃなかったから……」


 僕とルークはどうするべきか分からず、唸った。


「チリっ」


 聞いたことのない鳴き声が背後から聞こえて、僕は即座に振り向いた。

 そこには、ゴミの山がそびえたっていた。首を動かさないと頂上が見えないほど、山を大きい。置いてあるゴミは木などの比較的大きいものがほとんどだ。


 僕とルークはゆっくり山に近づく。

 ここにチリトリスがいるとすれば、音を立てて逃げられるのは避けたい。足元に転がっている枝など、音を立てないように慎重に歩いていく。


「チリっチリっ!」


 ゴミの山の中からリスのような生き物が顔を出した。

 間違いない。あれがチリトリスだ。

 リスのような見た目をしていながらも、フンコロガシみたいな変な特徴も併せ持っていることが特徴だ。集めた埃を丸めて転がしていく姿は、地球では考えられない。区分としてはリスになるんだろうから、僕は大量のリスを家で飼おうとしているわけだ。


 ルークは目を見開き、足を踏み出そうとした。

 僕は慌ててルークを止めた。


「どうしたんだよ?このままいけば捕まえられるぞ」

「ここは僕に任せて。ちょっと下がってて」


 ルークは小さく頷き、おとなしくゆっくりと後ろに下がっていった。

 僕はルークが下がったのを確認して、少しずつ、チリトリスに気づかれないように慎重に近づいていく。


 手から少しずつ親愛の波動も放ち、気付かれても逃げられないように周りを固めていく。チリトリスは僕がゴミの山の目の前に来ても気づいていないらしく、ゴミの中の埃を集めて持っている埃玉にぺちぺちくっつけている。


「よいしょっ……遠いなぁ……」


 僕はあまり大きな音を立てないように気をつけながら、足場が不安定でいつ崩れてもおかしくない山を少しずつ登っていく。


「チリっ!?」

「大丈夫、大丈夫だよ。僕は攻撃したりしないから」


 チリトリスは警戒するように、埃玉を後ろに隠しながら、少しずつ後ろに下がっていく。表情は非常に緊張していて、今にも逃げ出してしまいそうだ。きっと人間に劣悪に扱われてきたのだろう。

 だから、僕は絶対に怖がらせちゃいけない。


 僕は親愛の波動を強めるように、手に意識を集中させた。

 少しずつ、微かにだが、癒しの力が強まっていくのを感じる。


「もう大丈夫。怖くないよ」

「チ、チリっ?」


 チリトリスは僕のことを品定めするように、じっくり見つめている。

 少しずつ緊張が解けてきている。だからこそ油断したらダメだ。ゆっくりじっくり心を通い合わせるように……!


「チリー!チリっチリっ!」

「嘘でしょ……!」


 いったい今まで何処に隠れていたのか、ゴミの山の中からさらに三匹のチリトリスが姿を現した。緊張が解けてきているチリトリスに逃げるようにいっているのかもしれない。僕に向かって必死に威嚇をしていた。


 このままじゃまずい。

 なにか、なにかこの子達を安心させるものがないと……。


「グオォォォォォ!!」


 突然大きな咆哮が鳴り響いた。

 空気が大きく振動しているのか、耳鳴りがし、全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。思わず手が震える。

 その影響か、僕の手から放たれていた親愛の波動は大きく力が弱まってしまっている。チリトリスたちも、咆哮に怯えて身を震わせていた。


「ムギ!そこを離れろ!」


 ルークの鋭い声が僕の耳に届いたすぐ後だった。

 僕とチリトリスのいるゴミの山に大きな火の玉が直撃した。

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