1話 プロローグ
超常的な力を使う悪魔と弱い人間。
この二つの種族はお互いに断絶した世界に住んでいて、永遠に関わることはないはずだった。
しかし悪魔に魔王という絶対的な存在が現れると、次元は歪み出会うはずの無かった二つの種族は出会ってしまった。
悪魔と人間は最初は友好的な関係だった。
しかし人間の王ジークは魔王と契約を行ってしまった。
そしてジークは絶対な力を手に入れ、他国を蹂躙し始めた。
他の国の王族も次々と契約を行い、世は戦乱の時代になった。
しかし悪魔はその戦争を止めるどころか、人間界に降臨し、人間を虐殺し始めた。
これを見かねた二代目魔王は力をもつ悪魔が人間と敵対的にならないよう魔法をかけ、なんとか争いは終わった。
残った人間たちは平和な世界を作ろうとお互いに協力し始めた。
これは平和になり始めた頃の世界の物語。
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〜魔界〜
「あのクソ野郎ども、あと一歩で貴族になれたはずなのに、畜生!!!」
ボロボロになった悪魔が叫んだ。
しかしその叫び声は敵を呼び寄せるだけだった。
「無様に逃げよって、やはり平民風情が貴族になれるわけなど無かったのだ。」
「黙れ!!おれが力を持つのを恐れただけだろ!」
「おぉ怖い、平民は平民らしく灰になってそこらの土の養分にでもなれば良い。」
「まぁ待てバエルよ、いくら我々とてそれなりに実績を積み上げた悪魔を殺すのは他の貴族に目をつけられる、ここはあの鎖の悪魔に永遠の封印を施してもらうとしよう。」
ジャリ、ジャリと鎖を引きずる不快な音が鳴る。
「まさか、この俺のためにそんな高位の悪魔を呼び寄せるとはなぁ!貴族も堕ちるところまで堕ちたなぁ!!」
『地獄獣の鎖』
鎖の悪魔は呪文を唱え魔法陣を展開した。
終わりだ…あの封印から逃れる術はない…
どうして俺がこんな目に…
一瞬の後悔のあと魔法陣から無数の鎖が傷ついた悪魔に巻き付いた。
「さらばだ下賤なる悪魔よ、お前は人間界の端で永遠にもがき苦しんでいろ」
次の瞬間悪魔は人間界に飛ばされた。
■■■
〜60年後の人間界〜
ここはコノル村、人間界の端の端の端にあるド田舎中のド田舎。
おれの名前はアノン、顔も頭も運動も何もかもが平凡でなんの特徴も面白味もない人間だ。
「ねぇアノン、今日こそあの丘の上に行ってみようよ」
こいつはマオ、おれの幼馴染。おれと違ってとても賢くて優秀な子だ。
「嫌だよ、あの丘近づくだけで鳥肌立つもん」
「一生のお願い!一生のお願い!一生のお願い!一生のお願い!」
「お前それ人生何回分だよ、まったく行けばいいんだろ行けば」
「じゃあ、早速行くよ!」
マオが一目散に丘に向かって駆けて行った。
おれも急いで後を追う。
■■■
丘の麓まで走ったところでマオが座って待っていた。
「遅いよアノン!」
「それよりもう冷や汗かいてきたんだが、体もなんか熱いし」
「それは走ったからでしょ!速く行くよ」
丘のてっぺんまで上がったところに黒い岩がぽつんとあった。
「なぁマオこの辺やっぱおかしいって、動物の鳴き声もまったくしないし」
しかし返事が無い。
「おいマオ聞いてんのか?って………え?」
黒い岩から雷みたいな何かが出てきている。
なんだよ…これ?
逃げようとしても身体が言うことを聞かない。
『おぉ客人は久しぶりだな。』
岩から出た黒い影が話しかけてきた。
『よお人間ども、おれの封印を解いてくれたら何でも好きなことをやってやるぜ?』
『何が欲しい?金か?力か?それとも女か?』
『…………おい聞いてるかそこの人間のガキ!』
「な、何だよお前?」
『おれ様はヴァイル、見ての通り悪魔だ。』
「そういうことを聞いてるんじゃなくて……」
『おれの正体を聞くより先にさっさと封印を解け。』
「そんなのできるわけないだろ!」
『だろうな、だがお前達に決定権は無いんじゃないか?』
「グルルル」
異形の狼がおれ達の背後に立っていた。
「マオ!速く逃げるぞ!」
しかし逃げることはできない。
異形の狼は一瞬でおれ達の前に先回りしてそのまま大きな爪を振り落とす。
ドゴンッ!と音がしてすぐ隣の地面が大きくへこんでいる。
「お、おい悪魔!おれ達を助けてくれたらその封印を解くぞ!!」
『いや〜助けたいのはおれも山々なんだが残念なことにこっから1ミリも動けないんだよ。』
『封印解いてくれたら動けるんだけどね〜』
「何だよそれ!」
『おれにかまっといていいのか?、横にいるお友達が死ぬぞ』
「契約でも何でもするから早くおれ達を助けろ!」
『わかった、『おれの封印を解く代わりにお前達を助ける。』これでいいか?』
黒い影はニヤリと笑い、青白い魔法陣を展開する。
「あぁ契約する。」
影がニヤりと笑い繋がっていた鎖が千切れていく。
「グルルルル」
背後から鳴き声が聞こえる。
「しまっ…」
ザシュッ!何かが切れる音がした。
「え??」
おれは思わず情けない声をあげてしまった。
あの化け物みたいな狼は細切れにされて肉片があちこちに散らばっている。
内臓が飛び出て目は白目を向いている
『感謝するぞ人間、おかげで忌々しい封印が解けた。』
これがおれとヴァイルの出会いだった。




