茜と翠の放課後補習大作戦!
ブルマ戦士である、藍沢茜のために秀才の緑川翠が勉強を教える。
「はあ……またやっちゃった……」
茜は、返却されたばかりのテストの答案をしょんぼりと見つめていた。赤く大きく書かれた数字が、まるで嘲笑っているかのようだ。バスケットボール部の練習に明け暮れる毎日で、どうしても授業中の睡魔には勝てず、気づけばノートは空白だらけ。案の定、今回の期末試験で、得意科目のはずだった国語でまさかの赤点を叩き出してしまったのだ。
「茜ちゃん、大丈夫?」
心配そうな声が降ってきた。隣の席の翠が、メガネの奥の知的な瞳で茜を見つめている。翠は学年トップの秀才で、どんな難解な問題も涼しい顔で解いてしまう。
「全然大丈夫じゃないよ!このままじゃ、お母さんに雷落とされるどころじゃ済まないかも……」
茜が頭を抱えていると、翠は冷静な声で言った。「放課後、私の家に来る?よかったら、勉強を見てあげるわ。」
茜にとって、翠の申し出はまさに救いの手だった。「本当!?翠、ありがとう!」
放課後、茜は翠の家に上がり込んだ。翠の部屋は、整然と本やノートが並べられ、茜の部屋とはまるで違う落ち着いた雰囲気だった。早速、問題集を開き、翠のマンツーマン指導が始まった。翠は、茜の苦手な文法や古文の読解を、丁寧に分かりやすく教えてくれた。普段は明るく大雑把な茜も、翠の真剣な眼差しに応えようと、必死に食らいつく。
しかし、どうしても集中力が途切れてしまう茜は、ふと思いついて翠に提案した。「ねぇ、翠。お願いがあるんだけど……」
「何?」
「あのさ、ブルマ必殺技の『思考強化ブレインブルマブースト』ってあるじゃない?」
以前、地球外生命体との戦いで、翠が一時的に驚異的な集中力を発揮した際に使った(と茜が認識している)技だ。ブルマの力で脳を活性化させ、短時間で記憶力や理解力を高める、と茜は勝手に想像していた。
翠は、茜の言葉にメガネの奥の目を丸くした。「え?思考強化ブレインブルマブースト?たしかに、そういう技はあるけど……」
「でしょ!?それ使って、勉強教えてよ!そしたら私、すぐに全部覚えられちゃうかも!」
茜は目をキラキラさせて訴えたが、翠は首を横に振った。「残念だけど、それは無理よ。思考強化ブレインブルマブーストは、あくまで戦闘時にのみ発動できる技なの。集中力を極限まで高めるから、日常生活で使ったら体に負担がかかりすぎるわ。それに、勉強にずるはだめよ。ちゃんと自分の力で勉強しなさい。」
翠の正論に、茜はしゅんと肩を落とした。「そっか……そうだよね。残念……」
結局、茜は翠の助けを借りて、なんとか赤点を回避できる目処を立てることができた。感謝の気持ちでいっぱいの茜は、翠に何かお礼をしたいと考えた。「翠、今日は本当にありがとう!何かお礼させてよ。そうだ!一緒にゲームしない?」
翠は少し考えた後、「いいわよ。たまには息抜きも必要ね。」と快諾した。
茜が持ってきたのは、最近発売されたばかりの超難解RPG『エルデンリング』だった。意気揚々とコントローラーを握る茜だったが、最初から強敵「ツリーガード」に手も足も出ない。何度も何度も馬から落とされ、丸腰のまま追いかけ回される始末だ。
「もー!こいつ強すぎ!一体何回やられたことか……絶対ラスボスだよ!」
茜はコントローラーを投げ出しそうになりながら、画面に映る黄金の巨人を睨めつけた。隣でその様子を見ていた翠は、冷静に言った。「茜、その敵は別に最初から戦う必要はないのよ。もっとレベルを上げて、装備も整えてからまた来ればいいんじゃないかしら。」
「え……そうなの?だって、目の前にいるし……倒さないと先へ進めないと思ってた……」
茜は間抜けみたいに呟いた。ツリーガードは、確かに最初のエリアにいるものの、メインストーリーの進行には必須ではない、いわゆる「避けてもいいボス」だったのだ。
「これは……ラスボスじゃなくて、中ボスみたいなものね。茜がもっと強くなれば、きっと倒せるわ。」
翠の言葉に、茜は口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。最初からラスボスだと思って無駄に何十回も挑んでいた自分が、急に滑稽に思えてきた。
その後、二人は協力プレイで他のエリアを少しだけ進めたものの、茜のプレイヤースキルでは雑魚敵にも苦戦する場面が多かった。翠は的確なアドバイスを送るものの、結局は茜の性格的な操作に笑いをこらえるのに必死だった。
結局、その日はエルデンリングの序盤を少しだけ体験して、茜は翠の家を後にした。帰りの道すがら、茜は思った。勉強もゲームも、最初から難しい敵にばかり挑んでいても意味がないんだな、と。まずは自分のレベルを上げることが大切なんだ。
もちろん、茜のことだ。明日になれば、また何も考えずにツリーガードに突撃しているかもしれない。それでも、翠との今日の夜は、茜にとって新たな気づきと、温かい友情を確認する貴重な時間となったのだ。そして、二人の間には、また一つ、笑い話のネタが増えたのだった。
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